遺産相続の独り占めを徹底解説!法律の基礎から対処法まで

2025.11.5

遺産相続の独り占めを徹底解説!法律の基礎から対処法まで

「特定の相続人に遺産を独り占めされているかもしれない」という不安を抱えていませんか?

結論として、相続財産を特定の誰か一人が独断で全て取得することは、原則として許されません。

もし独り占めを試みる不正な行為(使い込み、財産隠しなど)が疑われる場合でも、法律に基づいた調査と請求によって、正当な取り分を確保できます。

本記事は、独り占めを疑った際の具体的な調査手順から、遺留分侵害額請求や不当利得返還請求といった法的対処方法まで網羅的に解説します。

冷静かつ公平な解決を望む方は、ぜひご活用ください。

1. 遺産を独り占めすることは可能?押さえておきたい法的ルール

相続財産は民法で厳密にルールが定められており、原則として、複数の相続人がいる場合、各相続人の同意なしに一人で全てを取得することはできません。

しかし実務では、被相続人の口座を管理していた人が勝手に預金を引き出すなど、独り占め行為が問題になるケースが多くあります。

具体的には、以下のようなパターンで独り占めが発生します。

遺産の独り占めが発生するケース

  • 遺産の使い込み

    被相続人の生前から死後にかけて、特定の相続人が預貯金を勝手に引き出し、自分のために使うケース。

  • 遺産の隠匿(財産隠し)

    預貯金口座や不動産、有価証券などの一部(あるいは全部)を意図的に開示せず、ないものとして振る舞うケース。

  • 遺言による独り占め

    「全財産を特定の相続人に相続させる」といった、極端に偏った内容の遺言書が残されるケース。

  • 生前贈与による独り占め

    被相続人の生前に、特定の相続人だけが多額の遺贈・贈与を受け、結果的に残された遺産がほとんどないケース。

  • 遺産分割協議での独り占め

    他の相続人を無視したり、虚偽の説明をしたりして、自分に有利な内容の協議書に署名・押印させてしまうケース。悪質な場合は、協議書の偽造が行われることもあります。

1-1. 法定相続分・遺留分とは何か

相続における公平性の基本となる、2つの重要な「取り分」について解説します。

1-1-1.「取り分」その①:法定相続分とは?

法定相続分とは、民法が定める相続人の「取り分の目安」を指します(民法第900条)。相続人(法定相続人)は民法で順位が定められています。

配偶者は常に相続人となります。
具体的な割合の例は以下の通りです。

法定相続人 法定相続分
配偶者と子(第1順位) 配偶 1/2
子 1/2
(子が複数人いる場合は1/2をその人数で均等に分けます)
配偶者と父母(第2順位) 配偶者 2/3
父母 1/3
配偶者と兄弟姉妹(第3順位) 配偶者 3/4
兄弟姉妹 1/4

遺産分割協議で相続人全員が合意すれば、法定相続分の割合以外で分割することも可能です。
法定相続分はあくまで目安となります。

1-1-2.「取り分」その②:遺留分とは?

遺留分は、配偶者、子(代襲相続人含む)、直系尊属に最低限保障されている遺産の割合です(民法第1042条)。

たとえば、「全財産を長男に相続させる」という遺言書があった場合でも、遺留分を侵害されている他の相続人は、財産を多く受け取った長男に対して、侵害された分に相当する金額の支払いを「遺留分侵害額請求」として要求できます(民法第1046条)。

これにより、遺言による極端な独り占めを防止します。

1-2. 遺言書の有無による相続手続きの違い

遺言書が残されているかどうかで、その後の相続手続きは大きく変わります。

遺言書がある場合

遺言書が法的に有効に作成されていた場合、原則としてその分割内容が優先されます。

ただし、「遺留分」を侵害している場合には、他の相続人は遺留分侵害額請求をおこなうことが可能です。

遺言書には、公正証書遺言(公証役場)、自筆証書遺言(本人が手書き)などの種類があります。

特に、自筆証書遺言は、形式不備(日付・押印欠落など)や内容の曖昧さ、作成当時の遺言者の判断能力などについて争いになることがあります。

遺言書の有効性を争うために、遺言無効確認訴訟を起こすこともあります。

遺言書の無効を争えるかどうかについて、次のコラムでくわしく解説しています。

遺言書がない場合

遺言書がない、あるいは法的に無効の場合、法定相続人全員の「遺産分割協議」(話し合い)で分割内容を決定します。

この段階で、特定の相続人が財産隠し、遺産の使い込み、不当な要求をしたりして独り占めしようとすると、協議が難航しがちです。

相続人同士の話し合いで問題が解決しない場合は、速やかに家庭裁判所の「遺産分割調停」や弁護士への相談を検討しましょう。

 

2. 遺産の独り占めが起こりやすいケース

被相続人と同居していたり、生前より財産管理に関わっていたりした相続人が、独り占めを試みるケースが見られます。

特に被相続人と近い関係だった相続人は、日常的に財産管理や介護をおこなっているケースが多く、そのまま主導的に相続手続きをおこなおうとする場合があります。

また、同居していた相続人からすれば、遺産や口座を管理していることが多く、通帳・残高などを把握しやすいため、他の相続人から独り占めや不正な資産移動を疑われやすい立場にあります。

多額の生前贈与や遺贈があったケース

被相続人が生前に特定の相続人(事業承継者など)へ自宅購入資金や学費など多額の贈与をしている場合、これは実質的な遺産の先渡しであり、「独り占め」している状態ともいえます。

公平な相続をおこなうためには、生前贈与などを「特別受益」として相続財産に持ち戻して、それぞれの相続分を計算することが考えられます。

相続人の一人が相続手続きを主導し、情報を開示しないケース

特定の相続人が「手続きは全て自分がやる」と宣言し、財産目録などの情報を開示せず、実印と印鑑証明書だけを要求するケースです。

求められるまま実印を押すと、不公平な遺産分割協議書に同意したことになりかねません。

 

2-1. 長男・長女が同居していた場合のトラブル

古くからの習慣で、長男・長女が被相続人である親と同居するケースは多く見られます。

入院費や葬儀の手配など、同居していた子が中心的に動くため、後から他の兄弟姉妹に未報告の支出や収入(不動産所得など)が判明するトラブルが発生しがちです。

同居中の口座管理や預金引き出しが不透明だと、他の兄弟姉妹は「使い込み」の疑いを抱きやすくなります。

特に、相続手続きを主導する長男・長女が財産目録や入出金記録をきちんと説明しないと、他の相続人から独り占めの疑いが強まります。

トラブル防止のためには、同居者は相続開始を待たずに、生前のうちから定期的に家族へ経済状況や支出内容を共有し、財産扱いを可視化して皆が納得する形を作ることが重要です。

2-2. 被相続人の介護・世話をしていた相続人による使い込み

長期間介護を担当してきた相続人からすれば、「財産は多くもらえて当たり前(報われるべき)」との意識が強くなりがちです。

一方、他の相続人としては、特に認知症などで被相続人である親の判断能力が低下している場合、「知らないうちに資産が動いているのではないか」と不安を抱き、管理内容に疑問をいだくことがあります。

被相続人が不自由な状態だと、介護をおこなう推定相続人(相続人となる予定の方)による必要な費用(医療費など)の資金を日常的に引き出す機会も増えます。

介護や世話をしている親族の方は、使い込みの疑いを受けた際に説明責任を果たせるように、実際に使った金額と目的を証明できるよう記録(領収書、取引明細書)を残しておくことが大切です。

また、家計を同じくする場合には、ご自身の生活費と必要経費を明確に区別し説明できるように家計簿などをつけておくと良いでしょう。

 

3. 遺産独り占めを疑った場合にまず確認すべきポイント

同居する親族が遺産の開示をせず、遺産の使い込みが疑われるような場合には財産調査をおこなうのも一つの方法です。

怪しい動き(大幅な金銭引き出し、物品処分など)が見られる場合は、直ちに証拠を確保し、他の相続人と情報を共有しましょう。

その上で、法的手段や弁護士への相談を検討します。

3-1. 財産隠し・使い込みの証拠集めと調査方法

独り占めを疑う際には、客観的な証拠を集めることが最も重要です。

預貯金の調査

通帳や契約書といった書類を集め、口座の入出金履歴をチェックするのが基本です。

通帳が手元になくても、相続人であれば金融機関の窓口で、被相続人名義の口座の「残高証明書」や「取引明細書(取引履歴)」の開示を請求できます。

チェックポイント

  • 被相続人の死亡直前・直後の高額な出金
  • 被相続人の判断能力が低下した時期(例:入院後、認知症発症後)からの不自然な連続出金
  • 使途不明な送金(特定の相続人の口座への送金など)

 

ネットバンキングも含め、どの時点でどの程度の資金移動があったかを時系列で確認することで、不自然な出金や振り替えがなかったかがわかります。

不動産の調査

法務局で「登記事項証明書」を取得し、名義人や売却・贈与の形跡、抵当権設定など不審な動きを調べます。

市区町村役場では「名寄帳」を取得すれば、被相続人所有の不動産一覧を確認できます。

上場株式

上場株式については、証券保管振替機構に照会することで有価証券の保有の有無、証券会社や信託銀行などを確認できます。

生命保険

生命保険は生命保険協会に郵送やインターネットで照会をおこなうことができます。

なお、生命保険の死亡保険金は、基本的に受取人の固有財産となるため、原則として相続財産の対象外です。

ただし、保険契約の内容、死亡保険金の金額などの事情によっては「特別受益」として扱われ、遺産分割の際に持ち戻し計算の対象となる可能性があるため、調査をおこなうようにします。

参照リンク

一般社団法人 生命保険協会
「生命保険契約照会制度のご案内」(リンク)

 

3-2. 銀行口座の凍結と取引履歴の確認

銀行は相続発生を知ると、被相続人名義の預金口座は「凍結」され、入出金ができなくなります(一部の相続人による勝手な引き出しを防ぐため)。

銀行に自動的に死亡情報が知らされることはありません。

そのため、特定の相続人による引き出しが続く可能性がある場合、他の相続人が窓口で死亡事実を伝え、口座凍結を依頼する必要があります(必要書類:死亡診断書、戸籍謄本など)。

口座凍結後、相続人は預金を含む「取引履歴」を銀行に開示請求できます(会計帳簿の保存期間である10年)。

使い込みが疑われる不自然な出金(高額・短期間に集中など)があるかを確認します。

なお、銀行口座が凍結している場合でも、遺産分割前でも一定額を引き出すことができます(「預貯金の仮払い制度」(民法第909条の2「預貯金債権の行使の特例」(通称:預貯金の仮払い制度):2019年民法改正)。

この金額は遺産分割時に先行取得分として扱われます。

 

4. 独り占め対策として活用できる法的手段

相続財産の調査から、相続財産の使い込みなどの独り占めが確定した、または話し合いでの解決が困難な場合、正当な相続分を確保するために、すみやかな対応が必要です。

4-1. 遺留分侵害額請求の進め方

遺言書や生前贈与によって特定の相続人に多くの財産が分割されていた結果、ご自身の遺留分が侵害された場合、「遺留分侵害額請求」をおこなうことで、最低限の取り分に相当する金銭を確保することが可能です。

 

請求の手順

請求するには、まず、(1)遺産の総額(生前贈与も一部含む)を確定し、(2)ご自身の遺留分がいくらになるか、(3)実際に侵害されている金額はいくらか、を正確に計算する必要があります。

計算の基礎となる遺産の総額には、原則として相続開始前10年以内に行われた相続人に対する特別な生前贈与(特別受益)も含めて算定するため、生前贈与についても正確に把握する必要があります。

【最重要】請求には「時効(期限)」があります

遺留分侵害額請求権は、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」、または「相続開始の時から10年」で消滅します(民法第1048条)。

具体的な進め方

まずは内容証明郵便など、証拠が残る形で相手方(財産を多く受け取った相続人)に請求の意思表示(「遺留分侵害額請求権を行使します」)をおこないます。

この意思表示を1年以内に行えば、時効は中断(完成猶予)されます。

相手方が支払いに応じない場合は、家庭裁判所に調停を申立て、不成立であれば訴訟手続きに移行します。

4-2. 遺産の使い込みが発覚したときの返還請求

独り占め目的で特定の相続人が預貯金を勝手に引き出し着服(使い込み)した場合、「不当利得返還請求」または「不法行為に基づく損害賠償請求」が可能です。

発覚後、まずはそれが遺産であることを示す証拠(取引明細書など)を整理し、相手方に返還を求めます。

たとえば「被相続人の意思に基づかない出金であったこと」を立証するため、医療記録等を取寄せ、認知症の発症により常時判断能力が無かったことなどと合わせて主張することで、不正支出を主張して交渉を進めることがあります。

【重要】「時効(期限)」

使い込みの返還請求権にも時効があります。

時効のポイント

不当利得返還請求(民法第166条

  • 権利を行使できることを知った時(使い込みの事実を知った時)から5年
  • 権利を行使できる時(使い込みが発生した時)から10年

不法行為に基づく損害賠償請求(民法第724条

  • 損害及び加害者を知った時(使い込みの事実と犯人を知った時)から3年
  • 不法行為の時から20年

 

どちらの請求権を行使するかは事例によりますが、一般的に「知ってから5年」または「行為から10年」が目安となります。

返還請求に相手が応じなかった場合には、遺産分割調停や、民事訴訟を通して返還を求める手段があります。

提訴まで至ると時間と費用がかかりますが、不正を明確に証明できれば、強制的に支払いや資産の差し押さえ手続きへと発展させることも可能です。

4-3. 特別受益・寄与分による調整とその手続き

遺産分割協議や調停・審判において、相続人間の不公平を是正するための制度が「特別受益」と「寄与分」です。

特別受益とは?

相続財産を分割するにあたり、被相続人から生前に特別な贈与(遺贈、住宅資金、学費など)を受けていた相続人がいる場合、その贈与額を「遺産の先渡し(特別受益)」とみなし、相続財産に加算して(持ち戻して)分割割合を決定する制度です(民法第903条)。

例えば、長男だけが生前に1,000万円の住宅資金援助を受けていた場合、その1,000万円を相続財産に足し戻した金額を基準に各相続人の取り分を計算し直して、長男は自分の取り分から1,000万円を控除(差し引き)されます。

寄与分とは?

また、被相続人の介護や事業承継の手伝いなどで、被相続人の財産の維持または増加に特別な貢献をしたと認められる相続人がいる場合は、「寄与分」としてその働きを評価し、法定相続分に上乗せして財産を取得できる制度です(民法第904条の2)。

調整の難しさ

これらの制度は、形式的な法定相続分では実現できない「実質的な公平」を保ちながら財産を分割することを目指します。

ただし、何が「特別」な受益にあたるのか、介護の「寄与」をいくらと評価するかは、相続人間の話し合いや訴訟で最も争いになりやすい部分です。

具体的にどれを特別受益とみなすかや、寄与分としてどの程度考慮されるかはケースバイケースで異なるため、法的専門家と相談しながら調整するのが賢明です。

 

4-4. 遺産分割協議書の偽造や不動産の無断売却への対処法

使い込みや、悪質な独り占めの手口として、書類の偽造や財産の無断処分があります。

遺産分割協議書を偽造された場合

実印盗用や署名偽造により協議書が偽造され、預金解約や不動産名義変更が行われた場合、その協議は無効です。

対処法は、「遺産分割協議無効確認訴訟」を提起し、協議書を法的に無効と確定させることです。

無効が確定すれば、登記や名義変更も無効化し、財産を取り戻せます。これは刑事事件(有印私文書偽造罪など)にも該当します。

不動産を勝手に売却された場合

遺産分割協議成立前に、相続人の一人が被相続人名義の不動産を第三者に無断売却するケースです。

2019年民法改正後、特定の相続人が自己の法定相続分を超えて権利を処分した場合、他の相続人は自己の相続分を第三者に対抗(主張)できます(民法第899条の2第1項)。

ただし、登記が第三者に移った場合、財産を取り戻すことは極めて困難になります。

不当な売却利益は、その相続人に対して不当利得返還請求をおこないます。

悪質なケースでは、個人対応は困難なため、直ちに弁護士に相談してください。

 

5. 話し合いに応じない相続人への具体的対処法

話し合いがまとまらない、または相手が応じない場合は、家庭裁判所の調停・審判への移行を検討します。

5-1. 家庭裁判所での遺産分割調停・審判の流れ

調停

遺産分割協議が不調の場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申立てます。

裁判官と調停委員が中立的に仲介し、円満な合意を目指す手続きです。

調停委員を介するため、相手と直接顔を合わせずにすみます。

感情的な衝突を避けながら、話し合いを進めることができます。

ただし、使い込み=使途不明金の場合は、本来遺産分割の対象ではありません。

したがって、全ての相続人が当該使途不明金を遺産分割の対象することに合意した場合、例外的に遺産分割の対象として調停手続き中で審理されます。

審判

調停が不調(不成立)の場合、手続きは自動的に「審判」に移行します。

裁判官が、提出された証拠に基づき、民法の規定(法定相続分、特別受益、寄与分など)に従って最も公平な分割方法を決定します。

審判の結果には判決と同じ法的拘束力があります。

そのため、審判にもとづいて強制執行(不動産登記、預金差し押さえなど)が可能です。

ただし、上記のとおり使途不明金は本来遺産分割の対象ではありませんので、審判で審理されることはありません。

ただし、全ての相続人が当該使途不明金を遺産分割の対象とすることに合意していた場合には、例外的に審判において判断されることになります。

5-2. 弁護士に相談・依頼するメリットとタイミング

独り占め問題に直面した際、弁護士への相談・依頼は非常に有効な解決方法です。

弁護士に依頼するメリット

法的な正当性の確保

相手の独り占め行為が法的にどの問題にあたるかを正確に判断し、適切な法的手段を提案してくれます。

証拠収集のサポート

医療記録や取引明細書の取寄せから分析まで、法的に有効な証拠を集める作業を代行・サポートを受けることができます。面倒な事務手続きの負担を大幅に減らすことができます。

交渉・法的手続きの代理

依頼者の代理人として、相手方との交渉や、家庭裁判所での調停・審判手続きの全てを任せることができます。

感情的な対立の回避

弁護士が間に入ることで、親族間のやりとりをまかせることができます。感情的な争いを避けられるため、精神的な負担を軽減できます。

弁護士に依頼するタイミング

以下のような場合は早めに相談することをおすすめします。

財産目録の開示に応じない、または話し合いを無視する時


遺産の使い込みや財産隠しの明確な証拠が見つかった時


遺産分割協議書の偽造など、悪質な行為が疑われる時


相続人同士の争いが感情的になり、当事者での解決が困難であると感じた時

 

多くの法律事務所では、相続問題の初回無料相談をおこなっています。

これらを利用して、一度問題点を整理しておくのも良いでしょう。

6. 遺産独り占めを防ぐために生前からできる対策(遺産を残す側の対策)

被相続人が元気なうちに生前対策をおこなうことで、将来の独り占めや家族間の争いを未然に防ぐことができます。

遺言書の作成や家族信託、生命保険活用など様々な生前対策があるため、元気なうちに専門家(弁護士、税理士など)に相談し、備えておくことが最大のトラブル予防策となります。

6-1. 遺言書の適切な作成・保管でトラブルを防ぐ

独り占めを防ぐため、被相続人(親など)ができる最も有効な対策が、法的に有効な遺言書を作成することです。

代表的な遺言書の作成方法は次のものがあります。

自筆証書遺言

本人が手書きで全文を作成し、日付と署名、押印が必要です(民法第968条)。
※ 法改正により財産目録はPC作成可能となっています。


公正証書遺言

証人2人の立ち会いのもと、公証役場で公証人の前で作成します(民法第969条)。
これにより、法的に有効な遺言書が作成できます。

 

適法に作成された遺言書は、相続が始まったときに、財産分割の方針を示すものとなります。

特に公正証書遺言は、公証人が内容の法的な有効性や本人の意思能力を確認するため、後に「偽造だ」「無効だ」といった争いになりにくい最も確実な方法です。

一方で、保管がずさんだと、紛失や改ざんの疑いを持たれるリスクが高くなります。
そのため、公正証書遺言(原本は公証役場に保管)の利用や、自筆証書遺言を法務局で保管する制度(自筆証書遺言保管制度)の利用を検討しましょう。

ただし、遺言書の内容が極端に一部の相続人に有利すぎる内容は、遺留分を侵害する可能性があります。

生前に弁護士などの専門家のチェックを受けておけば、後から侵害額請求などのトラブルが起きにくくなるでしょう。

6-2. 相続情報を家族で共有してトラブルを未然に回避する

被相続人の生前から、財産の全容や相続方針を家族間で共有しておくと、のちに相続が発生した際に「誰が何をどこまで管理しているか」が明確になります。

これにより、独り占めの疑惑が生まれにくくなり、透明性の高い相続手続きを実現できます。

具体的には、財産が多岐にわたる場合はエンディングノートや一覧表を作成し、出入りや名義を一括で管理できるようにしておくと便利です。

特に、認知症などで判断能力が低下する前に、財産管理の方法(例:特定の子どもが管理役になる、あるいは家族信託や成年後見制度を利用する)を話し合っておくことも大切です。

こうした準備に手間をかけることで、実際に相続が始まったときの混乱や感情的対立を大幅に減らせます。

早めにコミュニケーションをとっておくことが、後々の平穏な手続きにつながるでしょう。

7.まとめ

独り占めの相続トラブルについて解説してきました。

相続は感情が先行し深刻な対立になりがちです。
生前、相続発生後ともに様々な問題があります。

まずは、相続トラブルの専門家である弁護士に相談し、今後の対応についてアドバイスを受けると良いでしょう。

たちばな総合法律事務所では、相続トラブル解決のためのサポートをおこなっています。

遺産相続の問題でお悩み方は、たちばな総合法律事務所にご依頼ください。

弁護士・税理士が最後までしっかりとサポートさせて頂きます。

まずは、初回無料法律相談では、具体的な解決方法をアドバイスいたします。

また、来所が難しい方には「電話(10分)」もおこなっています(電話相談の場合、一般的な観点からのアドバイスとなります)。

ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談ください。

このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

遺産相続 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。