マイナンバーの基本の「き」。企業から見たマイナンバーのメリット・デメリット

2015.10.29

1 マイナンバーとは?

マイナンバーとは、「社会保障・税番号制度」であり、個人や法人に1つずつナンバーが付けられます。
「国民・法人総背番号制」との表現のほうがわかりやすいでしょう。
マイナンバー制度により、国民から見たプラス面としては行政サービスを受けやすくなる(住宅ローン控除で住民票の添付を省略できたり、行政サービスの漏れを知ることできたりするようになります)、行政から見たプラス面としては、税金と社会保険の統一的な運用(社会保険未加入法人を見つけやすくする)や行政サービスの不正受給防止(例:収入制限規定を超えているのに行政サービスを受けられなくする)があります。

2 企業から見たメリット・デメリット

 (1) 法人マイナンバー

企業にメリットがあるかですが、法人マイナンバーについては、1つの番号で紐付できるので、債権管理や信用調査に有用と思われます(個人マイナンバーと異なり、利用目的に制限はありません)。逆に、自社についても、マイナンバーが付与されて、他の企業に信用情報が蓄積されることになる点に注意が必要です。

 (2) 個人マイナンバー

企業には、メリットがあるようには正直なところ思われません。
デメリットは、①社員のマイナンバー管理コスト(社員の入社から退社まで管理、社員の扶養家族の管理)、②多数のアルバイトを雇う会社、外注先が多い会社の管理コスト(不特定多数のアルバイトや外注先があると、その都度マイナンバーを取得・廃棄を繰り返す必要があります)、③パソコンや記録媒体の管理コスト(情報漏えいしないようにアンチウィルスソフト常に更新する、アクセス制御規定(区域管理又はパスワード設定)の整備、廃棄規定の整備を徹底する必要があります)、④漏えいした場合の会社や代表取締役への損害賠償請求リスクを負うことになります。もちろん、⑤漏えいした人物はもちろん、漏洩されてい待った法人には、処罰されるリスクを負うことになり、特に法律が定めていない目的で使用できず、使用(漏えい)すると処罰対象となる点に注意が必要です。
このように、企業・法人には、管理コストや損害賠償リスクを新たに負うことになります。特に、従前は、個人情報保護法の適用対象外(過去6か月のいずれかの日で5000件未満の個人情報を扱う場合)であった企業も、適用対象となるので注意が必要です。

<参考:罰則の内容>

  1. Ⅰ:特定個人情報保護ファイルの故意の漏えい
    4年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金(67条)
  2. Ⅱ:業務に関して知りえた個人マイナンバーを不正に提供又は盗用
    3年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金(68条)
  3. Ⅲ:不正アクセス等で個人番号取得
    3年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金(69条)
  4. Ⅳ:特定個人情報保護委員会(マイナンバーに関する監督組織)の勧告・命令に従わなかった
    2年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金(73条)
  5. Ⅴ:特定個人情報保護委員会の検査忌避
    1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金(74条)
  6. Ⅵ:従業員が上記の違反行為をした。
    法人にも従業員と同じ罰金刑(75条)
このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

マイナンバー制度対策 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。