このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
相談者から、「税務調査での調査官の発言又は行動がおかしい、だから課税処分は無効だ」と相談されることがあります。
お気持ちはよくわかるのですが、税務調査の中に違法な部分があっても、ただちに課税処分が違法とはならず、違法な調査で受けた精神的苦痛などについて国家賠償請求ができるにとどまります。これは、あるべき税額という実体面と手続面とは別次元の問題とされるからです。
もっとも、国家賠償請求訴訟は、立証責任が請求者である納税者側ですので、それはそれで大変な手続ではあります。
ただ、裁判例の中には、傍論ながら、税務調査手続が刑罰法規や公序良俗に反し、税務調査せずに処分したに等しい場合には調査の違法が処分の効力に影響するとの判断を示したものありますので、調査手続がかなりひどい場合には課税処分に影響する場合もありえます。
どこまでひどければ課税処分が無効になるかですが、課税処分は刑事手続ではないので直接の適用はできないものの、刑事手続における違法収集証拠の排除法則や毒樹の果実論も念頭に置きながら、課税処分まで影響する調査手続きの違法があるかを検討する必要があると思われます。