相続問題事例

03

相続放棄①

3年前に亡くなった父にローン会社から督促状が届きました。
借金があると知っていたら相続放棄していたのに。
返済せずに済ませるには、もう手遅れでしょうか?

相談者
年代 :40歳代(被相続人70歳代)
属性 :相続人

ご相談の経緯

Aさんの父が亡くなって3年が経過した頃、突然、ローン会社から督促状が届きました。Aさんは、父に借金があることを全く知らず、相続放棄もしていませんでした。寝耳に水のできごとに困惑するAさん。「督促状の要求通り、支払わなくてはいけないのでしょうか?
相続放棄の期限は3か月と聞きましたが、何とかなりませんか?」と相談にいらっしゃいました。

ご相談のポイント

相続放棄の期限が過ぎてから、借金があることを知った場合、知った時点で相続放棄はで きないか?

相続放棄の期限
原則として、被相続人が亡くなってから3か月以内とされています。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

1. 家庭裁判所に相続放棄を申立てました。

Ⅰ証拠の提出

相続放棄の起算点は、原則として相続開始を知った日、つまり被相続人の死亡を知った日、とされています。しかし、「死亡後しばらくして借金の返済請求を受けた場合は、返済請求を受けてから3か月以内に相続放棄すればよい」という裁判例があり、救済裁判例と言われています(韓国民法では、この様な事例では、限定承認ができると規定されているようです)。家庭裁判所は“3か月”の起算点の認定については、慎重な態度で臨まれる場合が多く、
①知ったのが、死亡時ではなく、請求を受けた時点だという証拠。
②死亡後にプラスの財産を相続していない(法定単純承認事由がない)証拠。
の2つの証拠の提出を求められることがあります(証拠の提出を求めるか否か、求める場合、どこまでの証拠を提出しなければならないか、は裁判官によって差があるようです)。
そのため、ご依頼者にも、上記①と②の立証を求められることが予想されました。

そこで、①②の証拠を揃えて、相続放棄の申立をしました。
①については、督促状の封筒にスタンプされた配送の日付けで立証することができました。
問題は②の立証でしたが、被相続人の預貯金通帳の取り寄せなどをして、死亡後に出金がないか、あったとしても過去の裁判例から救済され得る程度の出金かどうかを確認。また、賃貸契約書から敷金の相続が無いかを確認して、それらを証拠として提出しました。

Ⅱ主張書面の提出

上記の証拠の提出のほかに、主張書面(提出証拠から法廷単純承認となる財産相続はなく、請求を受けて始めて債務を知ったと認定できる旨の意見書)を提出するなどしました。

以上の結果、申立ては受理され、相続放棄が認められました。

2. 債権者に確認して解決しました。

債権者に、「相続放棄の受理証明書」のコピーを送り、請求(提訴)をしないことを確認して、問題は解決しました。

解決までの流れ

平成25年
被相続人ご逝去
平成28年6月
ローン会社より請求
すぐにご相談・ご依頼
平成28年7月
相続放棄申述申立
平成28年8月
上記①と②に関する証拠の提出と主張書面を提出
平成28年8月
相続放棄受理
相手方に受理証明のコピーを送付して事件終了
    

弁護士からのコメント

1.督促状が来たらすぐご相談ください。

相続放棄をするには、戸籍謄本、除籍謄本、住民票除票などを収集する必要があり、時間 はあっという間に経過してしまいます。そのため、被相続人の借金や保証債務に関する督 促状が届いたら、すぐに弁護士に相談して、相続放棄をするかどうか相談する必要があり ます。

2. 相続放棄が受理されても提訴されたら。

亡くなって3か月以内の相続放棄受理の場合には、提訴されても、受理通知書を提出すればこと足ります。しかし、死後3か月をかなり経過してから相続放棄の申立が受理された場合、借金の返還請求をする者は、「知った日」が、「督促状を受け取った日ではなく死亡した日である」などとして、「相続放棄受理証明書」を相手方に送っても納得せずに提訴してくることもありますので、要注意です。
そんな場合は、相手方の属性、請求金額、督促状を出すまで期間が空いた理由、被相続人と相手方との関係性などを加味しながら、提訴される可能性も視野に入れつつ、上記①②の証拠を収集していく必要があります。その上で、相手方に対し、「相続放棄受理証明書」を提示するのみならず、提訴しても相続放棄の抗弁が認められること、起算点についての再抗弁が成り立たないことを、証拠を交えながら説得します。

まとめ

このように、逝去後3か月以内であれば起きなかった問題が、逝去して3か月経過後に申し立てる相続放棄では色々な問題点が発生します。そのため、相続放棄をする場合には、可能であれば早目に判断する必要があります。

なお、もし調査に時間がかかりそうだという場合には、3か月の期間伸長の申立(熟慮期間伸長申立)を行って、財産関係の他に借金関係についても調査をし、延長された期間にも調査が終わりそうになければ、さらに期間の伸長申立てをする必要があります。ただし。再延長、再々延長の申立ての場合には、どこまで調査をして、どこまでが調査未了かを具体的に申立書に記載して、審判官(裁判官)に納得してもらう必要があります。

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