このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
ご相談いただく会社様で、相手方と紛争になって、相談にお見えになり、「契約書はありますか」と尋ねると、「相手を信用していたので作っていません」と答えられるケースがあります。
また、これから相手方と契約するという場合でも、「契約書を作りたい」と当方から切り出すと、相手方を信用していないと取られてビジネスがうまくいかなくなると恐れて、契約書を交わさないということを雑談の中で伺うことがあります。
あるいは、人の紹介で取引することになり、紹介者が信用できるから交わさないという例もありますし、メールのやり取りを重ねていつの間にか商品やサービスを提供していたという例もあります。
確かに、法律では口約束でも契約は成立するとされていますが、契約書と言う証拠がないと、①そもそも契約が成立したかわからなくなる、②細かな契約条件が不明確となります。
しかし、契約書がないと、相手方が契約上の義務を履行しないから契約を解除したいと思っても解除ができなかったり(契約書で検品条項や解除事由を列挙する条項定めていれば防ぐことができます)、その他に不利益を受ける場合(例えば、メールのやり取りで代金の分割払いの合意をした場合、弁済期限の未到来のものの回収が非常に難しくなります)があります。
契約書は、相手方とのトラブルになったときに、効力を発揮するものです。契約書があったことで、感情的な対立までには至らずに契約書の条項に従って解決に至り、相手方との信頼関係に対する深刻なダメージを回避する例もあります。
したがって、相手方を信頼・信用しているからこそ契約書を作成する必要があります。