相続税対策としてのアパート建築~家賃保証は家賃額保証に非ず~

2016.10.7

1 相続税対策としてアパート建築

 お客様の中に、相続税対策としてアパート建築を考えている、業者に勧められているという方がいらっしゃいます。
確かに、更地にアパートを建築(さらに法人を設立して法人に借地させてアパートを建てる)すると、土地の相続税評価額は安くなります。その意味で、アパート建築は、近い将来に相続が予想される場合に、一つの相続税対策となります(相続対策になるかはまた別の視点が必要となります)。
ただし、事業としての吟味、例えば駅近で集客に困らない(空室リスクが低い)、立地が不便な場合には付加価値を付けられるか(将来の修繕費がかさむとしてもペット可アパートにするか)、建築費は高くないか、管理コストなどの評価は行うべきでしょう。

2 「家賃保証」≠「家賃額保証」

 アパート経営では、やはり空室リスクがいかんともしようがないため、建築業者は「家賃保証」を謳っている場合が多いです。
ただ、注意が必要なのは、「家賃保証」というのは、将来的に「家賃そのもの」を払うことは保証しますと言う意味にすぎず、将来にわたって「当初の家賃額」(つまり新築物件の高めの家賃額)を保証するという意味ではありません。通常は、2年おきに家賃を見直し(減額)されます。

3 口頭の説明と契約書面が違う?!

 業者の中には、口頭では将来的な「家賃額保証」的なトークを展開しつつ、契約書面ではしっかり2年おきの見直しを規定して、後でトラブルになるケースが多いようです。
ただ、借地借家法がありますので、「家賃額保証」の条項があっても無効とされる可能性が高く、さりとて「家賃額保証」的なトークをもって詐欺と立証できるのかというとそれも難しいのが現状です。

4 管理費も発生(2年おきの見直しはない?!)

 また、管理会社も、当該建築業者のグループ企業と契約することになりますが、その管理費は、「家賃保証」と異なり、2年おきの見直しはないようです(純粋に契約当事者の力関係によります)。

5 大切な資産を守るには

 大切な資産を守り、次代に承継するには、資産を増やすという攻めの発想は大事ですが、反対意見も吟味し、また、弁護士や税理士などの専門家に相談しながら進める必要も高いといえます。

このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

事業承継・相続 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。