このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
相続人がいて、その相続人にペットの世話を託することができる場合には、あまり問題となりませんが、相続人がペットの面倒を見てくれそうにない場合、「おひとりさま」で法定相続人がいない場合には、自分の死後にペットの世話をだれに託すか、その費用の管理をどうするかが問題となります。
民法では、ペットは「動産」扱いであり(民法86条2項)、遺言や信託契約がない場合には、誰が引き取るのかで揉め、引き取る代わりに余分に相続財産が欲しいということで揉めます。最悪の場合には、保健所送り(つまり殺処分)とする例もあります。
遺言で、例えば全財産をAに相続させ、Aは相続財産の範囲でペットの世話をしなければならないとすることは可能です(負担付遺贈となります)。
しかし、遺言では、Aがペットの世話を本当にし続けるのかを監督し続けることは難しく、Aがペットの世話をしないから遺言が無効・取消の対象とななりません。そのため、遺言は、ペットの世話をしてくれる人が信頼できる人でないと適さない方法といえます。
信託契約では、監督人を置くなどできますし、金銭を管理する人を受託者、ペットの世話をする人を受益者とするなど条項を工夫することで、柔軟に対処することができます。
ただし、どこまでの面倒を見てもらうか、具体的には老齢の場合には手術をするのかしないのか、病院代が信託財産に満たないと見込まれる場合どうするかなどについて、かなり厳密に条項化する必要がありますし、受託者や監督人の費用の問題もあります。そのため、信託財産が少額の場合には、治療も保存療法の範囲にとどめる旨を記載するなどの決断を要する点には注意が必要です。