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公正証書遺言の無効確認訴訟

生前、母が兄弟で揉めることのないようにと公正証書遺言を遺していました。しかし、その内容を不服に思った弟が弁護士をつけて、私に遺言の無効を主張してきました。

相談者
年代:60代
性別:女性

ご相談の経緯

弟と弁護士が「その公正証書遺言は無効だ」と主張

Tさんのお母さんは癌を患っており、入退院の合間に公正証書遺言を作成しました。その半年後にお母さんは亡くなり、公正証書遺言を確認すると、遺産の多くを長女のTさんに譲りたいというものでした。この内容に不満を持った弟は弁護士を雇い、この公正証書遺言は無効だと主張し始めました。弟の主張に戸惑ったTさんは当事務所に相談に来られ、相続税の申告も当事務所に依頼され、遺言書に従った相続税申告書を作成・申告しました。

ご相談のポイント

公正証書遺言が無効になるケースはあるのか

公正証書とは法務省管轄の公証役場で作成できる公文書で安全性と信頼性に優れた文書といえます。それ故に、作成には法的知識豊かな公証人が担当します。また、公証人が作成し、原本を公証役場で保管するため、改ざんや変造の心配もありません。そのため、公正証書遺言は、個人が一人で書く自筆証書遺言に比べて、確実性が高く、無効になる可能性はほとんどありませんが、公正証書遺言が無効とする裁判例も複数存します。その公正証書遺言を無効であるとの判決が言い渡されるケースとしては、遺言作成時にお母様が認知症などで遺言作成能力がなかった、証人となる人物が要件を満たしていなかった、遺言作成時に詐欺や脅迫があったなどの場合があります。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

訴訟になったものの、しっかりと反証して判決後に和解。

Tさんが相談に来られた時点では交渉の段階でしたが、「弟には遺留分相当額を支払い、公正証書遺言に従うべき」というTさんと法定相続分を望む弟さんとで交渉は決裂。相手方が公正証書遺言の無効確認訴訟を申し立てました。

「遺言作成時にお母様には作成能力がなかった」と主張する相手方に、こちらは当時のカルテや看護記録を取り寄せ、お母様には介護認定はなく、しっかりとした意思を持って遺言作成にあたったことを証明しました。また、遺言が手順どおりに作成されたことを証明するために、お母様の代理人として遺言の作成を支援した司法書士に証人になっていただきました。

最終的には一審判決で勝ち、その後相手方から遺言無効により法定相続分2分の1ではなく、遺留分割合4分の1での和解の申し出があったため、控訴されることなく和解となりました。その後、相手方に遺留分相当額を支払ったことに伴い、相続税の見直しを求める更正の請求も当事務所(税理士法人羽賀・たちばな)で行いました。

弁護士からのコメント

公正証書遺言だからと油断は禁物

公正証書遺言に従ってお母様名義の財産を名義変更しながら、平行して相手方との交渉を進めていきました。公正証書遺言の無効はよほどのことがない限り難しいため最初はダメ元で請求していると思いましたが、相手方が訴訟に踏み切り、裁判中も強気の態度を崩しませんでした。お母様は介護認定も受けておらず、ご兄弟への愛情の種類とその差について語られていたことが看護記録に残っていたこと、遺言書作成に関与された司法書士の先生に証言のご協力をいただけたことから、遺言作成能力は十分かつお母様の意思通りの内容だったことを反証できて良かったです。

信頼性の高い公正証書遺言ですが、稀にこういったケースもありますので、相続人同士でトラブルになる前に専門家にご相談されることをおすすめします。

まとめ

今回のケースは訴訟から相続税の申告、更正の請求までを当事務所で担当しました。相続税は相続発生から10ヶ月以内に申告しなければなりません。しかし、相続トラブルによって未分割の財産があった場合には、当初の相続税の申告後に取得する金額に変動が生じるため、相続税の更正の請求や修正申告を行う必要があります。相続税の計算は複数の財産や土地の評価額などで複雑な場合が多いですが、相続トラブルがあるとさらに複雑になります。当事務所の代表弁護士は税理士資格も有していますので、相続トラブルから相続税申告までワンストップで速やかに行うことができます。

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