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解決事例

母の遺産の相続放棄を要求する手紙が、亡弟の妻の代理人という、司法書士の名義で届きました。 遺産の内容すら知らされていないのに、どう対処すればいいでしょう?

相談者
年代:50歳代

ご相談の経緯

Aさんの実母が亡くなって間もなく、Aさんに、亡くなった兄弟の妻Bさんの代理人という司法書士から、「相続放棄をするように」という趣旨の手紙が届きました。しかし遺産の内訳は一切書かれていませんでした。
Aさんは4人兄弟ですが、Aさんは妻の両親と養子縁組をしています。そのため自分だけかと思いきや、他の2人の兄弟にも同じように相続放棄の手紙が届いていたそうです。
また、Bさんは夫(Aさんの弟)が亡くなった後に、Aさんの実母の養子に入っていました。
あまりに突然で一方的な話に、Aさんはどう対応すればいいかわからず、当事務所に相談にいらっしゃいました。

ご相談のポイント

  • 1. 突然の司法書士からの手紙にどう対応すればいいか。
  • 2. 相続問題が長引けば、相続税の申告が間に合わないのではないか。
  • 3. できればBさんに相続をさせたくないが良い方法はないか。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

1. 手紙への対応について

Aさんが他家に養子に入っても、実母との親子関係は切れません。遺産を相続する権利もありますから、Bさんからの相続放棄要請の手紙に対応する必要はありません。
そこで弁護士は、
①相続放棄はしないということと遺言書と財産の開示を要求した、弁護士名義の手紙を、内容証明郵便でBさん宛に発送しました。
②Bさんの養子縁組が正当なものか確認し、相続関係を確定するために、戸籍謄本を収集しました。
③遺言書の存在を確認するために、弁護士事務所の最寄りの公証人役場に行き、公正証書遺言の作成の有無を確認しましたが、遺言書は存在しませんでした。
弁護士からの手紙を受け取ったBさんは、Aさんが本気で対応してくるとみて、ご自分も弁護士を依頼され、以後は、弁護士同士の話合いで問題を解決することになりました。

2. 相続税の申告期限について

相続税の申告・納税期限は、被相続人の死を知った日の翌日から10ヶ月以内です。Aさんの場合、今から遺産分割協議をして申告するのでは間に合わないと判断。延滞税をとられないため、さらに、相続税の申告をしないと、小規模宅地等の特例の適用が認められず、税額が大幅にアップする可能性があるため、双方の弁護士が相談し、ともかく納期までに申告・納税を済ませることにしました。
今回の相続は、お父さんが既に亡くなっている二次相続ですので、・配偶者控除が使えない・基礎控除額が減る(実母の分)など、相続税が高くなる要素があり、申告書作成は慎重に行う必要がありました。しかも、相続税は、申告の有無に関わらずいきなり税務調査に入られる可能性が高いので、漏れやミスのないよう注意が必要です。
当事務所は、弁護士で税理士の橘髙がワンストップで対応しました。Bさん側の税理士と司法書士や、他の2人のご兄弟とも話し合い、遺産総額を洗い出して、仮の申告をするための遺産分割協議書を作成し、納期内に申告・納税を済ませることができました。

後日精査した結果、Aさんが税金を払い過ぎていたので、他の兄弟に校正請求をして払っていただきました。

3. Bさんの相続分について

本来なら、Aさんの法定分割割合は1/4ですが(亡くなったご兄弟の分をお子さんが代襲相続するため)、Bさんが養子に入ったので、1/5に減ってしまいます。
Bさんに良い感情を持っていないAさんは、できればBさんにこそ相続放棄してほしいと思っていましたが、1)でもお話しした通り、それはできませんので、弁護士に交渉を任せていただくことになりました。
実母の家はBさんに譲ること、実母の生前の扶養は3の人兄弟が負担していたことなどを説明して、Bさんを説得した結果、Bさんも納得し、自身の相続分から、他の3人の兄弟の相続分にプラスアルファしてくださることで決着がつきました。

今回のことをきっかけに、Bさんが養子縁組をした当時の実母の判断能力や、縁組の目的などに疑問を持っていたAさんから、「実母とBさんの養子縁組の有効性について裁判で争いたい」とのご相談もありましたが、お話しをうかがった結果、確かな証拠がない現状ではむずかしいと判断し、その件は断念されるようアドバイスしました。

弁護士からのコメント

Aさんが早いうちに弁護士に相談・依頼されたので、相手側のBさんも弁護士に依頼されることになり、結果として早期解決につながりました。
弁護士が相続問題の交渉をすると、解決につながりやすいのは、弁護士は法的な解決を見越せるからです。訴訟に持ち込むにしても、勝てるかどうかはほぼ予想できますから、落としどころを決めて、双方を説得できます。
このケースの様に、納税期限までに遺産分割協議の合意ができそうにない場合、[税理士による予想納税額の算定⇒弁護士による銀行への法定相続分の払い戻し請求・裁判]のワンストップサービスで、納税資金を確保できます。

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