相続の基礎知識

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相続税の申告・納付

遺産が基礎控除額以上なら、相続税を期限内に納めなくてはなりません。遺産分割協議が長引いたり、調停・審判にもつれ込んだりしたら、納税資金対策を講じる必要があります。
申告の有無に関わらず、相続税は、申告期限の2〜3年後にいきなり税務調査に入られる可能性が高いので、申告は正確にする必要があります。

相続税のかかる財産とは?

1. 相続、遺贈、死因贈与で取得した財産

土地、建物、預貯金、有価証券、現金、自動車、事業用財産、家庭用財産など、金銭に換算できる全ての財産。 財産額から、借金や未払い金(医療費、税金など)、葬儀費用を差し引いた金額に、相続税がかかります。基礎控除額※との差し引きがマイナスになれば申告の必要はありません。小規模宅地や配偶者税額軽減などの特例を適用するとマイナスになるから申告はしなくていいと考える方がいらっしゃいますが、特例の適用は、申告を前 提としているため、申告するかどうかは、特例適用前の金額で判断します。 ※ 3,000万円+法定相続人の人数×600万円。

2. 相続や遺贈で取得したと見なされる財産(みなし財産)

死亡保険金、死亡退職金、生命保険契約や定期金給付契約に関する権利など。死亡保険金や死亡退職金は、非課税限度額を超えた金額に相続税がかかります。
※生命保険金や死亡退職金の非課税限度額は、それぞれ500万円×法定相続人の人数で算出します。

3. 相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産

相続税の課税対象になりますので、1.と合算します。

4. 相続時精算課税制度の適用を受ける贈与財産

被相続人から生前贈与された財産で、相続時精算課税制度※の適用を受けたものは、相続税の課税対象になりますので、1.と合算します。
※贈与時は贈与税が非課税になるが、相続時には贈与分を精算して課税する制度。

納付期限は?

相続税は、相続がわかった日の翌日から10カ月以内に申告・納税しなければなりません。
遺産分割協議が難航して、解決まで何年もかかるような例は珍しくありませんが、そんな場合でも、申告・納付は10カ月の期限を守ることを要求されます。

間に合いそうにないときはどうする?

納税期限までに遺産分割協議の合意ができそうになく、遺産で相続税を納めることができないときはどうすればいいでしょう?手元にお金がなく、遺産の預貯金も払い戻せないときは、どうやって納税資金を確保すればいいのでしょう?
ひとまず、法定相続分に従って取得したと仮定して、申告書を作成して納税しなければなりません。未分割の相続財産については、配偶者控除や小規模宅地等の特例の適用を受けることができませんので、多めの税金を納付する必要があります。税理士が予想納税額の算定をし、弁護士が他の相続人全員の同意を取り付けて、銀行への一部払い戻し請求をするなどの対策がとれる場合もありますので、心配だと思われたら、早めに当事務所にご相談ください。
また、申告期限後に遺産分割協議ができた場合に配偶者控除や小規模宅地等の特例の適用を受けようとする場合に備えて、当初の申告書に申告期限3年以内の分割見込書を添付しておかなければなりません。
税務署に申請して許可を受け、延納や物納をする方法もありますが、各種要件があるほか、利子税が発生する可能性があります。

「相続税についてのお尋ね」が来たらどうする?

相続開始後半年ほど経つと、税務署から「相続税についてのお尋ね」が送られて来ることがあります。
これは、被相続人の死亡届提出情報に基づいて、税務署が、一定以上の財産があると見込んだ相続人に対して送付するもので、遺産内容の確認をして、相続税申告を促すのが目的です。送られて来たら、すぐに税理士に相談されることをお勧めします。

申告しないと、どうなる?

被相続人が逝去してから3~4年後に、突然、税務調査が入ることがあり、その結果、加算税や延滞税を余分に支払うことになる場合もあります。さらに、相続税の申告をしていない結果、小規模宅地や配偶者税額軽減などの特例の適用が認められないため、本来は支払う必要のなかった税金を余分に支払うことにもなります。無申告だった事例のうち、年間650件の調査が実施され、平均1件当たりで相続税と加算税計834万円を追徴されています(平成26事務年度)。

3年経過しても分割できていないと、どうなる?

死亡後10か月以内に申告書と「申告期限3年以内の分割見込書」を提出したけれども、3年以内の遺産分割が完了しそうにない場合には、調停申し立てを行うなどした上で「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署に提出する必要があります。

弁護士の現場から

こんなご相談がありました

Kさんのお父さんは多額の保証債務を残して亡くなったため、きょうだい全員で相続放棄することに決めました。しかし、Kさんだけは相続時精算課税制度を使って、1,000万円の生前贈与を受けていたため、相続放棄ができるのか、相続税はどうなるのか心配になり、当事務所の10分の無料電話相談を利用されました。

当事務所からのアドバイスは

  1. 生前贈与を受けていても相続放棄はできること。父に借金があることを知らずに贈与を受けているので、違法性はなく、債権者に問題視される詐害行為には当たりません。
  2. 相続税を支払う必要はないが、相続税の申告は必要であること。相続税は、基礎控除額の範囲内なので支払う必要はありませんが、相続税時精算課税制度を使った贈与を受けた場合、相続放棄するなど相続財産を引き継がない場合も、贈与財産を相続時にもらったと仮定して相続税申告書を作成し、相続税を計算する必要があります。(相続税時精算課税に基づく贈与に伴い贈与税を納付している場合には、相続税額から贈与税額を減算することになります)。

まとめ

基本的には、相続放棄すると相続税を申告する必要はありません。ただし、いくつかの例外があり、そのひとつが相続時精算課税制度を利用していた場合です。贈与された時点では非課税でも、相続時には贈与された財産を相続財産に加算して精算しなければなりません。相続放棄していても、このことに変わりはありませんし、相続放棄すると、通常より20%増しの税金を支払なければなりません。
Kさんの場合、贈与時も相続時も、金額が控除の枠内だったので納める税金はありませんでしたが、金額次第では納税の必要が生じます(贈与税を納付している場合には、相続税額から贈与税額を減算することになります)。
Kさんは当事務所に相続放棄と申告書の作成を依頼され、相続放棄と申告手続を済まされました。

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