このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
DES(Debt Equity Swap)とは、会社の貸付金(資産)を現物出資して株式(資本)の発行を受ける手法です。一般的には、このままでは貸付金のめどがつかない債権者が、経営参加して経営を改善して、株式を売却することで投下資金を回収するために使われる手法です。
非上場の会社では、創業者が会社に運転資金を長年融通などし続けた結果、会社への貸付金が膨らんでいることがあります。創業者としては、返済してもらうつもりはない(又は返済が期待できない)債権ですが、相続税では額面通り評価されてしまい、会社から返済を受けられないのに相続税を支払うという事態になることもあります。
そのため、DESにより債権を株式にすることも、対策候補として挙がります。
ただ、DESを実行すると、資本金が増加するので、①資本金が1億円超になると、中小企業用の各種軽減措置が受けられなくなるほか、事業税が外形標準課税となること、②法人住民税の均等割りが増加するデメリット(注意点)があります。
さらに、③そもそもDES自体が当局に否認されないかへの配慮も必要です(行為計算否認リスク)。DESは、一般的には債権者が経営参加するための手法ですので、相続税対策のみが目的だったというのではなく、例えば意思決定を迅速にするために持ち株割合を増やすためとか、資本の部を厚くして対外的な信用を少しでも高める必要があるとかなどの経営上の目的が必要といえます。