遺言、信託契約を残すべき場合(お墓がある場合)⑧
1 お墓、仏壇をめぐる争い
お墓や仏壇を巡る争いは、色々な類型に分けることができます。例えば、相続人間では、①お墓や仏壇は、誰が面倒を見るのか、②面倒を見ることによる対価はもらえるのかという問題があります。また、③遺骨を巡って所有権が争われた裁判例もあります。また、寺院との関係では、④永代使用契約の地位の承継や解約(改装。お墓の引っ越しの方がわかりやすいかもしれません)の際の「承諾料」も問題となる例があります。
2 お墓、仏壇と相続財産は別扱い
上記のうち、①と②ですが、民法上、お墓や仏壇などは祭祀財産とされ(民法897条)、相続財産とは別のカテゴリーとされています。そのため、祭祀財産を承継して祭祀主宰者になり、費用が余分にかかるから相続財産を多く欲しいという要望は、民法どおりの均分相続を主張する他の相続人が納得しない限り難しいのが現状です。
3 遺言書作成による対処
地方によっては、お祭りをすることに毎年かなりの費用が発生する場合があります。そのため、遺言により、祭祀を主宰する者に多めに財産を分けるなど配慮しておかないと、相続人間でいらぬもめ事が起きてしまう可能性が高いといえます。
したがって、遺言を作成して、祭祀主宰者を誰にするか、祭祀に係る費用に見合う相続財産を分配する、付言事項でその点を明記するなどの思いやりが必要となります。
4 おまけ~純金製の仏像やお鈴などは相続対策として疑問符~
祭祀財産で有れば、相続税の対象外となると誤解される方が多いです。これは、相続税法12条1項2号が墓所や祭具は相続税の対象としないと規定しているためと思われます。
⑴ 非課税となる祭具は、投資対象とならないもの
しかし、①上記の規定は、あくまで世間一般の常識の範囲での「祭具」であり、日常礼拝する仏像は純金製であるべきとの世間一般のコンセンサスが形成されているならばともかく、純金製の仏像やお鈴は、世間一般の人が想定する祭具とは言えず、非課税扱いとならないと思われます(なお、相続税基本通達12-2も投資の対象となるものは非課税とならない旨を定めています)。
⑵ 純粋な投資と考えると、加工代はどうカバーする?
また、②節税対策一般にいえることですが、節税策が認められないリスクを考慮して相続税の節税効果を除外して、必要な費用や得られる便益が見合うものなのか、費用対効果があるかについて検討する必要があります。
純金製の仏像やお鈴は、加工代がかかります。加工代分をカバーするだけ金の価格が値上がりすると考えるのであればする意味があるかもしれません。
もっとも、値上がりを見込んでいるのであれば、インゴットで保有しておいた方がより値上がり益を確保できますので、少なくとも、相続税が発生する被相続人の立場に弊職が立ったと仮定した場合、弊職は採用しない節税策かなと思います。
事業承継・相続 に関する解決事例
- 2019.7.15
- バツイチ社長の相続問題
- 2017.6.26
- 自筆証書遺言の検認の流れと注意点
- 2017.5.17
- 遺留分減殺請求の10年の除斥期間と例外
- 2017.5.16
- 遺言で遺留分は価額賠償によると指定できるか?
- 2017.4.25
- 法定相続情報証明制度~財産調査の時間短縮につながる可能性~