相続問題事例

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遺留分侵害額請求の解決事例

父が亡くなり、同居していた姉が、何の連絡も無しに全財産を相続。
公正証書遺言に書いてあったと言われれば、異議申立てはできないのでしょうか?
そもそも、遺言書の内容は父の真意なのかどうなのか・・・
姉への不信感が募ります。

相談者
年代:40歳代(被相続人80歳代)
属性:相続人

ご相談の経緯

A子さんの父は、A子さんの姉と同居していました。高齢でもあり、財産管理は姉に任されていたようです。その父が亡くなり、1年経っても姉から相続の連絡が無いので、不審に思ったA子さんが聞いてみると、父の公正証書遺言に従って、全部自分が相続したとのこと。 いくら、面倒をみていなかったとは言え、何ももらえないというのは腑に落ちない。それに父がそんな不公平なことをするとは信じられない、どうにかできないものか、と当事務所に相談にいらっしゃいました。

ご相談のポイント

  • 1. 父の意思は尊重したいが、自分に何も残さないという遺言が、父の真意とは信じられない。
  • 2. 公正証書遺言の内容が、本当に父の意思に基づくものなのか、認知症を発症していたのではないか確かめたい。
  • 3. 相続人の最低限の取り分である「遺留分」を取り戻したいが、遺産がどれだけあったのか全くわからないので調べてほしい。
遺留分とは
法律で保証された、法定相続人が相続できる最低限度の取り分のこと。遺言内容より優先されます。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

1. 遺留分割合を確定しました。

ご依頼者は、遺言の存在を知ってからすぐに弁護士に依頼されました。そこでまず、姉妹以外に相続人がいらっしゃらないか、相続関係を確定するため、お父様の戸籍謄本を誕生までさかのぼって収集することにしました。戸籍謄本は、2~3週間ほどで収集することができました。

弁護士は、職務上請求の制度を使って、依頼人の代わりに戸籍謄本を収集することができます
戸籍謄本の収集は、場合によっては大変な手間と時間がかかりますが、経験ある弁護士が代行することで、スピーディーに実行できます。

2. 遺留分侵害額請求を通知しました。

相続関係を確定し、遺留分の割合を確定できたので、お姉様に遺留分侵害額請求を通知しました。時効期限内に意志表示をした証拠を残すために、内容証明郵便を、電子内容証明郵便で発送しました。併せて遺言書や財産関係の資料のコピーの送付も依頼しました。

遺留分侵害額請求は内容証明郵便で通知
時効内の請求(1年)を証明するための証拠にもなります。

3. 公正証書遺言の内容を確認しました。

公正証書遺言があるということなので、弁護士事務所の最寄りの公証人役場に行き、公正証書遺言の作成の有無と作成場所を特定しました。そこで、遺言が作成された公証人役場にコピーを依頼し、内容と作成日付を確認しました。

公正証書遺言は、公証人役場に保管
公正証書遺言は、公証人役場に保管

4. 財産関係の調査をしました。

お姉様に財産関係の資料の送付を依頼し、同時に当方でも、財産関係調査に着手しました。
相手方相続人(この場合お姉様)が相続財産を明らかにする可能性もゼロではないのですが、経験から言えば、全てを開示されるケースは10%もありません。また、もし相手方から開示があっても、当方も財産関係を調査しておかないと、開示内容に誤りや漏れが無いかを確認することができません。特に預金口座の入出金履歴を開示してくるケースは非常に少なく(多くの場合、残高証明書の提示に止まります)、生前又は死後の不明朗な出金についても調査が必要です。
とりあえず、被相続人の住所地や勤務地近くの金融機関に照会をかけていき、預金口座の解明を進めました。
また、株式取引をしている可能性はないとのことでしたが、上場株式の調査と、生前に相続時精算課税制度による贈与をしていないかの調査もしていきました。
3か月ほど調査に時間をかけた結果、預金口座が複数存在することがわかり、また、逝去される直前に多額の出金があることも判明しました。

弁護士は取引履歴の開示請求が可能
相続人が取引銀行を特定し、取引履歴の取り寄せを行うのは、手間と時間がかかり、結局わからないことも多いのが実情です。

5. お父様の病状を確認しました。

お父様が遺言を書くことができるだけの認知レベルがあったかを確認するため、主治医に面談し、カルテのコピーも依頼しました。 結局、認知症ではあるものの、認知レベルの低下がひどいものではないため、また、公正証書遺言ということもあって、遺言無効確認訴訟は提起しないということで、依頼者も納得されました。

医師との面談もお任せいただけます
裁判の結果を予想できます

6. 相手方弁護士と交渉して和解が成立しました。

調査の結果、相続財産は約2,000万円で、相続税は発生しないということがわかりました。
そこで、お姉様に対して、具体的な請求金額を記載した書面で請求したところ、すぐに弁護士を選任されたようで、弁護士から連絡がありました。その後は、弁護士同士で何回も交渉した結果、和解となりました。
もし相続税の発生が予想される場合には、相手方への請求と並行して、相続税申告書の作成も進める必要があります。申告期限は10か月です。

身内同士の関係がこじれたら、弁護士同士の交渉がおすすめ
当事務所は弁護士兼税理士が対応します
相続税の申告・納税期限は10ヶ月ですので、調査の途中で相続税が発生するとわかれば、申告書の作成や相続税の資金繰りに、スピーディーに対応できます。

解決までの流れ

平成26年
被相続人ご逝去
平成28年3月
ご相談・ご依頼
平成28年4月
戸籍収集完了、遺留分減殺通知
並行して財産調査、カルテ収集に着手
平成28年7月
財産調査完了、具体的請求
平成28年8月
相手方の弁護士選任、財産関係開示
平成28年9月
和解契約締結
平成28年10月
入金完了

弁護士からのコメント

1. 遺留分減殺の期限1年にご注意。

遺留分侵害額請求は、相続開始や遺留分を侵害する遺言を知ってから1年以内に意思表示をする必要があります。
1年は、あっという間に経過してしまいますので、早めに遺留分侵害額請求の意思表示を書面で行う必要があります。なお、最初の意思表示は、具体的な請求金額まで記載する必要はなく、「遺言等により遺留分を侵害されているので減殺の意思表示をする」という簡単なもので問題ありません。

2. 意思表示は内容証明郵便で行います。

遺留分減殺の最初の意思表示は、民法上は、口頭でも可能ですが、後で争われないためにも、内容証明郵便で行うことをお勧めします。
なお、文案については、下記URLのページもご参照ください。
https://www.law-tachibana.jp/format/gensai.php

3. 財産調査・カルテ収集の必要性について。

遺留分侵害額請求の意思表示をすれば、相手方が勝手に財産を開示してくれる、開示するべきだ、と思われている方が意外に多い印象があります。勿論、親族同士ですので、相手方を信用するが故の思い・考えと推測されます。しかし、「4」弁護士に依頼して解決」の項でも述べましたが、経験的には、全てを開示されるケースは10%もなく、そもそも開示しないケースが60%、開示しても不十分(残高証明書のみ開示、複数の預金口座や証券口座の一部のみ開示など)というケースが30%強と思われます。
そのため、遺留分侵害額請求の意思表示をすれば、相手が進んで財産目録を開示してくると安心するのではなく、生前に被相続人から聞いていた取引内容などから、調査をしていく必要があります。
もっとも、一般の方がこの財産調査をするのは、かなり大変です。照会する相手方に対して、法務省発行の相続人の一覧図を提示しても、金融機関ごとに請求書の書式や要求される書類が微妙に異なるなどしているため、経験が無いと実際にはなかなか難しいと思われます。

まとめ

今回は、相手方に弁護士が選任されて弁護士同士の話合いとなりましたが、相続財産の範囲について生前の出金を含めて大きな争いはなく、裁判となった場合の結果も予想も共有できたため、和解で終了することになり、比較的早期な解決となりました。

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「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
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  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
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  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。