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公正証書遺言の作成

私には高齢の両親がいます。父と母に認知能力がある今のうちに遺言書を作っておきたいと考えているんですが…。

ご相談の経緯

兄弟の片方だけに相続させたい

次男であるご相談者は、長年にわたり、ご両親の面倒を見てこられました。当時、お父さんは施設に入所されており、お母さんはご相談者が在宅介護されていました。ご相談者にはお兄さんがおられましたが、親の介護はすべて弟まかせでした。

高齢になられたご両親は遺産相続を考えるに当たり、親を大切にしない長男を相続の対象からはずし、財産の全てを次男に譲りたいという意思をお持ちでした。ご両親は共に外出が困難だったので、代わりに次男が相談に来られました。

ご相談のポイント

相続人からの遺言書依頼には、被相続人の意思確認が必要

ご相談者は、親を介護してきた自分と、全く面倒を見ずに過ごしてきた兄とでは、貢献度に大きな差があることを述べられました。ご両親もこの点を了承しているので、そういう旨の遺言書を作りたいというご要望でした。

このケースのように、高齢者の相続では相続人になる子供が相談に来ることはよくありますが、子供の側の言葉を聞いただけでは遺言書は作成できません。実際には遺言者本人の意思とは違う内容だったということも十分にあり得るためです。まずは、ご両親の真意を確かめる必要がありました。そのため、弁護士はご両親のもとに出張して出向き、本人の意思を面談した上でその意思を確かめることにしました。

遺言者の認知能力の見極めも重要課題

もう一つの問題点として、高齢のご両親に正しい遺言能力があるかどうかを確かめる必要もありました。万一認知症の疑いがあると、せっかく遺言を作っても無効になりかねない、後日、遺言無効確認訴訟となる可能性もあるため、本人の判断能力(遺言能力)を見極めることが重要でした。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

弁護士がご両親とじかに会って真意を確認

弁護士は、ご両親と直接会って確かめることにしました。お父さんが療養中の施設と、お母さんのおられる自宅の2カ所に出向きました。お父さんは会話力、意思能力ともに何の問題もありませんでした。ご相談者からは、母さんの認知能力にやや不安な点があると聞いていましたが、実際に会ってみるとお母さんにも何の支障もないことがわかりました。ご両親共に遺言能力のあることがわかり、遺言書作成に向けて取組むことにしました。

公正証書遺言と、自筆遺言を両方作成

次に、遺言書に示す相続内容についての確認を得るために再び面会に出向き、財産のすべてを次男に与え、長男には残さないという点についても確かめたところ了承されたので、その旨を反映した公正証書遺言を作成することにしました。

ただ、公正証書遺言の作成には、書類整備や公証人との日程調整などで時間がかかるため、暫定的に、自筆遺言書の作成についても手続きを進めました。遺言者が高齢の場合、公正証書遺言を作っている間に亡くなってしまう可能性もあるので、不測の事態に備えるために自筆遺言の作成をおすすめしたところ、ご両親とも、その場で遺言書を書かれました。

程なく公正証書遺言もでき上がり、ご相談者とご両親双方の希望に添った遺言対策が実現しました。

弁護士からのコメント

相続のための養子縁組には注意点も

このケースでは、養子縁組を活用した相続対策も検討されました。ご相談者の子供、つまりご両親にとっての孫を戸籍上の養子にすることで、相続人の数を増やし、長男の遺留分を減額するという方法です。ただ、その場合、相手側から相続対策を狙った縁組ではないかと訴えられると、法定相続人と認められなくなる危険性もあり、祖父母・孫関係を超えた親子関係である証拠を積み重ねる必要があるなど慎重な検討が必要であることを助言しました。

遺言書作成には遺言能力のチェックも重要

高齢者の遺言書作成では、遺言能力(総合的な判断能力)の有無が問われる場合があります。とくに認知症の兆候があると、作成した遺言書が無効と見なされることがあります。
公正証書遺言では、作成現場に公証人も立ち会うので客観性が担保されますが、自筆遺言の場合は書面だけで遺言能力が判断できないため、有効性についても疑問が残ります。

認知能力を調べる方法の一つに「長谷川式テスト」があり、私たち弁護士もこの検査を利用することがあります。年齢や年月日の確認に始まって、計算力や記憶力を調べるという簡単なもので、30点満点で21点以上が正常、ヒトケタだと遺言能力はない可能性がかなり高くなります。
遺言能力に不安がある場合は、自筆遺言ではなく、公正証書遺言の作成を選ぶほうが確実といえるでしょう。

まとめ

法律で決められた相続割合ではない相続を望む場合、重要な役割を果たすのが遺言書です。
とくに、特定の相続人だけに全財産を相続させようとする場合は、生前に遺言書ではっきりとその意思を示しておく必要があります。
自筆遺言でも、法律上の規定を満たしていれば有効とされますが、一番確実なのは、弁護士によるサポートを得て作られた公正証書遺言です。どんな場合も遺言者の遺志は尊重されるので、まずは法的な効力を持つ遺言書を作成しておくことが重要です。

私たちは相続問題の専門家としての強みを生かし、ご相談者の事情に即した解決方法の提案を心がけていますので、お気軽にご相談をお寄せください。

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