相続税~債務控除の計算上の注意点~

2016.8.30

1 相続税の債務控除の計算上の注意点

 相続税は、簡単に言うと、プラスの財産からマイナスの財産を引いて算出します。
しかし、マイナスの財産である債務については、各相続人が負担に属する部分の金額のみを減算できるという点に注意が必要です。例えば、相続人AとBが遺産分割協議をして相続人Aが7000万円の不動産と住宅ローン8000万円、相続人Bが金融資産7000万円を相続する内容の遺産分割協議が成立した場合、債務控除の対象となるのは、相続人Aの相続するプラスの財産7000万円の限度で住宅ローンを債務として減算できるにとどまり、残り1000万円の住宅ローンを相続人Bの相続財産から減算できるわけではありません。

2 債務の分割協議には、債権者の同意が必要

 なお、1項で住宅ローンを相続人Aが引き継ぐと設例に記載しましたが、債務について相続人間で誰が承継するか協議が成立したとしても、それは免責的債務引き受けのため、債権者である住宅ローン会社の同意を得なければ、相続人Bは住宅ローン会社に対して法定相続分1/2である4000万円の住宅ローンを負担したままとなります。

3 保証債務・連帯債務を債務控除できる場合

 また、保証債務や連帯債務は、債務ではありますが、相続税法上は現存・確実なものしか減算できないとしています。そのため、保証債務や連帯債務は、主たる債務者や負担割合が大きい債務者が支払っている場合には、履行義務が現実化していないため、保証債務や連帯債務を相続財産から減算することはできません。
ただ、主たる債務者などが弁済不能の状態で保証債務を履行する必要があり、主たる債務者等に求償しても回収が見込めない状態であったときは、現存・確実な債務として減算できます。そのため、保証債務が債務控除の対象となるのは、かなり差し迫った状態といえます。

4 お困りの場合には

 遺産分割協議をどう進めたらよいか分からない、債務の負担をどうしたらよいかわからないなどでお困りであれば、たちばな総合法律事務所へご相談ください(初回30分無料)。 ご相談のご予約は、https://law-tachibana.sakura.ne.jp/law-tachibana.jp/contact/ 又は06-6467-8775にお電話いただいてご予約いただき、お気軽にご相談ください。

このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

事業承継・相続 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。