このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
相続税法では、基礎控除の算定の対象となりえる養子の人数について、1人又は2人と人数制限をしています。
他方、民法では、養子の数について特に人数の制約を設けていません。そのため、理論上、何百人、何千人と養子に迎えることは可能です。
もっとも、養子縁組の有効要件として、養親子関係を形成しようという実質的な意思が要求されますので、何百人、何千人を養子に迎える行為には、親子関係を形成しようとする意思が認められるか慎重な判断を要すると思われます。
財産を相続させるための養子縁組、例えば孫には相続権はないが、介護してくれた労に報いるために養子縁組するなどという場合には、通常、上記の実質的な養親子関係を形成しようという意思があると認定されることになります。
しかし、専ら相続財産の承継対策のためだけになされた養子縁組については、上記実質的意思が認められないと例外的に判断される場合があるので、注意が必要です。
東京高裁昭和57年2月22日判決は、被相続人の判断力が低下し同居人の言いなりとなる精神状態であったこと、被相続人が亡くなる前から相続人Aと相続人Bとの間で激しい感情の軋轢があり相続財産を巡る争いが既に現実化していたこと、相続人A側の親族3人を一度に養子に迎えていること、一度に3人と養子縁組する特段の事情(動機)がないことなどから、養子縁組を無効と判断しました。
このように、養子縁組について、極端な事例の場合には実質的意思が認められないと判断される例もあります。
また、実質的意思があったとしても、他の兄弟姉妹に知らせずに、養子縁組をしていると、遺産分割協議で揉める原因となりますので注意が必要です。