遺産分割調停
母の遺産を相続することになったのですが、亡くなる直前に兄による明らかに不自然な出金履歴があり、さすがに見過ごせません。できれば穏便かつ公平に遺産分割がしたいのですが、話して通じる相手とは思えず困っています。
- 相談者
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年代:50代性別:男性
母の遺産を相続することになったのですが、亡くなる直前に兄による明らかに不自然な出金履歴があり、さすがに見過ごせません。できれば穏便かつ公平に遺産分割がしたいのですが、話して通じる相手とは思えず困っています。
Sさんの兄は昔から素行が悪く、できるだけ避けて暮らしてきました。
しかし、母が亡くなったことで、遺産分割について兄と話し合う必要性が出てきました。母は不動産を含めてそれなりの財産を持っていたので調べてみると、母が入院した時から毎日かなりの金額が出金されていることがわかり、明らかに兄の仕業とSさんは頭を抱えました。一人で兄と対峙するのは難しく、専門家に頼ろうと思ったSさんは当事務所に相談に来られました。
通常、遺産分割は話し合い(協議)から始まり、まとまらなければ家庭裁判所で調停を申し立て、それでもまとまらなければ審判へと進みます。家庭裁判所で扱うのはあくまでも遺産分割についてのみです。被相続人が亡くなった時点で残っている財産かつ調停を申し立てた時点で残っている財産しか対象になりません。
お母様が入院されてから亡くなるまでにお兄さんが引き出した預貯金については「財産の使い込み」にあたり、これは家庭裁判所の管轄外です。これについては別途、不当利益返還請求を行い、地方裁判所で訴訟を提起することになります。
お母様が入院されてから毎日50万円ほどが引き出されており、最終的には1000万円以上の金額になっていました。お兄さんが引き出した証拠もあり、お母様のために使われた形跡もありません。不当利益返還請求を行えば取り戻すことができる見込みでしたが、裁判はしたくないというSさんのご意向により、本来は家裁と地裁両方で進めるべきところを、今回はこの問題も含めて調停で話し合うことになりました。
お兄さんは出金したことは認めたものの使い込みに関しては頑として認めず、遺産分割調停を複数回行ってから、突然、お母様が第三者に借りたという借用書を提出してきました。借用書は明らかに偽造されたもので、当弁護士は非常に悪質であると判断し、Sさんには訴訟を勧めました。しかし、早く遺産分割を終わらせたいというご意向は変わらず、最終的には不動産を換金して分けることでまとまりました。
本来なら法定相続分どおりに分けるところですが、明らかな不正出金があったということで、Sさんに多めに分配されることになりました。
無理難題を主張する相手には弁護士を間に入れて
今回のように偽造した借用書や受領書まで出てくることは稀ですが、世の中には自分の利益のためには多少無理がある主張でも通そうとする人は少なからずいます。そんな方が親族に一人でもいると、話し合いはまとまらず、遺産分割協議は暗礁に乗り上げてしまいます。今回のケースも、もしSさんがお兄さんと一対一で遺産分割協議を進めていたら、お兄さんに押し切られてさらに不公平な遺産分割になっていた可能性があります。
相続人同士では上手くいかない場合も、弁護士を間に入れることで感情面のこじれを取り除き、法律に基づいた解決策が見つかるかもしれませんので、ぜひ一度ご相談ください。