相続人のうちの一人が行方不明の場合の処理
1 相続人の調査
相続人の調査は、まずは戸籍謄本を収集していき、住所の異動も確認するため戸籍附票も収集していきます。 もっとも、依頼者である相続人や受遺者と音信不通で、戸籍附票上の最後の住所地にも居住していらっしゃらない相続人(行方不明の相続人。おおよそ1年以上連絡が取れていない相続人)がいることはたまにあります。 遺産分割協議をしようにも、行方不明の相続人は協議書に署名押印できませんので遺産分割協議できないことになります。
2 不在者財産管理人又は失踪宣告
この場合、行方不明の期間が7年未満であれば、家庭裁判所に行方不明の相続人にかかる財産管理人の選任申立てをして、財産管理人とほかの連絡がつく相続人とで遺産分割協議をすることになります。 また、行方不明の期間が7年以上であれば失踪宣告の申立てをして、行方不明の相続人が死亡したして、行方不明相続人の相続人と遺産分割協議をすることになります。
3 不在者財産管理人選任申立ての注意点
不在者財産管理人の選任申立には、候補者を記載する必要があり、法定相続人でも受遺者でもないなど利害関係のない親族がいれば、当該親族を候補者として記載することになります。 注意点は5つあり、1つ目は家庭裁判所が、事案の複雑さなどから弁護士や司法書士などの法律専門職が管理人として適当と判断する場合があること、2つ目は仙人までに数か月を要する場合があること、3つ目は行方不明の相続人以外の相続人と遺産分割協議書案を申立書に添付することを要求される例があること(つまり事実上協議を終えておく必要がある)、4つ目は不在者財産管理人が遺産分割協議を成立させる際には家庭裁判所から権限外許可を受ける必要があること(法定相続分を下回る遺産分割協議については許可が与えられません)、5つ目は財産管理人の職務は、遺産分割協議により終了するものではなく、失踪宣告によって不在者が死亡とみなされるまで続くことです。 そのため、行方不明の相続人がいる場合には、不在者財産管理人の選任申立て(候補者探し)、遺産分割協議について権限外許可の申立て、失踪宣告申立てといった手続きをしていく必要がありますので、弁護士に相談しながら行う必要があるほか、相続税の納付が必要な場合には、迅速に不在者財産管理人の選任申立をするほか、相続税相当額の手当て・確保も検討しなければなりません。
4 失踪宣告申立ての注意点
失踪宣告の申立ての注意点としては、2つあり、1つ目は行方不明の始期が何時かという点での立証のハードルが高めであること(行方不明者の死亡という効果が生じるので当然ではあります)、2つ目は申立てから失踪宣告まで1年はかかるということです。 そのため、相続税の納付が必要な事案や不動産などの換価を要する事情がある場合には、不在者財産管理人の選任申立てを先行させたほうがよいかもしれません。
5 遺言書などによる対処
このように、相続人の中に連絡がつかない場合には、多大な時間とコストを要します。そのため、もし推定相続人の中に連絡つきそうにない、行方不明の方がいらっしゃる場合には、遺言書や信託契約などにより事前の手当てをしておくと、上記の多大な時間とコストを節約することができます。
6 行方不明者がいてお困りの場合には
このように、相続人の中に行方不明者がいて、遺産分割協議も進められないと言ったことでお困りの場合には、是非たちばな総合法律事務所へご相談ください(初回30分無料)。法務面と税務面の両面から助言いたします。
ご相談のご予約は、https://law-tachibana.sakura.ne.jp/law-tachibana.jp/contact/ 又は06-6467-8775にお電話いただいてご予約いただき、お気軽にご相談ください。
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