相続問題事例

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相続放棄

出来心で預金通帳の残金を引き出したら相続放棄が取消しになると言われ…。

相談者
年代:60歳代

ご相談の経緯

Oさんは、財産の大半が借金であることを知り、相続放棄を決めました。Oさんには兄弟がありましたが、Oさんや故人の兄弟も全員が、当事務所に依頼され相続を放棄しました。
 故人には老朽化した建物などがわずかながらの財産があり、相続放棄をしても保管義務を負い、倒壊して通行人にけがをさせる可能性もあることから、Oさんは、保管義務から解放されるために、当事務所に依頼されて相続財産管理人の選任申立てをし、後は相続財産管理人が清算すれば片づくはずでした。
ところが、相続財産管理人が選任された後に、相続財産管理人とOさんと当事務所弁護士の3人で面談した際に、相続財産管理人から、被相続人が死亡した後に出金された通帳が見つかったとの指摘を受けました。

ご相談のポイント

故人の預金口座からの出金≒相続の承認

Oさんは、通帳が手近にあったことから、つい軽い気持ちで預金を引き出してしまったようでしたが、相続放棄後に故人の口座から出金したことは大きな過失でした。
このままではOさんが相続を承認したとみなされ、いったんは認められた相続放棄の効力はなく借金を支払うことにもなりかねません。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

当事務所の弁護士は、金額が大きくないこと、口座凍結を恐れて手元に保管しているだけであること、相続財産法人に引き渡す予定であることを説明し、相続財産管理人の弁護士も、上記説明で了承いただき、出金額を引き渡することで、相続放棄の効力が認められない事態を避けることができました。

弁護士からのコメント

「借金は放棄、財産だけ相続」は通用しない

相続放棄は、故人(被相続人)が作った借金を遺族(相続人)が返済しなくてもよいように設けられた制度です。相続放棄すれば、生前にどれだけの負債があったとしても相続人は払う必要がありません。ただし、放棄する財産には、借金のようなマイナスの財産だけでなく、預貯金や不動産などプラスの財産も含まれます。プラスの財産だけを相続して、借金のほうは放棄するなどということは認められません。

勝手に財産を処分すると 相続放棄が無効に

相続放棄後に被相続人の財産を隠したり、使い込んだりすると、法的には相続を承認したとみなされます(単純承認)。故人の預貯金を引き出したOさんの行為はこれに当たります。今回は、「出金はしたが、処分せずに保存している」と説明し、金員を相続財産管理人にすぐに引き渡したので、相続財産管理人の弁護士も矛を収めてくれて相続放棄は取り消しにならずに済みましたが(他にもいろいろな事実から、相続財産管理人がOさんは現金で保管していると認定したものと推測される事案でした)。下手をすると、相続放棄の効力が認められず、債権者たちから相続人であるOさんに対して債務返済を求める裁判を起こされ、、出金した額のみならずOさんの個人財産に対しても強制執行にすらなりかねないところでした。
なお、審判例の中には、死亡後の出金額が葬儀費用に充てられた場合などで相続放棄を認めたものもありますが、救済審判例であって、葬儀費用なら出金しても良いと一般化することはできないことに注意が必要です。

相続放棄したからには、財産には手をつけないこと。放棄した財産の管理は、選任された財産管理人に委ねることが鉄則です。

まとめ

弁護士が相続財産管理人に釈明しなければ、あやうく相続放棄が取り消されるところでした。こうしたトラブルが起きた場合も、弁護士ならお力になれる場合がありますので、お気軽にご相談をお寄せください。

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