介護事業者とマイナンバー~利用者のマイナンバーの取得③~

2015.12.28

1 利用者(お客様)が認知症の場合の対応

 利用者(お客様)が認知症の場合、マイナンバーをそもそも「取得」することができるか問題となります。
通知カードが、利用者(お客様)の自宅に届いた場合と施設に届いた場合に分けて検討します。

2 利用者(お客様)の自宅に通知カードが届いた場合

 この場合、同居又は別居のご家族にお願いして、利用者(お客様)のマイナンバーの教示(通知カードの写しと本人確認資料の各コピー)を依頼することになります。法的根拠を挙げるとすると、ご家族(原則として、直系血族及び兄弟姉妹)は、民法877条の生活扶助義務の履行の一環として、介護保険に係る書類作成のためにマイナンバーを取得に協力する必要があることになると思われます。
もし、ご家族と連絡がつかない場合やマイナンバーの教示を拒絶された場合には、①いつ、②誰に、③どのような手段(手紙、電話など)で依頼したかを記録しておく必要があります。これは、仮に漏えいなどが問題となった場合、提出を受けていないことを明確にして、損害賠償責任を負わない証拠とする意味があります。
また、遠方に住むご家族から通知カードを開けてマイナンバーを確認してほしいと言われた場合も、通知カードを利用者の自宅のどこに保管するかなどを詰めていく必要があり、万が一紛失した場合の責任の所在の問題からすると、ご家族の上記依頼は断った方が無難でしょう。

3 利用者(お客様)の施設に通知カードが届いた場合

 利用者(お客様)の住民票が、施設にある場合には、通知カードは施設に届くことになります。

⑴ ご家族もおらず、成年後見人もいない場合

 委託契約を締結できないので、マイナンバーは記載することはできません。マイナンバーを記載しない理由を書面化しておくほか、通知カードは開封せずに金庫で保管しておくことになります(施設側が保管する根拠としては民法697条の事務管理となります)。
なお、市町村長申立てによる成年後見人の選任について検討するのが良いでしょう。

⑵ ご家族はいるが、成年後見人がいない場合

 ご家族に通知カードを手渡し、又は簡易書留(普通郵便では、紛失の場合に日本郵政に損害賠償できません。)で送付し、ご家族からマイナンバーを教えてもらうことになります。
ご家族が通知カードの送付を拒絶した場合には、通知カードの開封及び介護保険の関係書類の作成の限度でマイナンバーを取得することについて委託契約の締結又は委任状の提出を受けることになります。なお、ご家族(直系血族や兄弟姉妹)の全員ではなく、一人のみの委任状で足りると解されます。
さらに、通知カードの送付も拒絶し、委託契約の締結も拒絶した場合には、①いつ、②誰に、③どのような手段(手紙、電話など)で依頼したかを記録することになります。

⑶ ご家族はいないが、成年後見人がいる場合

 通知カードを成年後見人に手渡し、又は簡易書留で送付し、成年後見人からマイナンバーを教えてもらうことになります。

このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

マイナンバー制度対策 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。