生前贈与(特別受益)~民法と相続税法の差異の利用~

2016.11.21

1 生前贈与の相続財産への加算~相続税法の場合~

 相続税法では、生前贈与で相続財産に加算されるものは、相続開始前3年以内の生前贈与としています。これは、相続税逃れを防止するという目的と古すぎる金銭移動を贈与か貸金か別の契約によるものか、税務署側からの立証が難しいというて点からだと思われます。
①贈与時期について3年と限定している一方、②贈与を受けた人が相続人か否か、③贈与の性質・金額については特に制限をしていません。

2 生前贈与の相続財産への加算~民法の遺産分割の場合~

 他方、民法では、相続財産に加算されるのは、『特別』受益として、遺贈・婚資など生計の資本(つまり、まとまった金額)で相続人が受けた贈与と規定しています。これは、民法が相続人間の不平等を是正することを目的としているためと言えます。
相続税法と比較すると、①贈与時期に限定はない一方で、②贈与を受けた人が相続人であることを要し(この点は遺留分における贈与の取扱いと微妙な差異があります)、③贈与の性質・金額についても限定していると言えます。
民法と相続税法では、目的が違うので、生前贈与について差異を設けているのは仕方ないことです。

3 両制度の差異の利用

 ただ、この差異を利用すると、例えば、生前に(3年以上前に)財産の大部分を特定の相続人に贈与しておき(相続時精算課税の利用などにより節税するものとします)、当該相続人が相続放棄をすると、相続人ではないので特別受益の問題は生じないことになります。
このように、両制度の差異を利用すると、相続紛争を回避しつつ、特定の相続人に資産を承継することも可能となります。

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このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

事業承継・相続 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。