中小企業の会社支配をめぐる紛争(その1)

2022.9.7

第1 はじめに

会社支配権に関する紛争は、会社法、税法、民法など様々な法律が関わり、非常に複雑です。
また、紛争の背景として、特に相続が絡む場合には、長年の感情の濁り、澱み、愛情の理由なき格差への長年の鬱積(親が子供に平等に愛を注いでいる例は少ないかもしれません)などがあり、ご家族により千差万別です。

紛争の背景には、複雑な経緯と感情の地層があり、法律では解決することができない領域が多く含まれていますが、最後は裁判所で判決や和解などにより「解決」したと自身の感情に折り合いをつけなければなりませんので、法律的な取り得る手段や裁判という出口がどうなるかを常に見え据えることが非常に重要となります

そのため、まず、基本となる会社法について、上場企業以外の中小企業に関わる会社法を中心に解説しますが、会社法は、資本の論理、言い換えると過半数ルールを重視しており、情念や歴史は切り捨てられ、「過半数を握った者が正義」という取扱いに事実上なっていることを常に頭の片隅に置いてください。

 

第2 会社の基本的考え方 ~過半数ルール~

1 株主とは、他の株主と会社を共有している存在である

株主は、他の株主と会社を共同で所有している存在で、株式は、会社の共同所有権といえます。

例えば、9999株を発行しているX株式会社の株式のうち、1株を保有している場合にはX社の9999分の1の割合の権利等を持っていることを意味し、5000株を保有している場合にはX社の9999分の5000の割合の権利等を持っていることを意味します。

 

2 1株の差で天国と地獄 ~不動産の共有とは全く違う~

もっとも、全株主が一致しないと、何もできないというのでは、いちいち株主総会を開いて株主全員の意見が一致するまで議論を尽くさなければ、ボールペン1本も買えないことになってしまい、会社として商売が全くできないことになってしまいます。

そのため、会社法では、厳格な過半数ルール原則を採用していますが(ここが、不動産の共有とは大きな違いとなっています。)、この過半数ルールが多数派と少数派の処遇・境遇が大きく異なってしまう根本原因となります。

例えば、先ほどの9999株を発行しているX社株式の場合を例にすると、5000株を持っているA氏と4999株を持っているB氏とでは、持ち株数の差はたったの1株、持ち株割合の差はたったの0.01%にすぎませんが、その違いは、埋め難いほど大きな差異を生みます。

A氏は、X社の運営に直接あたり、自身の考えを会社経営に反映(会社の実印や銀行口座などの資産の管理・処分)させることができますが、B氏は、意見を述べることはできても、その意見を採用するかはA氏次第という非常に弱い存在にとどまり、会社経営でA氏に逆らうことができないという大きな差異が生じます。

cf:X社(発行済み株式1万株)についてA氏とB氏 とが同じ株式数5000株ずつを保有している場合には、A氏とB氏の意見の一致が無いと、商売ができず会社としての意味がなくなるリスクはありますが(デッドロック状態)、デッドロック解消ために解散請求裁判により会社の残余財産(会社債権者返済した後に残る純資産)の分配にありつける可能性はあります。50%ずつに分かれたため解散を認めたものとして、東京地裁立川支部H29.12.26金融商事判例1566.51、東京高裁H12.2.23金融商事判例1091.40

 

不動産を直接共有している場合には、上記の株式とは大きく異なります。不動産について5000/9999の権利を有するA氏と4999/9999の権利を有するB氏とでは、収益や経費についてその持分割合に応じて、分配・分担することになり、A氏のみが収益を独占するということはありません。

会社の場合には、多数派が配当をするかしないか、役員報酬の総額の設定や配分を自由にすることができるため(過大役員報酬は損金算入されないという意味での制約はあります)、A氏やその家族が高額な役員報酬を得ることができる一方で、B氏は、役員になれず、配当にもありつけないという事態は非常によく目にします。

このように、過半数の株式を持つのか、不動産の共有持ち分を持つのかは、結論に大きな違いが生じてしまいます。
会社法の世界は、資本の論理、過半数原理を常に頭に置いておかなければなりません。

(次ページに続く)

3 過半数を確保できなかったらどうなるか?~少数株主が直面する理不尽の数々~

事業承継・相続 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。