このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
節税策の一つに、賃貸マンションを贈与するというものがあります。これは、2つのメリットがあると言われています。
1つ目のメリットは、贈与後の賃料は受贈者である子の所得となるので、親の所得の上昇が抑えられ、子が生活費に充てたり納税資金を貯めたりできるというものです。
2つ目のメリットは、現金で贈与するよりも、不動産の方が財産評価通達で割安に評価されるという点です(土地の急速な値下がりなど価額変動に対処するため土地については市場価格の80%程度になることが多く、建物についても減価償却などから割安になることが多いです)。
しかし、賃貸マンションの贈与については、負担付贈与通達というものがありますので、注意が必要です。
負担付贈与通達は、バブルのころに定められたもので、当時は財産評価通達と市場価格とのかい離が大きかったうえに、高額な敷金債務付の状態で贈与すると、税金が安く抑えられることへの対処として定められたものです。
賃貸マンションの場合には敷金(退去時に返済しなければならない預り金債務)が大抵ありますので、贈与契約書には敷金債務相当額の現金も贈与することを明記する必要があります。
そうでないと、負担付贈与通達より、割安な財産評価通達基準ではなく市場価格基準で評価することになり、1項の2つ目のメリットが喪失してしまい、思わぬ贈与税負担が発生するからです。
そのため、賃貸マンションを贈与する場合には、敷金債務の額やその他の新所有者に引き継がれる債務について、しっかりと賃貸借契約書を読み込んで、金額を確認して、贈与契約書に盛り込む必要があります。