このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
銀行口座への毎ナンバーのひも付けは、まだ先の話ですが、紐づけられるようになると、国税などが容易に預金内容を把握することができるようになります。
そうなることへの備えなのか、対抗策なのかわかりませんが、タンス預金、つまり銀行口座から出金して現金で保管したいが、問題点はないですかという相談があります。
タンス預金、つまり現金で所持することには、いろいろなリスクがありますので、それをどう評価するかということになります。現金には、①盗難リスク、②忘失・消失リスク、③インフレリスクがあります。
①盗難リスクは、文字通り、盗難にあってしまう危険性です。持ち運びができない何百キログラムもある重い金庫に入れておけばよいのかもしれませんが、費用対効果としては疑問があります。
②忘失・消失リスクは、タンス預金したもののどこに保管したか忘れてしまう危険性や火災などで焼失してしまう危険性です。火災保険などで対応するとしても、高額な現金を補償対象とするものは少ないですし、保険料も高くなります。
③インフレリスクは、インフレにより現金の実質的に下がる危険性です。①~③のリスクの中では、政府や日銀の政策からはこれが一番顕在化する危険性が高いように思います(このリスクへの対処は、現金と異なるクラスターに属する国内株式、海外債権、海外株式などへの投資となりますが、国内での証券口座開設はマイナンバーで紐づけられますし、海外へ現金を持ち出して証券口座を開設しても海外当局との情報交換が進んでいることからすると、結局は課税当局に把握されることになりそうです)。
結論としては、マイナンバーによる紐付けを嫌ってタンス預金という形で高額な現金を保管するのは、得策とは言えないと思います。