このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)
大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995
最近話題になっている事実婚ですが、内縁関係にある男女のカップルを指して言います。
他方、法律婚は、婚姻届けを提出した男女のカップルを言います。
いずれも両者が夫婦になる意思があることが要件(実体要件とも、公然性とも表現できます)となります。
民法などにより、法律婚で認められて、事実婚で認められないものとしては、①相続権がない、②子供が非嫡出子扱い(父親が認知する)になると言ったものがあります。②については嫡出子と非嫡出子の差異がなくなる方向であることから大きな差異ではないかもしれませんが、①の相続権が無いことについては遺言で対処するにしても、遺言はいつでも遺言者がその気になればいつでも変更できることからすると、本当にどこまで相手を信頼できるかという問題は残ります。
また、事実婚は、単なる同棲ではなく、同棲を超えた「両者が夫婦になる意思」の存在の立証を求められますので、夫婦関係が壊れて財産分与や慰謝料請求の場面では、婚姻届けを提出していないばかりに、立証の手間が増えるという問題があります。
もっとも、事実婚のメリットとしては、改姓が不要であること、別れても戸籍に「×」がつかないというメリットがあります。
相続税法での差異を挙げると、①配偶者の税額軽減特例の適用が無い、②仮に遺言などで遺贈を受けるとしても、相続税額が2割加算となるという問題があります。
また、所得税法でも配偶者控除は法律婚を前提としています。
そのため、税法から見ると、事実婚にメリットはないことになります。
法律婚と事実婚のどちらを取るかは、2人の話合いによって決めるべき事柄ですが、事実婚を選択したいという信念を取るか、法律婚の方が税法上有利という損得を取るかという判断で決めることになりそうです。