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遺産分割、損害賠償請求

十数年前に亡くなった夫の遺産分割について、今さら前妻の子どもたちから損害賠償請求を起こされました。どうすればいい?

相談者
年代:70代
性別:女性

ご相談の経緯

十数年前の遺産分割について、損害賠償請求を起こされた

十数年前に某国籍の夫を亡くしたOさん。亡き夫とOさんは再婚で、夫には某国籍の前妻との間に子どもが3人いました。そのうちの1人は日本生活が長く、Oさんは主にその1人と話し合いを進め、某国在住の2人の子どもとは前妻を通じてやり取りをして遺産分割協議を進めました。Oさんは苦労しながらも3人の印鑑証明を揃え、遺産分割協議書を作成。問題なく相続できたものと思っていましたが、十数年経った今になって突然「あの遺産分割協議書は偽造されたものだ」と某国在住の子ども2人から損害賠償請求を起こされました。慌てたOさんは、どうにかならないものかと弁護士に相談することにしました。

 

ご相談のポイント

遺産分割協議のやり直しに時効はない

最初のうちは「前妻を介して某国籍の2人の子どもからもきちんと承諾を受けて遺産分割協議書を作成した」と言っていたOさんですが、記憶を紐解いていくと、どうやら遺産分割をする旨は伝えたものの、実際の遺産分割内容について承諾を得たという確証がないということが分かってきました。遺産分割協議書の署名欄も「まあ大丈夫だろう」という軽い気持ちでOさんと日本生活の長い子どもとで代筆してしまったようです。遺産分割協議のやり直しには時効がないため、今回のように問題が発覚した場合、十数年経っていても遺産分割協議のやり直しを行うことができます。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

弁護士費用分と遅延利息分を除いた全額を支払い和解

2人の子どもはOさんに対して怒り心頭で、訴訟中に遺産の一部であるOさん所有のマンションも差し押さえ、遺産分割のやり直しだけでなく、十数年分の遅延利息分と弁護士費用も請求していました。訴訟を起こす前に日本在住の兄弟からも「Oさんと一緒に勝手に遺産分割協議書に署名した」という言質も取っているので、Oさん側としては反論の余地がなく和解するしかありませんでした。「決して強い悪意があったわけではないが、2人には申し訳ないことをした」と素直に非を認めて謝罪することで、相手方の主張する損害賠償分全額の支払い、弁護士費用と遅延利息分はカットしてもらうことで和解が成立しました。

弁護士からのコメント

専門家への相談、依頼で遺恨を残さない遺産分割を

亡き夫は資産家ではありませんが、経営していたマンションがあり、Oさんが事業を引き継ぎたかった、登記くらい自分でできると思ってしまったことから大きな問題に発展してしまいました。当初から専門家に相談していれば、たとえ外国籍の方との遺産分割でも”なあなあ”にならずに解決できていた事案です。専門家に払う費用を節約したせいで痛い目に合ってしまったと言えます。

相手方に証拠を固められたうえで訴訟も起こされてからのご依頼だったので、取れる対抗策はほぼありませんでしたが、差し押さえられたマンションも最終的には取り下げていただき、十数年にものぼる遅延利息分や弁護士費用だけでもそれなりの金額になっていたので、カットしてもらうことができたのは弁護士による粘り強い交渉の結果と言えます。

まとめ

多額の遺産じゃないから、遠方に住んでいて連絡を取り合わないから「自分たちでできる」「どうせバレない」と思いがちですが、疎遠であればこそ、関係性の悪化を気にせずに揉めても困らないと相手方は考えます。また、分割しにくい不動産も揉める原因になりがちです。後々大きな火種となって後悔しないためにも、遺産分割協議は専門家に依頼し、全員納得のうえで遺産分割を行うようにするのがベターです。また、トラブルが発生した際にも、できるだけ速やかに弁護士に相談いただくことで最小限の揉めごとに抑えることができる可能性があります。

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