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相続による借地問題

相続した土地の上に、別の親族が所有権を持つ建物が建っています。撤去させて土地を売却したいのですが、どうしたらいいですか?

相談者
年代:Hさん/50代
性別:男性

ご相談の経緯

相続した土地の上に建つ弟の妻の住居を撤去したい

亡き祖父が所有していた福岡にある土地を相続することになったHさん。遠方にあるため活用する予定もないため、相続する土地を売却したいと考えていますが、土地の上にはHさんの弟の妻が住んでいた建物があります。

地代の支払いもないことから、契約を解除して建物を撤去してほしいHさんでしたが、弟の妻とは長い間連絡を取っておらず、不動産の問題は専門家に任せたほうがいいだろうと思い、弁護士に相談することにしました。

ご相談のポイント

借地問題でネックになりやすい撤去費用

一般的な土地の賃貸借契約では契約終了時に借主が土地を現状回復し貸主に返却することになっています。したがって、今回のケースでは地代を支払っていないので債務不履行で契約解除となり、Hさんの弟の妻が撤去費用を負担し、建物を撤去しなければなりません。しかし、Hさんの意向を内容証明で送付したところ、弟の妻の子供から「応じることはできない」という返答で、手紙の中には、「重度の認知症で介護施設に入所している」と記載されていました。こういった場合、どうすればいいのでしょうか。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

成年後見制度を利用して土地の所有権をHさんに移行

本当に本人が認知症か否か確認をする必要があるため、施設に行きましたが、コロナで会うことはできませんでしたが、内容証明を受け取った子供が申請して地元の司法書士が成年後見人に選ばれました。本来なら撤去費用はHさんの弟の妻に負担してもらうところですが、成年後見人から財産が50万円程度しかないと言われ、成年後見人が家庭裁判所の監督下にあること、裁判所に提出された財産資料などから、裁判をしても撤去費用の改修は難しいと判断し、また、Hさんが近隣に声をかけて買い手候補者が見つかっていたこともあり、建物の所有権をHさんが無償で譲りうけることで合意しました。その後、Hさんは、現状有姿で不動産を買い手に売り渡しました(撤去費用相当額は代金額がから減額となりました。)。

弁護士からのコメント

親戚同士の問題は無理強いできない

最初の内容証明の段階でご本人ではなくお子さんから返事があったことで、薄々予想はついていましたが、実際に会ってみないと状況はわからないものです。コロナ禍で面会はできませんでしたが、現地に赴いて施設の職員の方からお話をうかがい、問題となっている土地と建物も確認しました。住居の中に動産が多いと撤去費用も嵩むのでは…と危惧していましたが、既にあらかたお子さんが撤去してくれていたので最小限で済ませることができました。

今回のケースのように、他人同士なら多少強く主張することができても、親戚同士ではなかなか無理は言えません。撤去費用はHさんが負担することになってしまいましたが最小限の負担に抑え、無事に土地を売却することができました。

まとめ

財産管理や取消権、相続の承認などは本来、本人にしか行なえません。 しかし、今回のケースのように、渦中の人物が認知症などによって自己判断能力が不十分な場合があります。その際には成年後見制度の申し立てを行い、成年後見人と問題解決を図っていくことになります。既に自己判断能力を失っている場合は家庭裁判所に申し立てを行い、法定後見人を選出することになります。成年後見制度についてもサポートしていますので、弁護士にご相談ください。

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