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遺産分割・遺言執行

叔父が亡くなる前に新しく書き直した遺言書の内容に納得いかない親戚から「新しい遺言書は偽造だ」と裁判を起こされました。どうしたらいいですか?

相談者
年代:Sさん 50代
性別:男性

ご相談の経緯

別の相続人から「新しい遺言は無効」と言われた

Sさんの叔父さんはそれなりの資産家です。

子供はおらず、妻にも先立たれた叔父は介護や財産管理などを任せたいと長い間養子を探していましたが、結局適任は見つからず、晩年は甥であるSさんと同居することになりました。叔父は過去に一度公正証書遺言を作成していましたが、Sさんに自分の世話を頼むにあたり新しく公正証書遺言を作り直すことにしました。数年後、叔父が亡くなると以前の遺言で財産を受け取る予定になっていた別の親戚が「新しい遺言は無効だ」という裁判を起こしました。

困ったSさんは弁護士に相談することにしました。

ご相談のポイント

複数存在する遺言書はどれが有効か

叔父は新しい遺言に「第一遺言の内容は撤回する」という条項を記入していました。複数の遺言が存在する場合、内容に矛盾が生まれる場合は日付が新しいものが有効となり、古い遺言は撤回されます。逆に内容に矛盾が生じていなければ古い遺言も有効となります。今回は直接撤回する旨が記されているので第一遺言は無効となり、新しい遺言のとおりに遺産分割が行われます。

相手方の主張は「そんな遺言書を書くはずがない、Sさんが偽造したのでは」というものでした。偽造というからには、相手方は裁判所が偽造と認めるような明確な証拠を提出しなければなりません。対してSさん側は何故遺言書を新しく作り直す必要があったのかを合理的に説明し、相手方から提出される偽造の証拠を否定していくことになります。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

相手の主張は認められず、第二遺言のとおりに相続

同居して介護してくれているSさんに財産を渡したいと叔父が考え、遺言書を作成し直したのはごく自然で合理的な理由です。しかし、Sさんが叔父の居住区に住民票を移していなかったのを指摘されたため、叔父の家で生活した痕跡となる証拠として普段通院している病院の履歴や携帯電話の利用明細の送付先などを提出しました。

納得いかない相手方は「第二遺言の署名が本人のものではない」と筆跡鑑定の結果を提出してきました。相手方の証拠を否定するために、こちらも介護施設の介護計画書に叔父の署名を見つけて筆跡鑑定を行いました。とはいえ、筆跡鑑定は健康的な人でも日によって筆跡が異なるため科学的とは言えず、裁判では重視されません。

結局相手の主張は認められることなく、第二遺言のとおりに遺産分割が行われることになりました。

弁護士からのコメント

偽造や替え玉は立証が非常にむずかしい

今回はどちらも公正証書遺言でしたが、どちらかが自筆証書遺言であっても効力は一緒です。第一遺言から第二遺言に変えた合理的理由が説明できれば問題ありません。Sさんは同居して叔父の世話をしていましたが、住民票を移していなかったので叔父の住まいで生活した痕跡を探して証拠としました。住民票を移していればそれが同居の証拠となります。

偽造や替え玉などの主張は立証が非常にむずかしいため、過去の裁判例でもなくはないのですが、なかなか上手くいかないようです。そのため、こちら側は「第一遺言から第二遺言に変更した合理的理由」を説明し、相手方の主張を否定する証拠をかき集めるなどの訴訟対応をしました。

まとめ

古い遺言では財産を相続するはずだったのに、新しい遺言で受け取ることができないとなれば不満に思い、新しい遺言書の存在を否定したくなるのも無理からぬことです。 しかし、裁判で争うには「証拠」が必要です。「だと思う」だけでは裁判所は認めてくれません。遺言書の内容に不満がある場合には弁護士にご相談ください。どうすればご自身の相続分を増やすことができるか、解決策の選択肢をご提案いたします。

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