マイナンバーが流出した場合の賠償額はいくら?

2015.11.11

1 マイナンバーを漏えいした場合の予想賠償額~0円説から3万円説まで~

 マイナンバーを漏えいした場合の損害賠償がいくらになるかは、色々と議論があります。マイナンバーは、数字の羅列にすぎずそれ自体に価値はないと主張する論者もいれば、マイナンバーが今後紐づけられるであろう情報の重要性(納税額のほかに、治療歴や財産状況など)から極めて価値の高い情報であると主張する論者もいます。
論者によって、1件あたり、0円、500円、1万円、3万円など大きく異なり、議論が固まっていない状態です(なお、弁護費用相当額を除きます)。  0円は、マイナンバーが無価値という考えを突き詰めると導かれます。
500円は、情報漏えいの際に企業が初期対応として提示することが多い賠償額(金券などの送付が多いようです)です。ただし、500円は、判決によって認められた金額ではなく、諸般の事情から経営判断として導かれた金額です。
1万円は、基本4情報といわれる氏名、住所、性別、生年月日が漏えいした場合に認められるであろう賠償額です(宇治市住基データ漏えい事件)。
3万円は、機密情報が漏えいし、いたずら電話などの実害が生じた場合に認められた賠償額です(エステ会社情報漏えい事件)。

2 どの情報とともに漏えいしたかにより賠償額が変わる

 結局は、マイナンバーとともにどのような情報が漏れたかによって賠償額が変わります。
マイナンバーと基本4情報がセットで流出した場合には、1件当たり1万円と予想されますし、マイナンバーと氏名の他に、治療歴や財産状況などの機密情報が流出した場合には、1件当たり3万円を超えると予想されます。
そして、マイナンバー単体の流出の場合ですが、しばらくは賠償額としては大きくはならないと思われます。ただし、マイナンバーは、個人の情報を紐づける「キー情報」ですので、「名簿屋」が今後、違法にマイナンバーとそれに紐づけられるに情報を収集・蓄積していくことが予想されるので、マイナンバーだけでもかなりの価値(実害)が生じると予想されます(もちろん、目的外収集は違法です)。そのため、時間の経過とともに、マイナンバーそのものの賠償額が高騰していくと予想されます。

3 流出した場合の賠償額が大きくなる⇒備えの重要性

 1件当たりの賠償額がいくらになるかわかりませんが、1件1万円としても、流出する場合には場合によっては、数百件、数千件単位以上で流出しますので、流出すると中小企業には深刻な損害となります。  どこで流出したか、会社で流出したわけではないかを反論する証拠になりますし、理論的には賠償額に影響があるわけではないものの斟酌される可能性もありえますので、就業規則や誓約書などの諸規定の整備、従業員教育、マイナンバー法が求める各種安全管理措置を実行し、実行したことを裏付ける証拠を残しておく必要があります。

このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

マイナンバー制度対策 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。