このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
国税通則法は、税法に共通する用語の定義、申告の種類、徴収関係、加算税、税金の時効、不服申立ての方法などについて定められています。権利義務関係という実体法と不服申立や徴収という手続法を合体させた法律です(不正確ですが、民法と民事訴訟法と民事執行法をミックスさせたような法律で、刑事手続の規定はありません)。
国税犯則取締法は、脱税について刑事事件として立件するための証拠収集などに関して規定した法律です。刑事訴訟法の「捜査」の章に近いといえます。
いまだにカタカナ表記されている珍しい法律です。
そして、国税通則法と国税犯則取締法を統一法典にする(国税通則法に犯罪捜査に係る規定を盛り込む)動きがあるようで、まだどうなるかは決まっていないようです。
弁護士の目から見ると、民事手続きと刑事手続きを同一法典にするのは、奇異に映ります。
刑事と民事では、証拠の収集や証拠評価の考え方が大きく違い、民事は証拠自由の原則から証拠採用が柔軟ですが、刑事では違法収集証拠排除法則の適用があり、また証拠評価も民事より厳格と言われています(さらに言うと、推計課税について、刑事手続きでは資産負債増減法で脱税所得金額を推認しますが、増額更正処分では同業者比準法などなどが用いられるなど、手法に若干の違いがあったりします)。
訴訟手続の訓練を受けていない税務職員が、民事・刑事の証拠収集や証拠評価を使い分けられるのかやや疑問で、調査官がいつでも令状による差押できるんのだとか、査察官(マルサ)に託すことになるとか言って強制調査の可能性をにおわせつつ、「任意に」資料等を提出させようしないかに警戒する必要があります。
そのため、調査に立ち会う際には、刑事手続か民事手続か厳格に確認していく必要がでてくるのかなと思います。