相続開始時点での賃貸マンションの空家は「減額」無し?!

2016.6.3

1 賃貸されている建物の評価(借家権)

財産評価基本通達では、他人に賃貸している建物については、所有者自身が使用できないことから(使用しようとするには借地借家法のハードルを越えて解約又は解除しなくてはいけません)、建物の固定資産評価額の70%として評価します(なお、貸家建付地など土地の評価額にも影響します)。

2 相続開始時点で空き家になっていると?!

あくまで自分で使用できる可能性がないから減額するという趣旨ですので、相続開始時点(被相続人の死亡時点)で、空き家となっている場合には原則通り建物の固定資産評価額100%で評価されることになってしまいます。
したがって、いくら賃貸専用で建築したマンションやアパートであっても、空室部分については借家減額は認められません。

3 「緩和」通達はあるけれど…

 もっとも、学生マンションで、死亡したのたまたま3月で空室だらけだったという事例では、他の納税者との均衡を保てないこともあって、①各独立部分が相続開始前に継続的に賃貸されていること、②前賃借人の退去後に、募集広告を行うほか、空室を他の用途に使用していないこと(自己の用に供していないこと)、③空室期間が1か月「程度」であること、④相続開始後の賃貸が一時的ではないことなどから「一時 的空室ではない」と評価できる場合には、借家減額が認められます。
ただ、①から④の全てを充たす例は、それほど多くはない印象です。そのため、管理会社を設立して、管理会社に賃貸し、その管理会社がエンドユーザーに転貸するということで対処する方法が考えられます。

4 よく問題となる要素

 ご相談としては、税務署の相続税調査において、③の1か月「程度」についての見解の相違(1か月「以下」でないと認めないvs2か月未満なら1か月「程度」ではないのか、さらには①~④は「一時的空室ではない」を推認するための間接事実にすぎず他の要素(間接事実)で補えないかが問題となります。
これは、事実認定・証拠評価・証拠収集の領域ですので、建設時期、立地、相続開始時期前後の満室・空室の長短、リフォームの有無など様々な要素を衡量する必要があります。なお、裁決例についても、緩和通達をゆるく解釈したもの(納税者有利なもの)がありますが、例外的な裁決のようです。

5 お困りの場合には

 たまたま空室だった建物の評価で争いがある、税務署の相続税調査にどう対応したらよいかわからない、相続税の申告や相続手続をどう進めたらよいか分からないなどでお困りであれば、たちばな総合法律事務所へご相談ください(初回30分無料)。 ご相談のご予約は、http://law-tachibana.sakura.ne.jp/law-tachibana.jp/contact/ 又は06-6467-8775にお電話いただいてご予約いただき、お気軽にご相談ください。

このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

事業承継・相続 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。