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遺産分割

相続でモメている兄弟たちが葬儀の際の立替え金を返してくれません。

相談者
年代:40歳代

ご相談の経緯

遺産分割に保険金がからんで兄弟姉妹が不和に

Eさんの姉にはまとまった資産がありましたが、子供がなかったため、兄弟姉妹3人が相続することになりました。姉は生命保険をかけていて、保険金の受取り人に兄弟の中で最も親しかったEさんを指定していました。これを知った兄弟は取り分が不平等であると不満を募らせ、Eさんが姉の財産を使い込んだというあらぬ疑いさえかけるようになり、関係がこじれてしまいました。

要求されるまま葬儀費用を立替え払い

兄弟は、Eさんには保険金が入るのだからと、葬儀や遺品整理などの費用を立替え払いするように要求してきました。Eさんにやましいところはありませんでしたが、自分が保険金を受取ることで兄弟間がこじれるのを避けたいという気持ちから、言われるままに2人の兄弟に100万円ずつ、合計200万円を渡しました。
葬儀が終わっても兄弟に立替え金を精算しようとする気配はなく、不安になったEさんは、遺産の分割協議の交渉、相続税の申告と併せてご相談に来られました。

ご相談のポイント

遺産の分割協議と払過ぎた立替え金の回収

葬儀に関する一連の後片付けが終われば、各自が費用を精算し、残金を返してもらえると考えていたEさんでしたが、その思惑ははずれました。このままでいくと立替え金は全額が兄弟の自由になってしまう可能性があります。未分割の預貯金の分割協議と立替え金として支払った200万円を何とかして回収したいというのがEさんの意向でした。
また、受取ることになっている保険金は相続遺産として申告すべきなのかどうかについても相談を受けました。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

財産調査を実施後、現地の税理士と提携

まずは、財産の全体像を正確に把握する必要がありました。亡くなられた方の居住地は遠方であったため、現地周辺の金融機関に洗いざらい照会して、預貯金の正確な金額を一つひとつ確認していきました。その結果、相続財産の総額は1億円近くあったため、法定相続通りに相続すると3人全員に相続税の申告が必要でした。

申告業務は現地の税理士に委託

相続税申告に関して、Eさん以外の兄弟は同じ税理士に依頼していました。ここで、当事務所がEさんの税申告を受任すると、他の相続人の申告内容を知ることができなくなり、相続財産の食い違いが生じて、遺産分割協議が難航し、税務調査の格好の対象になることが予想されました。当事務所は、家庭裁判所や地方裁判所での訴訟手続きに要る手間・暇と訴訟手続等で解明できる財産の価額などを勘案して、訴訟で解明できる試算はそれほど多くはないと予想できたため、Eさんも同じ税理士に相続税の申告を依頼することを勧め、財産調査の結果を税理士に提供して情報の共有を図りつつ、相続税の申告書や添付書類の交付を受けることにしました。
申告内容を見直し、相続財産の隠匿や使い込みがごまかしがないことを確認した後、遺産分割協議を開いて、兄弟3人が法定相続通りに分けるということで相続については決着しました。
生命保険金は受取人がEさんであるものについて、当事務所で請求の手続きをし、受取人になっていたEさんに支払われました。

精算をしぶる2兄弟と交渉

残された問題は、Eさんが姉の死亡直後に他の兄弟に100万円ずつ渡した葬儀関連費用の精算でした。
2人は少しでも返済額を減らそうとして、さまざまな理由をつけて費やした金額の必要性をあげてきました。亡くなった直後の葬儀費用はやむを得ないとしても、四十九日の法要をはじめ今後に予定されている法要にかかる費用、さらに、姉の住居の死後の清掃費用までもが必要経費として計上され、金額は高額に達していました。
そこで、相手側の言い分を聞いた上で、必要な経費とそうでないものを振り分け、必要な経費以外の残金は返却してもらうよう弁護士が交渉。最初はしぶっていた兄弟もようやく聞き入れてもらいました。

弁護士からのコメント

保険金の勝手な分配は税法違反

死亡保険金も相続財産に含まれると考えている人がいるようですが、受取人が指定されている保険金は相続財産ではなく、受取人の固有の財産です(相続税の課税対象にはなります)。
姉が指定した受取人がEさんになっていた以上、保険金は全額、Eさんが受取るのが当然であり、他の兄弟に負い目を感じる必要はありません。受取った保険金はEさんの固有財産になり、遺産分割の対象にはなりません。もしも、Eさんが兄弟に保険金を分配するようなことがあれば、贈与する金額によっては贈与税の課税対象になり、受取った側が税金を支払わなければならなくなることを知っておきましょう。
なお、保険金が「特別受益」として相続割合に影響を及ぼす裁判例もありますが、例外的な事例です。

立替金の精算は難航するもの

被相続人が亡くなった際、相続人の誰かが諸費用を立替え払いする、又は相続人全員から一定額を集めて費用に充てることはよくあることですが、兄弟からの要請があったとはいえ、200万円もの立替え金を渡してしまったのは早計でした。費用分担や、どこまでを必要経費と認めるかなどの取決めをしておかなかったことも問題でした。誰しもいったん得たお金を手放したくないものであり、時間が経つほど回収はむずかしくなります。
立て替え損にならないためにも事前に相続人どうしで十分に話合ったほうがいいでしょう。

まとめ

兄弟間の相続トラブルは、こじれて長引くことが多いようです。その点、弁護士が介入すれば公正な解決策が得られるだけでなく、話合いも冷静に進み、後々まで不仲になるのも防げます。私たちはどんな相続問題にも対応させていただきます。モメる前に、まずご相談ください。

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