遺言書と異なる遺産分割と遺産分割のやり直しの場合の税金の違い

2016.5.27

1 遺言書と異なる遺産分割に贈与税はかかるか?

 例えば、遺言書で一人の相続人にすべての財産を与える旨が書かれていても、相続人全員が合意すれば、遺言書と異なる遺産分割をすることは可能です。
この場合に、遺言で一旦相続の効果が発生し、分割協議により財産のやり取りすることになるから贈与税の問題は生じるのではないかと言うことをよく聞かれます。特に「相続させる遺言」の場合には、相続発生時に当然に遺産分割の効果が生じるので、遺言書と異なる分割協議をすると、贈与税が発生するように見えます。
相続発生により財産を取得するという実体を重視すれば、贈与税の問題は生じず、相続税で処理すれば足ります(ただし、国税庁のタックスアンサー(4176)では、「相続させる遺言」と異なる遺産分割協議の場合の贈与税の発生について回答を避けているように読め、贈与税が発生するという裁判例もありますので、遺産分割協議の経緯や内容などについて弁護士や税理士に事前に相談したほうが良いでしょう)。

2 遺産分割のやり直し(合意解除)の場合に贈与税はかかるか?

 遺産分割のやり直しの場合には、相続によって財産を取得したとは言えないことから、原則として贈与税がかかります。したがって、遺産分割のやり直し(合意解除)は、相続人全員の合意が必要と言うハードルの他に、贈与税と言うハードルもあることになります。
ただし、遺産分割協議後のやむを得ない事情により遺産分割協議を合意解除した場合で、贈与・交換ではないと判断される場合(東京地裁平成21年2月27日判決。事案は、非上場株式の評価方法を担当税理士が間違ったため、株式の配分をやり直したという事案です)、また、遺産分割協議に無効原因がある場合などは、贈与税の問題は生じないといえます。もっとも、本職の感覚では「やむを得ない事情」はあまりないと言う印象があります。

3 お困りの場合には

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このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

相続手続き・遺産相続執行 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。