このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
外回りの営業マンなど労働時間の管理が難しい職種について、会社からスマホを貸与して、そのスマホに位置情報アプリを入れることがあります。
これは、スマホが会社所有であり会社の管理権が及んでいることからすると、位置情報アプリを入れて労務管理をすることが直ちに違法になるわけではありません。
もちろん、就業規則に位置情報アプリにより労務管理することがあることや位置情報アプリにより勤務時間中に業務に従事してなかったこと(映画館で映画を見るなど)が判明した場合に懲戒処分の対象になることを明記するほうが、裁判などで必要性が肯定されやすいといえます。
しかし、会社による労務管理は、当然ながら、勤務時間中にしかできないものです。そのため、位置情報アプリを利用して従業員の勤務時間外の動静を使用すること、特に深夜、早朝、休日に従業員の動静を探ることは、原則としてプライバシーの侵害として違法であり、よほどの必要性がないと、適法と認められることはないと思われます(具体的事例は想定しがたいですが、当該従業員の携帯電話がつながらないためやむを得ず位置情報を把握して館内放送などの手段を講じて連絡をつけなければならない緊急事態であれば、必要性が認められて適法となるかもしれません)。
したがって、就業規則には、あくまで勤務時間内の労務管理に使用すること明記するとともに、運用に当たっても注意する必要があります。