兄弟(姉妹)が勝手に相続していた!どうすればいい?

2023.10.12

1.兄弟姉妹が勝手に相続していた場合の対応方法

遺産分割は相続人全員の同意が必要ですが、相続人同士が疎遠になっていたり、遠方に住んでいたり、仲が悪かったりすると、連絡もせずに一部の相続人だけで無断で相続手続きを進めてしまうことがあります。

なかでも多い例としては、親と同居していたり近くに住んでいる兄弟姉妹がその立場を良いことに、親が亡くなったときに黙って処分を進めてしまうケースです。

「他の兄弟姉妹は親の老後の世話を全然しなかったから」
「分けるほどの財産はなかったから」
「連絡するのが面倒だったから」
「バレないと思ったから」など、理由はそれぞれですが、両親の死後、兄弟姉妹間による相続遺産をめぐる争いは相続問題の中でもよく見られます。

この記事では、特定の兄弟姉妹が勝手に親の遺産を相続(処分)していた場合、どうすれば自分の相続分を適切に取り戻すことができるのか、対処法や流れについて解説します。

1-1.特定の兄弟姉妹のみが相続人となる条件とは?

兄弟姉妹の1人が不動産や現金、預金などの相続財産全部を独占し、勝手に財産を処分したり、遺言や遺産の内容を公開してくれない場合に他の相続人はどのように対応するべきでしょうか。

まず、そもそも遺産分割において、長男だけというように特定の人物が遺産を独り占めすることはできるのでしょうか。

実は特定の相続人だけが遺産を相続できるケースはあります。

しかし、適切な手続きを経ていなければ勝手な遺産の処分や相続は無効となる可能性があります。

ここでは、そのように特定の兄弟姉妹だけが相続人となり相続財産を独占できる条件について解説します。

1-1-1.遺言で指定されている場合

生前に親が遺言書を作成しており、遺言書の内容が「長男にすべての財産を相続させる」というものであった場合には、遺留分を除いて長男が全ての財産を相続することができます。

遺留分は、被相続人の兄弟姉妹を除いた相続人が持つ、法律において最低限確保されている相続分のことです。

そのため、他の相続人は最低限保証される遺産取得分である「遺留分」が取得できる権利がありますので、遺留分侵害額請求権を行使することで取り戻すことができます。

よって、不平等であると感じた他の兄弟姉妹から遺留分を主張された場合には、長男が全財産を相続することはできません。

例として長男を挙げましたが、法定相続人以外の赤の他人にも財産を贈与することはできます。

法定相続人以外の第三者に遺産をのこしたい場合、相続ではなく遺言書による贈与(遺贈)になります。

遺言書は故人の最後の意思としてなによりも尊重されるべきものとして、法定相続分や遺産分割協議よりも優先されます。

ただし、遺言書が有効であることが前提であり、遺言書の形式や書き方に不備があった場合には無効になります。

また、「(第三者)に全ての財産を遺贈する」といった遺言も、他相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額請求を受けることがあります。

1-1-2.遺産分割協議で法定相続人全員が同意した場合

遺産分割協議は相続人全員が参加しなければ無効となります。

遺産分割協議では法定相続分に限らず、話し合いで分割方法は自由に決めることができます。

そのため、相続人全員が参加し、特定の兄弟姉妹1人が相続することに全員が同意した場合には、遺産を独り占めすることができます。

ただし、誰か1人でも納得できない人がいれば、協議は決裂したことになり、遺産を独占することはできません。

無効な遺産分割協議がおこなわれた場合、再度遺産分割協議をおこなうか、家庭裁判所の遺産分割調停の申立てを検討することになります。

また、納得していない人がいるにも関わらず、遺産分割協議が強行されそうな場合には、納得していない人は署名押印を拒絶しなければなりません。

また、遺言書で贈与を受けた受遺者(相続人以外の受遺者)がいる場合、相続人と受遺者の間で遺産分割協議が必要になることがあります。

たとえば、「Aに遺産の2分の1を遺贈する」といった、遺産の割合のみ指定し、遺贈の対象となる財産を特定しないでする遺贈のケースでは、相続人と遺産分割協議書をおこないます。

他方、「Aに全財産を相続させる」場合の遺贈は、その全てが受贈者に権利が移転するため遺産分割協議は不要です。

ただし、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性はあります。

1-1-3.他の法定相続人全員が相続放棄した場合

1人を除いて他の相続人全員が相続放棄した場合には、唯一残った相続人が全ての相続財産を受け取ることになります。

相続放棄は他の相続人は関係なく、その相続人個人の自由意志で選択することができます。

また、本来相続人である方が被相続人よりも先に亡くなっている場合や、その他の理由により相続権を失った場合に、その子に相続権が移る「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」の原因にもならないので、相続放棄したからといって次の代に相続権が発生するようなことはありません(日本の民法とは異なり、韓国の民法では相続放棄した場合も代襲相続となります)。

その相続人は最初から相続人ではなかったとみなされるので、放棄された相続分は残った相続人で分割することになります。

当然、1人あたりの相続分は増えます。

相続手続きを簡素にすることを目的に、複数いる相続人を1人に絞るために他の相続人が相続放棄するケースもあります。

なお、他の相続人全員が相続放棄をして、知らないうちにあなた1人だけが相続人となるような状況は、プラスの財産よりもマイナスの財産(借金)が上回っている可能性が高いので、相続放棄が可能な期限内に被相続人の財産状況を確認するようにしましょう。

1-1-4.他の法定相続人全員が相続分の譲渡をした場合

相続人が自分の法定相続分を他人に譲り渡すことを「相続分の譲渡」といいます。
譲る相手は他の相続人でもそれ以外の第三者でもかまいません。

1人の相続人に対して、全員が相続分の譲渡をおこなった場合には譲渡を受けた相続人のみが相続します。

相続放棄との違いは、相続放棄は放棄した人の相続分は残りの相続人で分割することになるのに対して、相続分の譲渡は相続分を譲る相手を自由に選べるということにあります。

ただし、注意点として、譲り渡した相続人(譲渡者)は相続分の譲渡後も、マイナスの財産に対する支払い義務は残ります。
なお相続放棄は、相続人としての地位を放棄しプラスの資産やマイナスの財産である負債を引き継がなくなります(相続関係からの離脱)。

相続分の譲渡自体には特別な手続きは不要で、法律的には「口頭での合意」でも契約は成立します。他の相続人の了承を得る必要もありません。

ただ、「相続分譲渡証書」を書面で作成しておくのが一般的です。相続分譲渡証書を家庭裁判所に提出することを予定している場合には、さらに付記するべき事項がありますので、弁護士に相談したうえで作成したほうが良いでしょう。

相続分譲渡証書

甲 〇〇県〇〇市〇〇1丁目1番地1
譲渡人  〇〇 〇〇

乙 〇〇市〇〇区〇〇町1番1号
譲受人  〇〇 〇〇

甲は乙に対し、本日、被相続人亡〇〇 〇〇(本籍:〇〇市〇〇区〇〇町2番地2、最後の住所:〇〇市〇〇区〇〇町2番3号。生年月日:昭和〇〇年〇〇月〇〇日、死亡年月日:令和〇〇年〇〇月〇〇日)の相続に関する相続分を譲渡し、乙はこれを譲り受けた。
2022年   月    日

             

乙 代理人 弁護士 橘髙和芳

 

さきほど説明した相続放棄のケースと同様に、他の相続人全員が兄弟姉妹の1人に相続分の譲渡をおこなった場合には、譲渡を受けた相続人が遺産を独占できることになります。

1-1-5.他の相続人が廃除・欠格事由に該当する場合

相続人の資格を失うケースとして「相続欠格」と「相続廃除」があります。

「相続欠格」は、推定相続人(相続人になる予定の人)が特定の行為をおこなうことで相続人としての資格を失うものです。

たとえば、自分に相続が回ってくるように被相続人や自分よりも優先順位の高い相続人を殺害する、被相続人をだましたり脅して遺言書を書かせるなどの行為が相続欠格の理由に該当します。

民法第891条(相続人の欠格事由)
1.次に掲げる者は、相続人となることができない。故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
2.被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
3.詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
4.詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
5.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

「相続廃除」は、被相続人の意思にもとづいて、特定の推定相続人の相続権を剥奪することができる制度です。

被相続人に対して、生前、虐待や重大な侮辱、著しい非行などがあった場合は、相続欠格により相続人から除外することができます。

民法第892条(推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

 

このように相続欠格や相続廃除に推定相続人が複数該当する場合には、相続人は絞られていきます。

ただし、相続欠格や相続廃除に該当する相続人がいても、その相続人に子や孫がいる場合には、代襲相続によりその子や孫が相続人となりますので、相続欠格や相続廃除に該当する相続人に子や孫がいない場合に相続人の数が絞られることになる点に注意が必要です。

他の兄弟姉妹が相続欠格や相続廃除により相続人としての資格を失っていき、結果的に1人が残った場合、遺産を独占できることになります。

なお、相続欠格や相続廃除に該当する人には「遺留分」も認められません。
そのため、相続権を主張することはできません(前述のとおり、代襲相続により相続人が出現する可能性はあります)。

 

2.勝手に相続手続を進めることで起きるトラブル事例

特定条件がそろえば1人の相続人が全財産を独占できることがあるということを説明しました。
ただ、遺言書が残されていない場合、1人だけで相続するためには遺産分割協議による相続人全員の同意が前提条件となります。

したがって、特定の相続人が遺言などに基づいて勝手に相続手続きを進めてしまった、今まさに進めようとしている場合、他の相続人との間でトラブルに発展することがあります。

勝手な遺産処分や同意なく相続手続を進められてしまった場合には、相続分を取り戻すために自ら解決に向けて行動を起こす必要があります。

ここでは、具体的なトラブル事例を挙げながら、他の相続人が取るべき解決方法について解説します。

2-1.遺留分侵害になる場合

遺言書が「長男(特定の相続人)に全財産を相続させる」という旨の内容だった場合、長男が遺言書に従って他の兄弟姉妹に黙って勝手に相続手続きを進めることがあります。

この場合、他の相続人は、法律で最低限保証されている相続分である「遺留分」を受け取る正当な権利があるため、遺留分侵害額請求をおこなうことができます。

遺留分が認められている相続人と遺留分割合については以下の通りです。

■ 相続人が配偶者のみ
  1/2(=1/2×法定相続分)

■ 相続人が配偶者と子
  > 配偶者の遺留分は1/4(=1/2×法定相続分1/2)
  > 子の遺留分は1/2×法定相続分。
  > 配偶者の遺留分は2/6(=1/2×法定相続分2/3)
  > 父母の遺留分は1/2×法定相続分

■ 相続人が配偶者と兄弟

  > 配偶者のみ1/2
  > 相続人が子、養子(直系卑属) 1/2×法定相続分
  > 父母(直系尊属) 1/3×法定相続分
  > 兄弟姉妹 遺留分侵害額請求権なし

 

たとえば、被相続人である父親のAさん、妻(母親)は既に他界していて、子どもは長男、次男、長女の3人という構成の家族がいるとします。

長男が遺言書にもとづいて全財産を相続するとなった場合、次男と長女の遺留分は下記の計算方法で求められます。

2分の1(子どもの遺留分)×1/3(法定相続割合)=6分の1

次男と長女は、長男に対して全財産の6分の1の遺留分をそれぞれ求める「遺留分侵害額請求」をおこなうことができます。

穏便に解決できるようであれば話し合い、当事者同士で解決できない場合には家庭裁判所で遺留分調停、調停でも解決できなければ地方裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起することになります。

なお、遺留分侵害額請求の権利には期限があり、相続開始と遺留分侵害の事実を知ってから1年が経過すると請求できなくなりますので速やかに手続きを進める必要があります。

また、知らなくても相続開始から10年経過すると「除斥期間」によって請求できなくなります。

2-2.遺産分割協議が無効になる場合

遺言書がない場合の遺産分割は基本的に相続人同士で話し合って決めることになります。
繰り返しになりますが、遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければ法律上無効です。

遺産分割協議書には、相続人全員の合意を示すため署名と実印による押印をするのが一般的です。

ただ、実印の保管場所を知られている場合には、知らない間に勝手に印鑑登録証明書の交付、署名や捺印がされていて遺産分割協議書を作成されているというケースもあります。

金融機関は、形式的に印影や添付書類を確認するだけであり、相続手続きが進んでしまうことがあります。(なお、勝手に遺産分割協議書を作成することは、私文書偽造(刑法159条など)に該当し、偽造した協議書を銀行に提出して預金の払い戻しを受けることは詐欺(刑法246条)に該当する犯罪行為です。)

相続手続きが進められていた場合には、その遺産分割協議が無効であることについて遺産分割協議無効確認訴訟を裁判所に提起することになります。

2-3.遺産の使い込みにあたる場合

被相続人の生前、死後、いつ使い込まれたによって対応が異なります。

たとえば、親と同居していた長女が親名義の通帳を使って勝手に出金して私物の購入に充てたり、親の生命保険を勝手に解約していた、親が所有している賃貸不動産の賃料を横領する、親の証券口座で勝手に株式取引をしていたなど、親が亡くなる前に本人に同意なく財産を使い込んでいた場合は、不当利得返還請求(不当に利益を得た分を返還してもらう請求)や不法行為にもとづく損害賠償請求として地方裁判所で訴訟を提起することになります。

被相続人の死亡後に、凍結されていない預貯金を払い戻す、不動産の名義変更(相続登記)をするなど、遺産の使い込みも同様に、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求として地方裁判所で訴訟を提起します。

なお、不法行為にもとづく損害賠償請求権の時効は使い込みが発覚した時点から3年、不当利得返還請求権の時効は相続開始時から5年以内または使い込みがあってから10年です。

なお、被相続人の生前に同意を得て財産を使っていた場合には、正当理由があるため問題となりません。

ただ、① 婚姻のための贈与、②養子縁組のための贈与、③生計の資本としての贈与のために財産を使っていた場合は「特別受益」にあたります。

相続開始時の財産に、特別受益相当を加えた加算してから、各相続人の相続分を計算します。

特別受益という考え方は、相続時の相続人間の公平性をたもつためのものです。

そのため、生前に財産が使われる行為があった場合、①被相続人の同意があったか(特別受益を考慮した遺産分割を求める)、②被相続人の同意がなかった場合には不当利得返還請求や損害賠償請求をおこなうことになります。

2-4.遺言書が無効である場合

「長男に全財産を相続させる」という内容の遺言書はあるものの、遺言作成時に被相続人が重度の認知症などにより判断能力がなかった場合には遺言書は無効となります。

また、公正証書遺言の場合、法律のプロである公証人が作成するため可能性は高くありませんが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は書き方や書式に不備があり、無効となるケースも少なくありません。

弁護士が依頼を受けて遺言書無効の争いをする場合、当時の被相続人の入通院先の医療機関や介護施設に問い合わせ、カルテを取り寄せて認知能力に関する記述がないかを確認することがあります。

認知症が認められるなど意思能力に問題があったことを発見した場合には、遺言書無効を主張できるかどうか(裁判所に無効を認めてもらうことができるか)を含めて検討します。

また、詐欺や脅迫によって遺言書を作成させられていた場合には、相続欠格に当たる可能性もあるので、遺言書作成当時の背景をよく調査します。

遺言書について、そういった疑問がある場合には、一度弁護士に相談されると良いでしょう。

2-5.遺産内容を開示しない場合

兄弟姉妹が相続財産を取り込んでしまい、他の相続人に遺産の内容を公開してくれないということもあります。

遺産を強制的に開示させる手段や手続きはなく、他の相続人ができることは地道に財産調査をおこなうしかありません。

最終的に遺留分を主張するにしても、相続財産がどれだけあるか把握していないと、侵害された相続額を特定することができないので、まずは財産調査をおこなうことが大切です。

 

3.勝手に相続手続きを進められていたときの具体的な対応策

勝手に相続手続きを進められていた場合、他の相続人には相続財産の内容を知らされていないことがほとんどです。

まずは相続財産がどれだけあるのか調査し、その内容を把握することでその後の取るべき対策が変わります。

調査してみるとほとんど遺産がなかったということになると、裁判を起こしたとしても費用倒れなど徒労に終わることになるからです。

相手方である兄弟姉妹が開示した財産目録がある場合でも、勝手に相続手続きをおこなっていた場合には他に財産を隠している可能性もあるため、改めてご自身で財産調査をおこなうことをおすすめします。

3-1.相続財産調査の進め方の手順

相続財産調査の進め方は、財産の種類によって異なります。

被相続人が持っている可能性のあるものを地道にひとつずつ確認していく地道かつ大変な作業になります。

ご自身で調べる場合には、各機関などに問い合わせる際に被相続人との関係を証明できる書類が必要となりますので、スムーズに手続きができるよう次の書類を準備しておきましょう。

【財産調査に必要な一般的な資料】
・被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)、除籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・相続人の戸籍謄本
・相続人らの印鑑証明
・相続人の身分証明書(免許証、健康保険証、マイナンバーカード、年金手帳、パスポート、住民票など)

主な財産の調査方法は次の通りです。

3-1-1.預貯金

被相続人の預貯金口座が判明している場合には、その銀行に対して照会をおこないます。

預貯金があるかどうかわからない場合は、被相続人の過去住所を含めた居住先周辺の金融機関をしらみつぶしに調べていきます。
ゆうちょ銀行など金融機関に対して、口座開設や預金残高の有無の照会をおこないます。

また、最近はネットバンクを利用していることも多いので、忘れずに確認しましょう。

各銀行によって、照会方法や必要書類はそれぞれ異なります。予約のうえ窓口で照会手続きをしなければならない金融機関もありますので、平日に仕事で時間が取れない方にとっては非常に手間のかかる作業となります。

被相続人名義の銀行口座が見つかった場合には、解約から数年分の取引履歴の交付を受け、不審な預金の引き出しや移動がないか調べます。

金額の移動があった場合には、移動先の金融機関に対しても被相続人名義の預金口座がないか照会して、同様の作業を繰り返していくことになります。

3-1-2.株式

上場株式の保有の有無に関しては、ほふり(証券保管振替機構)に対して照会をかけます。郵送で登録済み加入者情報の開示請求をおこなうことができます。
郵便局の代金引換郵便にて手数料を支払い、回答書を受け取ることができます。

3-1-3.不動産

土地などの不動産については、毎年4月頃に固定資産税の納税通知書(課税明細書)が届きます。
被相続人の自宅(実家)に届いている場合には、通知書の内容を確認し、市町村役場に対して名寄帳(固定資産税課税台帳記載事項証明書)を取り寄せて、所有不動産を確認します。

被相続人の自宅に、遺産を独占している兄弟姉妹が住んでいる場合には納税通知書の受領を確認することができないと思います。

その場合は、自宅が所有不動産である場合には、まず調査対象の不動産がある市区町村で名寄帳を取得しましょう。

被相続人が名義人の不動産が判明したら、法務局で該当不動産についての不動産の登記簿記謄本(登記事項証明書)を取得します。

知らない間に、所有不動産が被相続人から兄弟姉妹に名義変更(相続登記)がおこなわれていた場合には、登記申請書の内容を閲覧するなどして、当時の状況を紐解いていくことになります。遺産分割協議に合意した記憶がなく、そうした事実もない場合には、あなたが知らない間に遺言書が作成されていたり、遺産分割協議書が偽造されている可能性があります。

なお、法律で定められた相続分どおりの割合で不動産を相続する場合、相続人のひとりが単独で共同相続人全員を共有名義とする相続登記をおこなうことができます。

3-2.当事者同士での話し合い

財産調査を行い、特定の兄弟姉妹による勝手な相続手続きが進められていると明確になった場合には、まずは相続人間で話し合いによる解決を模索します。

話し合いに応じてくれるようであれば、手続きを取り消したり、使い込んだ分を返してもらったり、改めて遺産分割協議をおこないます。

しかし、勝手に手続きを進めた兄弟姉妹が話し合いに応じることは少ないのが現状で、兄弟姉妹がなお話し合いに応じてくれない、遺産内容を頑として開示しないなど、冷静に話し合える状況ではない場合には、弁護士に依頼してプレッシャーをかけるか、実際に裁判手続きの利用による解決などを検討することになります。

3-3.裁判手続きの利用

相続人同士の話し合いがむずかしい場合には、裁判所に対して状況に応じた手続きをおこないます。

裁判は権利を主張する側に立証責任(証明責任)があるため、財産を取り込んだ相手が悪いとしても、訴えた側が十二分な証拠を用意する必要があります。

裁判所が「相手方が怪しい、黒かもしれない」というしんしょうをいだいても、その程度の心証では、権利を主張する側が敗訴してしまいます。

裁判所に「確かに使い込んだのは被告である主張が確かだ」と確信を抱いてもらって認めてもらうには証拠収集が重要なポイントとなります。

相続トラブルの裁判手続きは、兄弟姉妹をはじめ親族間の揉めごとということもあり、長年の関係性なども絡んで感情的な対立が激しく、お互いに落とし所が見つからず、解決にいたるまで数年を要するケースも少なくありません。

そのため、兄弟姉妹による勝手な相続手続きや財産の使い込みが疑われるような場合には、まずは落ち着いて、無料相談などを利用して弁護士からの法的視点を踏まえた冷静な意見を聞いてみることをおすすめします。

裁判手続きには専門的な法律知識が含まれるため、有利に進めるには争族に強い弁護士に依頼するのが良いでしょう。

 

4.弁護士に依頼するメリット

相続トラブルに弁護士を活用することは、弁護士費用がかかるというデメリット以上に大きなメリットがあります。

1.交渉を任せられる(精神的負担の軽減)
2.被相続人の財産調査、裁判手続きの代行(手続き負担の軽減)
3.適切な解決にいたる可能性が高い

血の繋がりが濃いほど意見の食い違いなど、些細なことがきっかけでも感情の対立は激しくなります。

お金のことならなおさらです。そのため、当事者同士で直接話し合うことは精神を大きく消耗することになりがちです。
弁護士が代理人となって間に入ることで直接対峙を避けられるので、相手の言動に悩まされることが少なくなり、安心して日々の生活に専念することができます。

相続人として権利を主張する場合には、財産調査や相続人調査、遺言書無効のための被相続人の認知能力の調査などが必要になります。

弁護士であれば、それらの必要書類の取り寄せについても強力な権限を持っているので、その多くを代行することが可能で、それらを自分でおこなう時間や手間が大幅に省略することができます。

また、調査結果にもとづいて、法律の専門家として誤りのない法的な判断をおこない、依頼者の方にとってリスクの少ない適切な解決のための提案をおこなうこともできます。

たちばな総合法律事務所では、相続財産トラブルにおける解決実績があります。

また、当事務所では約100年の歴史をもつ税理士法人を併設しているため、法律、税務の両方の視点から相続紛争問題を解決に向けて導くことができることが強みです。

電話による簡易法律相談(10分)も無料でおこなっているほか、個別の事情や状況をふまえた初回無料相談もおこなっています。

遺産相続トラブルに関する不安や心配ごとをお持ちの方は、ぜひ専門知識をもつ当事務所まで、お気軽にご相談ください。わかりやすくサポートいたします。

【次のようなお悩み、お気軽にお問い合せください】
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 ☑ 特定の相続人が生前贈与を受けており、不公平な相続に不満
 相続財産の名義変更・解約手続が負担
このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

遺産相続 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。