英文契約書における秘密保持契約(2)除外規定、複製行為・分析行為の取り扱いについて

2022.3.29

1.はじめに

秘密保持契約書(Non-Discloser Agreement)の条項を検討する上で、秘密情報に当たらない又は秘密保持義務契約書の各義務が免除される情報を設けることは秘密保持契約書の効率的な運用において必要です。また、秘密保持契約の実効性を高めるために、複製行為・分析行為といった特別な取り決めがなければ、対応できない各行為への対応も必要となりますので、以下で詳説します。

2.秘密情報と除外情報条項との関係

(ア)「通常の形式」

秘密情報条項と除外情報条項は、通常以下の条項で示されることが多いです。

①例

I. Article1 (Confidential Information)

(i)Confidential Information” in the Agreement is all of technical and business information which the Disclosing Party marks confidential to the Receiving Party for the Evaluation by way of any of the following (1) to (4):【(1)~(4)は省略】

(ii)Notwithstanding the provision of paragraph 1, the information that the Receiving Party can prove each of the following ①to ⑤ items is not deemed to be Confidential Information.
①Information that was already owned by Receiving Party at the time of disclosure.
②Information already known at the time of disclosure.
③Information that became known publicly without the responsibility of Receiving Party.
④Information obtained without the obligation of confidentiality kept from a third party with legitimate authority after disclosure.

②訳

I. 第1条 秘密条項

(i)本契約における「秘密情報」とは、次の(1)~(4)のいずれかの方法により、開示当事者が評価のために受領当事者に秘密とした技術上及び営業上の情報のすべてをいう。【1】~4)は省略】
(ii) 第1項の規定にかかわらず、受領当事者が次の①から⑤の各号を証明できる情報は、秘密情報とはみなされないものとします。
① 開示の時点で既に受領当事者が所有していた情報。
② 開示時に既に知られていた情報。
③ 受領当事者の責任によらず公知となった情報。
④ 開示後、正当な権限を有する第三者から守秘義務を負わずに入手した情報。

(イ)「通常の形式」の問題点

「通常の形式」は、第1項で秘密情報の定義を規定し、第2項で、秘密情報に該当しない情報を規定する規定(以下「除外規定」といいます。)
秘密保持契約書には、秘密保持義務・目的外使用禁止義務・秘密情報の基づく出願などの通知義務など多くの義務が定められているのが通常です。ところが、「通常の形式」では、除外規定に該当する情報については一律に秘密保持契約書で定められたすべての義務が免除されてしまう結果になります。例えば、2項の②のように既にしれられている情報又は④の第三者からから取得した情報であっても、勝手に使用されたくない要請はあるはずです。ところが、「通常の形式」によると、2の①~④に該当する条項であっても、このような要請に対応できなくなります。

とはいえ、情報開示側又は情報受領側のいずれに立つのかで、条項をどのように設定するか又は設定された条項にどのように対応するのかが異なります。
通常は、情報開示者側の立場に立てば、除外条項は、秘密保持義務に限定したものとして設定し、目的外使用禁止規定は、除外条項により除外された情報にも適用があるように設定します。

(ウ)情報開示者から条項を提示する場合の例

①例

I. Article1 (Confidential Information)

Confidential Information” in the Agreement is all of technical and business information which the Disclosing Party marks confidential to the Receiving Party for the Evaluation by way of any of the following (1) to (4):【(1)~(4)は省略】

II. Article2 (Confidentiality Obligation etc.)

(i) Receiving Party shall not disclose Confidential Information, the existence and content of this Agreement, and the existence of the Evaluation to a third party, unless it falls under any of the following items:(1) In the case where there is a prior written consent of Disclosing Party; or(2) When disclosing is required by an order from a court or an administrative agency and it is disclosed to the relevant court or administrative agency.
(ii) Notwithstanding the provision of paragraph 1, Each party confirms that the obligations in paragraph 1 do not apply to information that falls under (1) through (5).【(1)~(5)は省略】

②訳

I. 1条:秘密情報

契約における「秘密情報」とは、次の1)~4)のいずれかの方法により、開示当事者が評価のために受領当事者に秘密とした技術上及び営業上の情報のすべてをいう。

II. 2条:秘密保持義務

(i)1項
受領当事者は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、秘密情報、本契約の存在および内容、ならびに評価の存在を第三者に開示しないものとする(1) 開示当事者の書面による事前承諾がある場合 (2) 裁判所または行政機関の命令により開示を求められた場合で、当該裁判所または行政機関に開示されるとき。
(ii)2項
第1項の規定にかかわらず、各当事者は、(1)から(5)に該当する情報については、第1項の義務が適用されないことを確認するものとする。

③検討

1条「秘密情報」の定義から、除外条項を除くことで、除外条項があったとしても、「秘密情報」に該当することになり、以下の条項で秘密保持契約書上の義務が除外される条項を設けない限り、除外条項に当たる情報でも当該義務を負うことになります。
ただ、これでは、受領者からクレームが来ることが必須なので、交渉を円滑化するために2条の秘密保持義務の免除条項として2項を設けております。このように規定することで、例えば目的外使用禁止義務は除外条項がある情報でも義務を免れません。

3.秘密情報と複製行為・分析行為との関係

(ア)通常の目的外使用禁止条項

秘密保持契約書において、通常は目的外使用禁止条項が存在するのが通常であり、目的外使用禁止条項は通常、

「Receiving Party shall not disclose Confidential Information, the existence and content of this Agreement, and the existence of the Evaluation to a third party, unless it falls under any of the following items」

(訳:受領当事者は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、秘密情報、本契約の存在および内容、ならびに本評価の存在を第三者に開示してはならない。※ 秘密情報及び本評価の各定義は省略。)
と規定されている関係上、複製行為自体・分析行為自体は、目的外使用禁止義務で制限をかけることが可能です。

(イ)複製行為・分析行為に関する留意点

しかし、通常、複製行為・分析行為は、受領者内部でなされることが多く、社内で秘匿するノウハウの製造又は秘密情報と同一性を欠落させるまで変容させた知的財産権の出願にあることが多いです。
このような場合、開示者側で発見困難することが困難であり(特にノウハウによる所持の場合)、これについても規制をかけないと開示者の知的財産の漏洩につながります。特に分析結果は、秘密情報と同一性がない場合があるので、秘密情報ということができない=開示者の承諾なくしても開示が可能となってしまいます。

(ウ)対応方法について

ただ、これについても、情報開示側又は情報受領側のいずれに立つのかで、条項をどのように設定するか又は設定された徐行にどのように対応するのかが異なります。

4.条項例

(ア)開示者から提案する例

①条項

Article1 (Confidential Information)

Confidential Information” shall include all information or material that has or could have commercial value or other utility in the business in which Discloser is engaged, including but not limited to technical and business information, business plans and proprietary business models, and/or media samples, results of analysis, prototype parts, other tangible embodiments of information, or copy of the confidential information media.

②訳

1条 秘密情報

「秘密情報」には、技術情報、ビジネス情報、ビジネスプラン、独自のビジネスモデル、メディアサンプル、分析結果、プロトタイプ部品、その他の有形情報、または秘密情報媒体のコピーなど、開示者が従事するビジネスにおいて商業的価値またはその他の有用性を持つ、または持ちうるすべての情報または資料が含まれるものとします。

③検討

「秘密情報」の定義を拡張することで、本来的な意味では含まれない複製物、分析結果も秘密情報に含めてしまおうという条項案です。

(イ)これに対するカウンターの例

①条項

Article1 (Confidential Information)

Confidential Information” shall include all information or material that has or could have commercial value or other utility in the business in which Discloser is engaged, including but not limited to technical and business information, business plans and proprietary business models, and/or media samples, prototype parts, other tangible embodiments of information, or copy of the confidential information media.
If Confidential Information is in written form, the Discloser shall label or stamp the materials with the word “Confidential” or some similar warning. If Confidential Information is transmitted orally and/or in a tangible embodiment in a form other than writing, such information must be identified as confidential or proprietary at the time of disclosure or delivery
(下線部が意見を付加すべき事項)

②訳

第1条(秘密情報)

秘密情報」には、技術情報、ビジネス情報、ビジネスプラン、独自のビジネスモデル、および/または媒体サンプル、プロトタイプ部品、その他の情報の有形具体物、または秘密情報媒体のコピーなど、開示者が従事する事業において商業価値またはその他の有用性を持つ、または持つ可能性のあるすべての情報または資料が含まれるものとする。
秘密情報が書面である場合、開示者は、当該資料に「Confidential」の文字または同様の警告をラベルまたはスタンプで表示するものとします。秘密情報が書面以外の形態で口頭および/または有形の具体化により伝達される場合、かかる情報は、開示または交付の際に秘密情報または専有情報として識別されなければなりません。

③検討

上記案では秘密条項の範囲が広がりすぎ、それに伴う過大な義務が生じる恐れがあるので、義務の外縁を定める必要があります。そこで、上記下線部のような秘密指定を「秘密情報」該当性の要件とすることで、義務の外縁を確定することが可能となります。

5.最後に

秘密情報の枠をどのように定めるかは、開示者側からすると秘密保持契約書の実効性を高めるものの、受領者側からすると義務の加重につながるので、開示者側又は受領者側のどちらに立って交渉するのかの視点を持つことが有用です。
お気軽にご相談ください。

英文契約書 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
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  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
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  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。