相続税の税務調査

相続税の税務調査立会い・不服申し立てサービス
<元「国税審判官」の弁護士兼税理士が対応>

1. 相続税は、税務調査と追徴課税の確率が高い

親御さんなどが亡くなられて2年ほどたってから、申告の有無を問わずにいきなり相続税の税務調査が来ることがあります。

令和元分の申告事績によると、亡くなられた方が138万1093人で、相続税の申告を要した被相続人の人数は、11万5267人となっており、約8.3%の方について相続税申告を要する状況のです。

また、配偶者の税額軽減特例や小規模宅地の特例による評価減は、相続税の申告をして初めて認められますので、申告しなかった場合には特例の適用が認められず、本来は払わなくてよい税金を支払わなければならないことになります。無申告であった事案で、年間で1000件以上の実地調査が実施され(コロナの影響がなかった平成30事務年度では1380件)、調査1件当たりで相続税が897万円を追徴されており、自分は大丈夫と安心するのは禁物です。

そして、相続税を納めるだけの財産を残された被相続人の5人に1人の割合で実地調査があり、実地調査に入られると、約8割の確率で追加で税金(と加算税)を600万円以上支払わされます。調査にはいられなかった人も、たまたま税務署管内により高額な遺産をのこして亡くなった方の相続の調査に税務署員が取られて、調査できない場合もありますので、5人に1人という数字は決して小さくありません。また、より多くの追徴税額を取ろうという税務署員の本能(勤務評価に影響する)から、特に遺産総額が1億円を超えてくると、特に注意する必要があります。

相続税の税務調査には、どのように対応するのか、どこがポイントなのかを知るには、税務署は、どのようにして死亡を知り(相続発生を知り)、財産がどれくらいあるかを知り、重点的に調べるべきとされるかを知る必要があります。

上記数字、下記表は国税庁の統計、税務通信令和3年8月9日記事等により加工して算出した。

低階級 中階級 高階級
相続財産課税価格 5000万円未満 5000万円~1億円 1億円~3億円 3億円~5億円 5億円~7億円 7億円以上
調査省略 99.5930% 96.2269% 84.3142% 67.7731% 64.8195% 59.6782%
事後処理(行政指導) 0.0791% 0.5828% 0.7390% 1.0053% 0.9659% 1.0575%
事後処理(実地調査以外) 0.0477% 0.2792% 0.3874% 0.2656% 0.3050% 0.4138%
机上調査 0.0729% 0.6749% 0.9064% 0.4742% 0.2542% 0.1379%
実地調査 処分なし 0.0590% 0.2141% 2.0280% 4.7610% 5.3889% 7.0345%
実地調査 追加納税 0.1482% 2.0221% 11.6250% 25.7208% 28.2664% 31.6782%

2. 税務調査の対象となりやすい申告書とは?

税務署が税務調査に入りたくなる申告書があります。
例えば、

1. 申告書の精度が低く計算ミスがある、法律・特例の適用誤りがある
税務署としては、客観的に認められる税額に是正する義務があるため、税務調査する必要があります。
2. 税理士の署名がない申告書
相続税の申告は、財産評価や計算過程なの複雑であるため、専門家が関与しない申告書についてはミスが多く申告漏れの確率が高いため、税務署は入念にチェックします。
3. 財産評価の資料が少ない申告書
財産評価に関する資料の添付は義務ではありませんが、本当に適正に評価されたか否かについて、税務署で検証しなければならず、問題点がないか(相続税が増えるのではないか)という観点から調査することになります。
4. 相続人から提出される各申告書の相続財産額が異なる申告書
相続財産の総額は、変わらないはずですが、相続人がそれぞれ提出する申告書の相続財産額が異なる場合には、税務署から見ると、相続人がそれぞれ遺産を隠しているのではないかとように映ります。
5. 申告書の遺産総額(純資産ではなく総資産です)が2億円以上
税務署内部での、実地調査をするか否かの判定基準として上記の基準があります。

当事務所は、弁護士と税理士が在籍しており、また、国税不服審判所の勤務経験がありますので、税務署が何を考えて、何に着眼してくるのかが予想できますので、事前の打ち合わせで税務署員がついてくる質問事項について聞き取りし、対処方法を依頼者とともに検討します。

3. 税務署の内部資料から税務調査の対象となりやすい場合とは?

税務署は、源泉徴収票をはじめとした様々な情報を蓄積しており、その蓄積した情報と申告書を対比して「相続財産が少ない」と疑問を持つと、税務調査に入ることになります。
例えば、

1. 生前の所得から推測して、遺産額が少ない
算式としては、
{(収入-400万円(生活費)-税金)×5年+負債額 } > 申告書の遺産総額
の場合、つまり申告書の遺産総額が少ない場合には、申告漏れがないか疑って、相続人をはじめとした家族名義の預金について銀行へ照会していきます(照会する際は、亡くなったか方及び家族について10年分照会して高額な入出金について突合していきます)。
2. 直近10年のうちに譲渡所得金額が5000万円以上ある
譲渡所得の金額やそれを元手に購入したと思われる財産が申告書に記載がない場合には、申告漏れの可能性が高くなります。
3. 亡くなった方が、医師や会社役員であった
高額所得者の代名詞ともいえる職業の場合には、財産も多額になることからマークされます。なお、余談ですが、弁護士も選定基準の職業の一つであったものの、経営苦で廃業される方も多いので、亡くなった方が弁護士だから税務調査の対象になるというよりも、儲かっていたか、つまり①の基準で税務調査の要否を判定されると思われます。
4. 亡くなった方に関する利子調書や配当調書などがある
高額な財産があったことをうかがわせるので、税務調査の対象となります。
5. 不動産の評価の減額要因
不動産の評価を下げる特例としては、小規模宅地の特例、広大地の特例、また道路との段差が著しいなどがありますが、税務署はこのような減額要素について要件を満たしているかを念入りにチェックします。不動産の場合は、要件を満たしていない場合には追徴税額大きくなり、税務署員の勤務評価に反映されやすいことから、不動産のチェックはほかのものより念入りです。
小規模宅地の特例については、要件を満たさない場合も多いので、入念にチェックします。
特に「広大地」については、減額幅が大きいため、広大地の要件を入念にチェックします。なお、広大地については、納税資金に余裕があるのであれば、当初申告では広大地として申告せずに、更正の請求で広大地を主張したほうが無難です(当初申告で広大地の適用を主張して認められなかった場合、結果的に過少な申告となり、10~15%の過少申告加算税が賦課されてしまいます)

なお、上記は、簡易な判定基準であり、税務調査しなければならない事件が多数ある場合には、さらに詳細に基準で優先順位を決めます。
例えば、

i. 過去35年間で所得金額が2000万円以上であった年分が10回以上ある
それだけ相続財産も多額であるはずということで実地調査の確率が高くなります。
ii. 亡くなった方がオーナーであった法人の税務調査で、多額の不正があった
法人で過少申告や隠匿があった場合には、相続財産も同様に過少申告、隠匿があったのではないかと疑われることになります。
iii. 債務が多いが、債務で購入したと思われるプラスの財産が申告書にない
保証債務であれば別ですが、借金したお金は何らかの形で残っているのではないかという観点から疑いの目で見ることになります。

上記以外にも詳細な基準があり、詳細な基準に照らして、実地調査するか机上調査のみで済ますかの優先度合いを判断しているようです。

4. 税務署が実地調査前に調べることは何か?

税務署は、申告書がおかしいから、すぐに実地調査に来るわけではありません。申告書自体の計算誤り、土地の評価方法や評価額が合っているかを調べつつ、

  • (1)亡くなった方と相続人の方のゆうちょ銀行、銀行預金などの10年分の入出金履歴を取り寄せます。
    なお、口座の開設が子供の遺志で行われたかを確認するために印鑑票を取り寄せることもあります。
  • (2)金庫の有無や開閉記録も照会します(相続前後に慌てて貸金庫から取り出してないかを確認するため)。

上記の亡くなった方とご家族の入出金履歴から、

1. 高額な又は高頻度の出金はないか、出金された金額は何に化けているか
「生活費」では説明できない出金の場合には、何に使われたかについてそれなりの説明ができるようにしておく必要があります。
自宅のリフォームに使用したのであれば契約書がないか確認が必要ですし、3年以内に贈与したのであれば相続税申告書に反映させる必要があります。
なお、海外に送金した場合には、100万円以上の場合には銀行が調書を作成して税務署に提出するので、海外の預金口座も把握されていると思ったほうが良いでしょう。
2. 家族名義の預金は、本当は亡くなった方の預金(遺産)ではないか
家族に収入がある場合で、収入では形成できないほどの多額の預金の場合には、遺産に含めるべきと税務署は主張してきます。
例えば、長年、年金収入のみ、パート収入のみ又は専業主婦(夫)であった配偶者、未成年又は学生の孫の名義の口座に多額の預金があり、贈与税の申告書の提出もない場合には、税務調査の対象に浮上してきます。
3. 保険金の有無、保険料引き落としの有無
申告書に記載がある保険金と異同はないかを確認するほか、保険契約者が妻や子であっても、保険料を負担した方が亡くなった方の場合には、その保険に係る金員(解約返戻金など)も相続財産となりますので、保険料がどの方名義の口座から引き落とされているかを確認します。
  • (3)市町村から送られてくる不動産の一覧(名寄帳)
  • (4)生前の資料から判明している証券口座(損益通算などの資料)
  • (5)生命保険(生命保険料控除の資料。これも、家族名義も含めて調査します)

照会等して資料を収集します。
税務署は、金融機関等から収集した資料と、申告書の記載と比較して、申告漏れがないかをチェックし、多額な漏れが見込まれるものから優先的に実地調査をしていくことになります。
なお、これは余談ですが、代々続く資産家は、生前からきちんとした相続税対策をされているので調査させる「隙が無い」のですが、一代で資産を築き上げた方や二代目の方の場合には、乱暴な節税策をして税務署の格好の調査対象になることが多いように見受けられます。

5. 税務署がよく着目する「申告漏れ」とは?

税務署は、より多くの税金を取るために、重点的に確認する事項があります。
当事務所は、弁護士と税理士が在籍しており、また、国税不服審判所の勤務経験がありますので、税務署が何を考えて、何に着眼してくるのかが予想できますので、事前の打ち合わせで税務署員がついてくる質問事項について聞き取りし、対処方法を依頼者とともに検討します。もちろん、申告段階から依頼されるのが、一番ではあります。
上記の亡くなった方とご家族の入出金履歴から、

1. 名義預金など
被相続人から出金されたものであることが明らかな家族名義の預金。例えば収入がない主婦名義の多額の預金や保険、子供名義の預金や保険などについては、疑いの目で見てきます。これについては、原資、収益を収受した者が誰か、通帳やキャッシュカードを管理していたものはだれかなどから総合的に判断します。
2. あげたつもり預金・財産
もらった側に、贈与された認識がない財産についても、「贈与契約」が成立していないとして、被相続人名義の相続財産と認定されることになります。
3. 勝手に引き出し預金
親が認知症又は入院中に、子供が病院代に充てるために引き出すことがあります。しかし、病院代などで説明できない多額な出金がある場合には、親が子に対して出金額の返還請求権を有することになり、それも相続財産と認定されることになります。
4. 生活費の残りをへそくりにしたものは???
グレーですが、残りは自由に使ってよいと夫から言われていたのであれば、毎月贈与があったとみることは可能と思われますが、金額、入出金態様、亡くなられた方の生活状況などによりますので専門家に相談する必要があります。
5. ほかの家族に内緒で保険金受取人になっていた
生命保険金の受取人になっていたものの、他の家族に内緒にしている場合もたまにあります。しかし、生命保険金は、相続税の計算対象になるため、相続人全員の相続税額に影響しますので、内緒にするのは得策ではありません(過少申告加算税が賦課される事態になります)。
6. 亡くなった方の親名義の不動産
生命保険金の受取人になっていたものの、他の家族に内緒にしている場合もたまにあります。しかし、生命保険金は、相続税の計算対象になるため、相続人全員の相続税額に影響しますので、内緒にするのは得策ではありません(過少申告加算税が賦課される事態になります)。
7. 配偶者の軽減特例の対象となった財産の現在名義
配偶者の方は、課税価格が1億6000円万円と法定相続分のうちのいずれか多い方までは相続税を支払わなく良いとされますが、もし申告書で配偶者が取得した財産として記載しているのに、実際には子供名義になっていた場合には、その財産については配偶者軽減の対象とならないか、妻から子へ贈与されたかのいずれかになります。この点についても確認を要します。

6. 税務署ではなく「国税局」が調査する場合も!!

国税局と税務署は、よく本店と支店に例えられますが、税務署では手に負えなそうな事案などの場合は、国税局が調査する場合もあります。
国税局が調査する事案としては、

  • 1. 遺産総額が5億円を超える事案、
  • 2. 海外取引が多いなど複雑な事案、
  • 3. 他税目(所得税・法人税)とも連携して調査を要する事案、
  • 4. 著名人の事案、

などが挙げられます。もちろん、上記の場合でも税務署が調査することもあります。

7. 税務調査の流れ

1. 調査省略とは
申告書などから判断して、調査しない場合はよくあります。申告書についてスキがないとか、33条の2書面の添付で疑問点が解明できる場合なども多いからと覆われます。
また、遺産額が少ないほど調査省略となることが多いようです。例えば1億円未満の場合には96%以上、1~3億円で84%、3億円以上でも60%の件数で超省略となっています(税務通信令和3年8月9日記事)。
ただ、重加算税については、遺産額が5000万円~3億円である場合に多いようです(税務通信利和3年8月9日記事)。これは、納税資金対策を生前にしてなかったり、大きな金額に慣れていないなのかダメもとでの無理な行為(税理士に財産全部を報告しない、無理な評価減を狙うなど)をしがちであることによると推測されます。

低階級 中階級 高階級
相続財産課税価格 5000万円未満 5000万円~1億円 1億円~3億円 3億円~5億円 5億円~7億円 7億円以上
調査省略 99.5930% 96.2269% 84.3142% 67.7731% 64.8195% 59.6782%
事後処理(行政指導) 0.0791% 0.5828% 0.7390% 1.0053% 0.9659% 1.0575%
事後処理(実地調査以外) 0.0477% 0.2792% 0.3874% 0.2656% 0.3050% 0.4138%
机上調査 0.0729% 0.6749% 0.9064% 0.4742% 0.2542% 0.1379%
実地調査 処分なし 0.0590% 0.2141% 2.0280% 4.7610% 5.3889% 7.0345%
実地調査 追加納税 0.1482% 2.0221% 11.6250% 25.7208% 28.2664% 31.6782%
2. 机上調査(申告書提出(又は無申告の場合は法定納期限)から6~12か月の期間)
相続人へ実地調査に行く前に、故人や家族の10年分の入出金状況や申告の不備は丹念にチェックし、不動産についても市町村から名寄帳を取り寄せてチェックして、故人の相続財産の概要と入出金で不自然な点がないかをチェックしていきます。
照会→回答、回答書から新たに湧き出た疑問点について、さらに照会→回答を繰り返していきますので、時間をかけて調査をします。課税当局としては、仮に所得税や法人税をごまかしていたとしても、最後の相続税できちんと課税したいという意識(きちんと納税している一般国民が馬鹿を見ないようにしたいという意識)が強いので、所得税事案や法人税事案以上に相続税事案は時間をかけて丁寧に調べると言われています。
上記の調査を経た上で多額の申告漏れが想定される場合に、実地調査へと移ります。実地調査せずに、電話等で疑問点や計算誤りを伝えて自主的な修正申告を提出させる簡易調査で終わることもありますし、適正に申告されているとして机上調査終了する場合もあります(上記表によると、件数は非常に少ないようです)。
3. 相続人への実地調査と実地調査の多い時期
机上調査により多額の申告漏れやミスが見込まれる場合には、税務署は、いよいよ実地調査に移ります。
税務署は7月10日が人事異動時期で、人事評価は9~翌年3月ということもあり(なお8月は研修や夏休みで職員の実働時間がそろわない)、早めに結果を出したいためか8~12月に調査の連絡が来ることが多いと言われ、1~3月は確定申告時期なので実地調査が難しく、4月以降は、人事評価も終わり異動時期が迫るので調査は多くはないと言われています。もっとも、人事異動は2~3年に1回で、異動されない方もいらっしゃいますので、調査時期については一概には言えない部分もあります。
また、調査の場所については、通帳の保管場所など重要書類の保管状況を確認するため、被相続人の自宅を希望することが多いです。
したがって、実際の調査に先立って、税理士や弁護士と調査に先立ってリハーサルを行うほか、書類を提示できるように用意しておく必要があります。
統計上の数値としては、実地調査に入られた場合、80%以上の割合で追加納税(修正申告、増額更正処分)を受けることになります。
4. 実地調査の流れ
A. 調査の連絡
まず、税務署員から実地調査の希望日の連絡が、予定日の7~10日前に相続人の代表者にあります。 税理士が申告書を作成している場合には、税理士に連絡があります。 なお、税務署から提案された日程に先約がある場合には、変更してもらうことは問題ありません(あくまで常識の範囲内で、1年先にしてほしいというのは受け入れられないでしょう)。
B. 初日(午前)
税務署は、2人1組で調査に来て、1人が聞き役、1人がメモ取りに専念します。 税務署の署員は、午前の聞き取り調査については、詰問・尋問ではなく、あくまで、既に把握した資料から想定される事項を確認する、又はヒアリングするというスタンスで臨まれます。ただし、禁則文言があるので注意(申告の際に家族名義の預金を「除外」したのかなど)。 午前は、被相続人の人となり、職歴、兄弟姉妹関係、交友関係や趣味、生前の病歴、お金遣いのポリシーなどを聞かれ(子孫に美田を残すタイプかそうでないかなど)、ここで「使途不明金」(実地調査前に詰め切れなかった被相続人の口座から流出した金額が生活費以上の場合の使途不明金の発生原因をそれとなく確認していきます。

  • a.例えば趣味であれば、趣味にどの程度の金額を費やしていたか、趣味をしていたかの裏付けとなる資料がないかという観点からヒアリングしてきます。
  • b.遺されたご家族が専業主婦で、多額の預金がある場合には、親から相続した財産があるかを確認的に聞かれたり、毎月渡された生活費の金額、生活費としてどれくらい必要だったか、残ったお金をどうしたかなどを聞かれたりします(このあたりは要注意の質問であり、専門家とどのように回答するかを入念に打ち合わせする必要があります。)。
    残された奥さんが、毎月必要な生活費は30万円ほどだったと言った瞬間、税務署員は、亡くなった方の10年間の出金合計額(1億円)-30万円×12月×10年=名義財産6400万円と計算して、追求してくることになります。
  • c. 亡くなれた方がサラリーマンの場合には、転勤の苦労話を聞きつつ、転勤地での預金口座や不動産があるかどうか調査するためのとっかかりとします。
  • d.相続人同士の関係など親族関係も聞かれ、誰が後継者か、かわいがられたかなどから、亡くなられる直前の病状や認知症の程度などを聞いて、晩年の財産管理をしていたのはだれかなど探ります。
  • e.また、そのものずばり、預貯金口座の印鑑・キャッシュカードの管理者、利息の収受者も確認してきます。
  • f.また、トイレに行った際にタオルが金融機関のものかもチェックして、申告書に記載があるかも確認します。
  • g.特殊関係人がいた場合には、相続人側から説明したほうが良い場合もあります。

このように、税務署員の話は、雑談に見えても、一切の無駄がなく、申告漏れの財産があるのではないかという意図のもとで組み立てられています。

C. 初日(午後)
午後からは、いよいよ現物調査となり、税務署員が本当に聞きたいことを午前の回答内容と整合するかを含めて聞いてきます。
  • 1.通帳の確認、印鑑の保管状況を聞かれて印鑑を持ってきてほしいといわれます。
    税務署員は、まず朱肉をつけずに押印し(最近使用した形跡がないかの確認)、その後印影が映るように押印します(預金口座などの開設届・印鑑票の印と後で照合して、誰が管理者であったかの判断材料の一つとします)。もし、別居の子供の口座の印鑑が、出てきたら、その口座は名義預金ではないかと疑われてしまいます。
    生命保険や死亡退職金の入金口座の名義や印鑑の保管者も確認してきます。
  • 2.香典・芳名帳で、交友関係や金融機関をチェックし、
  • 3.手帳や携帯電話の電話帳もチェックし(金融機関)
  • 4.証券、印鑑、家屋内にある金庫の現物確認
    生命保険、退職金の入金される口座の印鑑がどれかも確認しておく必要があります。また、家屋内にある金庫(手提げ金庫を含む)についても、開扉して在中物、例えば不動産の権利証、古銭、金のインゴットの確認をしてきます。もし帯封がついた札束があった場合には、帯封に記載された金融機関の預金が漏れて否かをチェックされることになります。
  • 5.仏壇、書斎
  • 6.被相続人及び相続人の通帳の入出金
    調査官は、事前に10年分の履歴を取り寄せて、大きな出金とその流れを事前にチェックをしており、特に大きな出金について、その使途を確認してきます。
    やりがちなミスは、出金したお金を死亡後に治療費や葬儀費に充てている場合に、資産に現金、負債に未払治療費・未払葬儀費を挙げ両建てするべきところを負債のみ計上する場合がある。
  • 7.貸金庫
    貸金庫契約は、口座から利用料が引き落とされるので、調査官は、口座の入出金履歴を調べている段階で把握し、かつ、生前と死後の貸金庫の開扉の履歴も調べています。そのため、貸金庫の存在や死後に開扉したことは認めたほうが良いでしょう。仮に認めないと、重加算税が賦課される可能性があります。
  • 8.相続税の納付状況
    相続税について誰が支払ったかも必ず聞かれます。例えば、母親が子供の相続税も支払った場合、立て替えているとか、少しずつ返済してもらっているという必要があるほか、返済実績も残す必要がある。
  • 9.経営していた会社関係
    • i.名義株がないか否か
      昔の商法では出資者が7名以上でないといけない時代があり、また、相続税対策で従業員や取引先名義の株式が存在することがある。調査官は、株式払込金(出資金)を負担したのが故人ではないのか必ず聞いてきます。
    • ii.会社との債権債務関係
      故人の会社に対する貸付金も相続財産になる。回収可能性がほとんどない赤字会社でもプラスの財産と扱われる可能性が高いので、生前に個人が債務放棄をするか、推定相続人に債権譲渡(贈与。譲渡通知・承認もしておく)しておく必要があります。
  • 10.海外資産
    海外への出金履歴がある、海外に滞在した時期があるなどの場合に疑われる。また、場合によっては、外務省に照会して入出国履歴を取り寄せて検討することもある。多額の出金履歴があり、使途が不明の場合には、海外の不動産などの資産を購入していないかを疑う可能性が高い。
    また、外国の当局と、条約により租税情報を交換している場合には当該国における資産が判明することも多い。
D. 実地調査後
実地調査で、相続人側に宿題が残る場合もあれば、税務署側で補充調査を要すると判断する場合もあります。それぞれに応じて、疑問点を解明していきますが、弁護士や税理士が選任されている場合には、専門家と税務署員とで話を進めていくことが多いです。
重加算税を賦課する事案、被相続人や相続人が財産を隠匿していた場合やなどには、相続人からの聞取り(質問顛末書の作成)などをする場合もあります。
相続財産が多額であればあるほど、財産の種類が多ければ多いほど、調査に時間がかかります。
E. 終了通知又は修正申告の勧奨
申告漏れなどの非違がない場合には、終了通知により終了しますが、申告漏れなどがあると税務署が考えた場合には、修正申告を勧奨してきます。
F. 相続人などとの情報共有
相続税を納付した相続人や受遺者とは、随時情報共有しておく必要がありますが、特に修正申告の勧奨があった場合には、修正申告するか、更正処分を受けて不服申立てをするかの方針を決定する前に、相続人や受遺者などと増加する税額がいくらくらいになるかを情報共有しておく必要があります。
なぜなら、

申告書記載の相続財産増加
 → 全体の相続税額の増加
 → 各人の相続税額の増加+加算税・延滞税の発生

とつながっていきますので、しっかりと情報共有しておかないと、兄弟喧嘩を引き起こしてしまいます。
G. 更正処分、不服申立
修正申告に応じない場合には、税務署が更正処分(≒税務署の認識では申告漏れがあるので相続税○○円を支払いなさいという処分)をします。
また、更正処分とともに過少申告加算税(10~15%)、財産を隠匿したり、家族名義に仮装したり、殊更過少に申告していた場合には重加算税(35%)が賦課されます。法定申告期限までに申告できていない無申告の場合には、無申告加算税(15~20%)や無申告について重加算税対象であれば重加算税(40%)が賦課されます。
また、納付するまで延滞税が毎日発生しますので、速やかに本税、加算税、延滞税を納付する必要があります。
なお、本税、加算税、延滞税を納付したからといって、処分を認めたことにはなりませんので、延滞税の発生を止める意味でも速やかに納付するのが良いでしょう(売掛金や請負代金など民事上の請求の場合には、異議をとどめずに支払うと、請求金額に争いがなかったのではないかという問題が生じえます)。
また、納税者としては、更正処分や過少申告加算税・重加算税について異議申立(再調査の請求)や審査請求をしていくことになります。なお、本税には本税の争い方があり、過少申告加算税や重加算税にはそれぞれの加算税の要件や裁判例に合わせた争い方があります。実際に異議申立て(再調査の請求)や審査請求をするには、実際の審査請求の経験がある方(国税OBであれば審理系の方)、国税不服審判所に勤務した経験のある方でないと、取扱経験が少ないこともあり難しいと思われます。
異議申立(再調査の請求)は申立てから3か月ほどで、審査請求は申立てから1年ほどで結論が出るとされています。
H. 裁判
異議申立(再調査の請求)、審査請求をしたものの、納得を得られない場合には、裁判をするか否か検討することになります。
税務訴訟(再調査請求、審査請求含む)は、行政訴訟の一種で、民事訴訟とは異なり和解がなく、法と証拠のみで黒か白かを判断され、中間的破壊血というものがありません。
また、税務裁判は、特に、納税者側に多大な労力と資力を強いられる上に、統計上の勝訴確率は、医療過誤訴訟の患者側勝訴率より低くなっています。
そのため、遅くとも審査請求の結論である裁決が下されるまでに、裁判をするか否かの大まかな方向性を弁護士と協議して検討しておく必要があります。
判決が出るまでの期間は、一審判決では2年ほどかかります。

8. 税務調査前に何をするべきか

税務調査の流れから、何を準備するかが見えてくると思います。
亡くなられた方のヒストリーや財産の形成状況を、ご家族の財産など客観的証拠と整合させながら、無理なく申告書記載の財産が総遺産であることを説明する一本のストーリーとして固めておく必要があります。
単に、「相続財産ではなく、実質的にも家族の財産だ」と主張するだけでは、説得力がありませんし、上記主張に沿う証拠を収集してく必要があります。
したがって、実地調査、できれば申告段階から税理士や弁護士、特に弁護士と相談しながら望む必要があるといえます。

9. 費用

務調査立会い27.5万円(調査前日、調査当日などの調査立会いの日当含む)
修正申告が必要な場合。別途33万円~

異議申立て 22万円+成功報酬27.5%
審査請求 33万円+成功報酬27.5%

相続税申告お任せパックプラン

税理士報酬規定よりお得で、気軽にご利用いただけるサービスです。

従来の相続税申告は、富裕層が対象であることから内容が複雑な場合が多く、比較的高額な料金設定になっていました。しかし2015年の相続税法改正により基礎控除額が大幅に引き下げられ、相続税は富裕層だけの問題ではなくなりました。『相続税申告お任せパックプラン』は、改正を機に申告が必要になった、申告内容がシンプルなご遺族にご利用いただきやすい、リーズナブルな価格設定をしています。

対象の方

  • ・遺産総額が一億円未満の方
  • ・非上場株式評価がない方
  • ・延納申請、物納申請がない方

遺産総額は下記の合計額になります。

相続人、受遺者の取得財産の合計額 純資産価額に加算される贈与財産額
死亡保険金等、死亡退職金等の非課税金額 小規模宅地等の減額された金額

基本料金

437,800円~
<基本条件に加算されるもの>
相続人が複数の場合 基本報酬合計額の11%加算(ご自身を含め2名の場合は1名分を加算)
土地の相続評価額計算 1区画につき110,000円
税理士法33条2書面作成 基本報酬合計額に対して計算
申告期限まで
3か月ない場合等
報酬合計額の33%加算
  • ※土地や非上場株式評価、財産評価が著しく複雑な時など別途お見積もり致します。
  • ※出張日程、交通費が必要な場合は別途頂戴いたします。
  • ※当事務所と顧問契約をしている方は、割引がございます。
  • ※費用はすべて税込となります。
相続に関する質問に多数お答えしています
  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。