英文契約書における秘密保持契約書(1)秘密情報の定義 the definition of Confidential Information

2022.3.22

1.はじめに

秘密保持契約書を締結する際に取引先からの情報提供が有るか又はこちらも情報提供を行うことが予想されます。これは日本語での契約でも英文契約でも変わるところはありません。通常は、取引に入る前の商談の時点で、サンプル又はこれに代わる取引対象物の情報を開示することになりますところ、その開示前に秘密保持契約書の取り交わしがあることが予想されます。この秘密保持契約書のポイントの一つに秘密情報をどのようにして定めるかということがあります。以下で詳説します。

2.秘密情報【Confidential Information】の定め方について

(ア)Confidential Informationの万国共通法律上の定義はありません。

Confidential Information:秘密情報の定義が一律に法定されているわけではありません。国際取引においては、そもそも適用する法律を定めるところから始めるため、各国法に秘密情報の定めがあったりなかったりするため万国共通の秘密情報の定義があるわけではないのです。

(イ)Confidential Informationは秘密保持契約書内で定義する必要があります。

秘密情報【Confidential Information】に万国共通の定義がないため、秘密保持契約書で定義する必要があります。
ところで、日本法において、秘密情報に近いものとして「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)という概念があります。

同法では営業秘密として
情報のうち

①秘密として管理され
②事業活動に有用な技術上又は営業上のものであって
③公然と知られていないものをいいます。

実は秘密保持契約書で取り扱う秘密情報は「営業秘密」よりも広汎であること多いです。すなわち、製品の仕様などの製造委託する場合には通常受注者に提供する情報のように秘密管理がなされていなくとも、営業担当者の氏名などの個人情報のように営業上の情報ではなくとも、通常は秘密情報【Confidential Information】に含んで契約することになります。
したがって、秘密保持契約書において秘密情報の定義が必要なのです。

(ウ)開示を受ける側か開示する側かにより定義は異なる。

秘密情報【Confidential Information】の定義を設けるにあたっては御社の立場が取引先との関係でどのような立場にあるのかをまず考えなければなりません。すなわち、御社が一方的に取引先から情報の開示をうける立場であれば、秘密情報の範囲は狭ければ狭いほどよいのです。なぜなら、秘密情報の開示を受け、その範囲が広汎である場合、秘密情報の保全管理義務・目的外使用の禁止義務等を負わされるため管理負担範囲が拡大するからです。
他方、御社が一方的に取引先に対し情報を開示する立場にあれば、秘密情報の定義は広ければ広いほどよいのです。なぜなら、その範囲が広汎である場合、取引先に対し、秘密情報の保全管理義務・目的外使用の禁止義務等を負わせ、御社の開示した情報の保護範囲が拡大するからです。

(エ)秘密情報の対象を固定するか

①開示をする側から秘密保持契約書を開示する場合

i.例

“Confidential Information” shall include all information or material that has or could have commercial value or other utility in the business in which Party A is engaged,

ii.訳

「秘密情報」には、当事者A(Party A)が従事する事業において商業的価値またはその他の有用性を有する、または有する可能性のあるすべての情報または資料が含まれるものとする。

iii.解説

Confidential Informationの定義が「当事者A」という一方当事者の情報に限定されており、他方当事者の情報は秘密情報に該当しないので、秘密保持契約書では保護されないことになります。つまり、当事者Aは、秘密情報の保全管理義務・目的外使用の禁止義務等を負わない、これが秘密情報の保護の対象を固定化することの意味です。

(オ)秘密保持契約書の開示を受けた側からのリアクションの例

i.例(一部加筆)

“Confidential Information” shall include all information or material that has or could have commercial value or other utility in the business in which Disclosure Party A is engaged,

ii.訳

「秘密情報」には、開示者、当事者Aが従事する事業において商業的価値またはその他の有用性を有する、または有する可能性のあるすべての情報または資料が含まれるものとする。

iii.解説

当事者Aに代わって(情報の)「開示者」(Disclosure)という概念を新たに設け、秘密情報の保護の対象の固定化を防止する方向で意見を出すことになります。なお「開示者」の定義は、別途設けることになります。

(カ)秘密の指定を設けるか。

①開示する側から秘密保持契約書を提示する場合

i.例

The term “Confidential Information” as used in the Agreement shall mean any and all technical, business, or other information that the Discloser has clearly indicated to the Licensee for the purpose of this Study to be confidential

ii.訳

契約における「秘密情報」とは、開示者が、本検討のために、被開示者に対し、以下の方法により秘密である旨明示した技術上または営業上その他一切の情報をいう。

iii.解説

秘密指定をしようがしまいが秘密情報として取り扱われることから、開示を受けた側が、全ての開示された情報について管理義務などの義務を負うことになります。

②開示をされる側から秘密保持契約書を提示された場合の相手方のリアクションの例(下線追記)

i.例

The term “Confidential Information” as used in the Agreement shall mean any and all technical, business, or other information that the Discloser has clearly indicated to the Licensee for the purpose of this Study to be confidential in any of the following ways; Information disclosed by a Discloser by presenting a document or sample, which is clearly marked as confidential by a method in which such document or sample is marked with, for example, “Top Secret,” “Secret,” “or “Confidential.

ii.訳

契約における「秘密情報」とは、開示者が、本検討のために、被開示者に対し、以下の方法により秘密である旨明示した技術上または営業上その他一切の情報をいう。開示者が、文書またはサンプルの提示により開示した情報で、当該文書及びサンプルに、例えば、「極秘」、「秘」、または「Confidential」等の表示が付される方法により秘密である旨を明示した情報

iii.解説

開示された情報のすべてが秘密情報となるものではなく、上記のとおり秘密情報に㊙などの秘密指定がなされた情報のみが秘密情報となります。その結果、秘密指定がなされていない情報は管理義務などを負わないことになります。

3.おわりに

以上のとおり、秘密情報の定義を一つとってみても、当事者の有利不利に大きく影響することになります。不利な英文契約書の締結をしないためにも。英文秘密保持契約書を受け取った場合には、弊所までお気軽にご相談ください。

英文契約書 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。