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遺留分侵害額請求

生まれたばかりの私と母を捨てた父が亡くなったという知らせを受けました。 父には養子がおり、遺言は全財産を養子に譲るというものでした。それでも、実子である私には父の遺産を受け取る権利はありますよね?

相談者
年代:50代
性別:男性

ご相談の経緯

自分の受け取るべき相続分を確保したい

生まれてすぐに両親が離婚し、母に引き取られたNさん。父の顔も知らないまま大人になったNさんは、ある日突然父が亡くなったことを知らされました。Nさんの父は離婚した後、養子を迎えており、遺言書の内容も「養子に全財産を譲る」というもので、Nさんは自分の存在が否定されたようで言いようのない悲しみと怒りを覚えました。

しかし、不満をぶつける相手はすでにこの世にはなく、せめて自分が相続できる遺産があるなら受け取りたいと当事務所に相談に来られました。

ご相談のポイント

「全財産を譲る」という遺言書の内容は有効か

お父様の作成した自筆証書遺言は「養子に全財産を譲る」というものでした。

法定相続人が一人しかいないならともかく、複数人いる場合には他の相続人からは当然不満が出る内容です。しかし、形式に不備がなければ、たとえ他の相続人が不満を持っていたとしても遺言書の内容は有効です。なぜなら、遺産相続において、被相続人の遺志はでき得る限り尊重されるものだからです。

しかし、Nさんはお父様の実子で法定相続人です。法定相続人には遺言書でもなくすことができない最低限保障された相続財産の割合「遺留分」を請求する権利があります。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

遺留分侵害額請求を行って相手方と和解

Nさんのご希望は、「相続できる財産はできるだけ受け取りたい」ということでしたので、養子の方に遺留分侵害額請求を行いました。

相続の対象となる財産は、不動産だけでした。換金しづらいということもあり、相手方はお父様の医療費などについて、立て替えた金額があると主張されました。

Nさんご自身は長年抱えてこられたお父様へのわだかまりもあり、最初は和解することに納得されていない様子でしたが、これ以上要求すると不動産の差し押さえなどに発展し、コストがそれだけで数十万円単位になるこ

弁護士からのコメント

自筆証書遺言だったから訃報を知ることができた

Nさんがお父様の訃報を知ることができたのは、お父様が作成されたのが自筆証書遺言だったからです。自筆証書遺言は、被相続人自身で作成し保管するという性質から、相続人の誰かによって改ざんされる恐れがあります。

それを防ぐために、自筆証書遺言は被相続人が亡くなり次第、封をしたまま家庭裁判所に提出しなければなりません(封筒に入れられていない場合には、当該遺言書を提出します。)。そして、家庭裁判所は相続人全員に遺言の存在を知らせ、相続人立ち会いのもと開封されます(なお、立会は義務ではありません)。これを「検認手続」といいます。今回のケースでも、検認手続きのために養子の方はNさんに連絡を取る必要がありました。

もしも、お父様が生前贈与で不動産を譲っていたり、公正証書遺言を遺していたりした場合には、おそらくNさんはお父様の死を知ることはなかったでしょう。

まとめ

どれだけ特定の相続人に偏った遺産分割の内容でも、問題がない限り遺言書は有効です。今回のケースでも、もしNさんが遺留分侵害請求を行っていなければ、遺言通りに養子の方が全財産を相続することになっていました。 遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人に与えられた法律上保障されている最低限の相続財産の取り分ですが、請求することで初めて効力を持ちます。遺留分侵害額請求には時効がありますので、ご自身の相続財産が他の相続人によって侵害されていると感じられたら弁護士に相談されることをおすすめします。

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