マイナンバーで、美容整形歴・包茎手術歴の手術歴がばれてしまうか?

2015.12.2

1 検索や質問が意外に多い?

 マイナンバーが、まだこれからの制度というか、どのように情報が蓄積・利用されるか不透明な部分があるためか、マイナンバー制度が導入されたら、美容整形や包茎の手術歴がばれてしまうのではないかと検索されることが、意外に多いようです。

2 美容整形~保険扱いか、自由診療か~

 「美容整形」(病院が標ぼうできる科目として「美容外科」、「美容皮膚科」があるようです)といっても、色々なものがあります。
マイナンバーとの関連があるとすると、美容整形の中で割合として少ないものの保険扱い(健康保険、国民健康保険)されるものか、自由診療か(保険外診療、全額自己負担、全額自費)を区別する必要があります。
保険扱いできるものとしては、眼瞼下垂、又は真性包茎などがあるようです。もっとも、「病気」と同じ扱いのため、美容整形院で治療される方よりも病院で治療される方の方が多いと思われます。
自由診療としては、例えば二重手術や脂肪吸引などがあります。また、中絶出術も自由診療となります。

3 保険扱いの手術歴について

 保険扱いのものは、他の病気の治療と同じ議論となります。
マイナンバーと治療歴等の紐づけについて議論の最中であることからわかるように、現時点では、「マイナンバーの流出≠病歴等の流出」、つまり無関係と思われます。
ただ、今後、個人番号カードが健康保険証と同じ機能を果たしたり、重複医療・重複投薬の削減の見地からマイナンバーと治療歴を紐づけたりする制度改正・法改正が行われると、少し事情が変わります。マイナンバーの流出・漏えいが、例えば勤務先からの漏えいであれば病歴等の流出とはなりませんが、例えば病院や健康保険組合などから発生した場合には、「マイナンバーの流出・漏えい=病歴等の流出」となる可能性があります。なお、その場合には、新たなマイナンバーを付番してもらうことになります。

4 自由診療の美容整形の手術歴について

 自由診療の場合には、そもそもマイナンバーを提示することを予定していませんので、保険扱いの手術歴以上に、「マイナンバーの流出≠病歴等の流出」、つまり無関係となります。
しかし、これも、今後の制度改正や法改正次第という面があります。美容整形は体にメスなどを入れる侵襲行為ですので、医師としては過去の治療歴として把握しておく必要があると思われます。
そのため、美容整形の手術歴とマイナンバーを紐づける法改正が、今後全くないとは、断定できません。もっとも、紐づけの法改正がなされる可能性はかなり低いと推測されますし、仮に法改正されても、運用の大変さから法改正後の手術歴のみを紐づけることになると思われますし、システム改修の費用を考えると美容整形院でマイナンバーの提示を受ける体制が整うのかという疑問があります。
また、紐づけされても、勤務先からのマイナンバーの漏えいが病歴等の流出に直接結びつくものでないことは、保険扱いの手術歴の場合と同じです。

5 マイナンバーよりも美容整形院のセキュリティ体制の方が重要

 マイナンバーよりも、むしろ美容整形院から手術歴が漏えいすることの方が問題となりますし、可能性が高いと思われます。
過去にも、エステサロンから情報漏えいしたため、エステ施術を受けた人がエステサロンに対して損害賠償請求した裁判があります。美容整形院だけが情報漏えいとは無関係であるという保証はありませんので、マイナンバーうんぬんよりも、美容整形院のセキュリティ体制の方が重要でしょう。
したがって、美容整形院は、法的見地から情報管理に関する規定や就業規則・雇用契約の整備する必要がありますし、セキュリティ体制の整備・運用も必要ですし、従業員教育も必要です。これらは、IT業者や弁護士を交えて確立していく必要があります。また、美容整形を受けられる方は、マイナンバーよりもセキュリティ体制がしっかりしているかに気を配った方が良いでしょう。

このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

マイナンバー制度対策 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。