このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
遺言では、遺留分についてどの相続財産から減殺するべきか指定することができます。民法1034条但書きは、遺言者が遺言に別段の意表示をしたときはその意思に従うと規定してからです。
1034条があるからかわかりませんが、遺言で、相続財産の全部または大部分を承継した者に価額賠償するようにと書いている遺言がたまにあります。
しかし、価額弁償申出の権利は、1041条で「受遺者」と規定し、「遺言者」と規定しているわけではないので、また、上記1034条の後に価額賠償権の規定があるので条文の配置上1034条は価額賠償権を想定していないことなどから、遺言で価額賠償するべきと書いても意味がない条項となります(東京地裁平成18年6月21日判決)。
遺言を残す場合には、価額賠償まで定められませんので、やはり遺留分に配慮した条項を置くか否かの検討や付言事項を置いてなぜ差をつけたかの説明を置くというのが遺言の王道と言えます。
また、どのような遺言を残すかは、遺言者の自由ですので、遺留分に配慮しない、相続人間で差をつけるのは仕方がないという最終意思の表明をするのも自由です。