遺産分割調停への誤解?!

2016.3.30

1 遺産分割調停への幻想?!

 相続人間で、遺産分割協議がうまくいかないと、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
調停の申立前に、依頼者からよく受ける質問というか幻想に直面することがあります。

2 家庭裁判所が真実を解明してくれる?

 家庭裁判所に調停を申し立てさえすれば、又は審判手続きに移行さえすれば、家庭裁判所が職権で、遺産の有無・内容を解明してくれる、はたまた使途不明金について支払うように命じてくれる(なお、使途不明金の返還請求は家事事件ではなく簡易裁判所又は地方裁判所の管轄となります)と言うものがあります。
しかし、日本の裁判所は、当事者の主張を吟味する役割で、言い換えると能動的に動くことを予定していません。そのため、調停前から遺産内容を調べられる範囲で調べなければなりませんし、前述の使途不明金などについては別途民事裁判を提起するなどの方法をとり、寄与分を主張するのであればその旨の申立と証拠提出をしなければなりません(寄与分の立証のハードルは高いですが)。
「ほかに遺産があるはずである」と言う主張では残念な結果になります。

3 遺産が普通預金だけだが、調停を受け付けてくれる?

 最高裁の判例が出て変わるかもしれませんが、現時点では普通預金は相続と同時に相続分どおりに分割されます。そのため、遺産が普通預金だけだとして、遺産分割調停を申し立てると、分割すべき遺産がないとして遺産分割調停の申立てを受理してくれない可能性があります。そのため、動産など当然に分割されない遺産についても調停申立書に記載する必要があります。

4 遺産の鑑定を家裁の負担してくれる?

 これもよく受ける質問ですが、遺産の価額に争いがあるなどして不動産鑑定を申し立てる場合、鑑定費用相当額を予納しなければなりません。家庭裁判所が負担してくれることはありません。
不動産の価額によりますが、100~200万円程度の負担となり、リスクをとって鑑定を申立てか否かの悩ましい判断に迫られます。

このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

相続手続き・遺産相続執行 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。