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企業法務・売掛金回収

5年前から契約している顧客の支払いが滞るようになってきました。少額なので様子見していましたが、このままでは今後の取引にも差し支えます。交渉して売掛金を回収してほしいのですが…。

相談者
年代:A社

ご相談の経緯

滞っている数十万円の売掛金を回収したい

相談者であるA社は取引先の企業B社に対して数十万円の売掛金を持っています。数ヶ月前から支払いが滞りはじめ、最初は少額だからと様子見していましたが、このままではさらに売掛金が増える可能性もあり、今後の健全な取引のためにもどうにかしたいと弁護士に相談することにしました。

ご相談のポイント

取引履歴を調べて取引先の登記を調査

取引履歴を調べてみると、A社が取引を始めた当時のB社の社名が「株式会社B」だったのに対し、支払いの遅延が始まった頃には「B株式会社」になっていることが判明しました。変更があった当時からA社の取引担当者はB社の社名が変わっていることに気づいていましたが、B社に「名前が少し変わりましたが同じ会社なので大丈夫ですよ」という説明を鵜呑みにしてしまいました。しかし、「株式会社B」の登記では日本人だったのが、「B株式会社」の登記では代表がアジア人になっていました。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

「B株式会社」が破産準備を始め、回収に失敗

A社の意向としては、これまで顧客相手に訴訟を起こしたことはなく、今回も裁判沙汰にはせず交渉でなんとかしてほしいとのことでした。しかし、「株式会社B」と契約書を交わしているのに途中から「B株式会社」という別会社に変わっているのは詐欺罪に問われてもおかしくない問題です。弁護士は数ヶ月に渡り「B株式会社」のジェネラルマネージャーと交渉を続けましたが、最終的には事務所に連絡しても繋がらなくなってしまいました。本来ならジェネラルマネージャーの出入国照会をし、会社の実体を掴むべきですが、売掛金以上の金額を使ってまでやるべきことではありません。結局「B株式会社」が破産を申し立て、売掛金は回収することはできませんでした。

弁護士からのコメント

社名が変わった時点で登記調査をするべき

本当なら訴訟を起こしたかった案件ですが、依頼主の意向ではありませんし、売掛金の金額も少ないため、粘り強く交渉するという手段しか取ることができませんでした。今回のケースはいわば失敗例ですが、A社に法務部や顧問弁護士がいて早い段階で相談できていればトラブルを未然に防ぐことができたという例でもあります。社名が変わっていることに気づいた時点で登記調査ができなかったことが悔やまれます。売掛金の回収はスピード勝負です。少額だからと軽視せず、怪しいと感じた時点で弁護士にご相談ください。

まとめ

経理上のミスなどではない場合、取引先の支払いが滞るのは資金繰りに窮していることがほとんどです。そのため、弁護士に売掛金を回収したいと相談する時点で既に回収不能となっているケースが多々あります。少額だから、仲がいいからと躊躇しているうちに、相手が破産の準備に入ってしまえば回収するのは不可能になってしまいます。そうならないためにも常日頃から継続的な与信管理が必要です。取引先が怪しいと感じたらすぐに相談できる弁護士と顧問契約を結ぶのも大切です。

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