介護事業者とマイナンバー~利用者のマイナンバーの取得②~

2015.12.23

1 利用者(お客様)のマイナンバーを記載する場面

 介護事業者は、利用者(お客様)のために、マイナンバーを記載する書面が多くあります。例えば、被保険者証の再交付申請、氏名・住所などの変更の届け出、要介護・要支援認定の申請、同更新認定の申請、介護サービスの種類の変更の申請などです。
本来は、利用者(お客様)が記載する建前ですが、年齢や身体の不自由の問題から、介護事業者が必要事項を記載して提出する場面は多いと思われます。
まずは、認知症ではない利用者(お客様)の場合を見ていきます。

2 利用者(お客様)のマイナンバーを記載する場合の法的構成

 その場合の利用者(お客様)と介護事業者との法律関係としては、①介護事業者は、利用者(お客様)の手足である、又は書面作成・提出に限り代理権を与えられた(使者・代理)、②介護事業者は、利用者(お客様)からマイナンバーについて取得・保管・利用・提供など全般的な委託を受けた(業務委託)、というものが考えられます。

3 メリット・デメリット

 ①の「使者」・「代理」の場合には、マイナンバーの管理主体はあくまで利用者(お客様)というのがメリットで、申請書の提出や控えの保管も利用者(お客様)の責任となります。ただ、利用者(お客様)が、文書管理をきちんとできるのかという問題があります。特に入居施設の場合には、建物・敷地に施設管理権・管理義務がありますので、申請書の控えの紛失・盗難の場合に介護事業者が絶対に責任を負わないとは言い切れません。
②の「業務委託」の場合には、メリットとしては、従前同様に申請手続きを介護事業者が代行できる、控えなどを一元的に保管できるというメリットがあります。デメリットは、受託業者は、中小企業の緩和措置が受けられないので、特定個人情報取扱規定を整備して、運用面を定期的チェックする必要があり事務負担が増える恐れがあります。
どちらが適当かは、介護事業の内容、規模等によりますので、一概には言えませんが、「委託」の方が実体に合っているケースが多いようにと思われます。

4 事務手続きの見直しの契機に

 「委託」の場合には、特定個人情報取扱規定の整備等が必要となりますが、むしろ事務手続きの流れを見直し効率化を進める契機ととらえるほうが良いと思われます。
もちろん、実際の業務の流れと負担との兼ね合いから、特定個人情報取扱規定の表現、各種安全管理措置の実際のフローに合わせるなど、過不足なく作成する必要があります。

このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

マイナンバー制度対策 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。