このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
遺言がないばかりに、分割で子供たちが揉める例としては、遺産の大半を非上場の株式を占める場合があります。
業績が思わしくなく株価が安い場合には問題ないのですが、業績が好調ですと、株価が高く算定されることになります。
しかし、会社の後継者は、事業承継をすると、会社の保証債務も株式とともに引き継ぐことになるばかりか、流動性がなく株式を評価額どおり購入してくれる人は滅多にいず、また手元に現金がない場合が多いです(運転資金に充てざるを得ないことが往々にしてあります)。
そのため、会社を後継した相続人は、手元のキャッシュに乏しく(というより、会社の運転資金に回したい)無い袖は振れないのに対し、他の相続人は法定相続分通り分けてほしいということになりがちとなります。
この場合は、遺言や信託契約だけでは十分な対処ができず、生前から、贈与、相続時精算課税制度による贈与などにより株式を贈与していく必要があるほか、生命保険などを活用して、後継者やそれ以外の相続人に対する資金の手当てをしていくことになります。
また、遺留分の生前放棄制度が活用できるかについても検討が必要です。
いずれにしても、長期的な視点が必要で、「時間を味方につける」必要があります。