遺品整理業者に必要な許認可とは?

2017.6.14

1 遺品整理業・生前整理業

 最近は、遺品整理や生前整理を行う・手伝う業者が多くみられます。内容としては、亡くなられた方が生活していた住居にある家財道具や衣類などを整理・処分することを手伝うことを仕事内容にされています。

2 遺品整理は大変

 弁護士として遺品整理をすることはないのですが、遺言書がないか、現金が残されていないかという観点から、相続人の依頼を受けて相続人とともに「家探し」することはあります。
遺言書や現金の探索という作業に限っても、作業としては時間が非常にかかり大変です。引き出しをすべて開けるのは勿論、衣類のポケットに何か入っていないか、本に紙片が挟まっていないか(自筆証書遺言が挟まっている可能性もあるため)、布団のシーツの中に紙片が入っていないか(やはり自筆証書遺言の可能性)、天袋、浴室(のマット下など)などとりあえず探せるところは探すことになります。
また、仮に現金、通帳などが見つかった場合には、見つかった状態を写真撮影して証拠を保全する必要があります。遺言の場合には偽造と言われないようにするという必要がありますし、現金等の場合には全相続人が一緒に家探ししない場合には他の相続人に金銭を盗取したと言われないようにするために写真撮影する必要があります。
丸一日かかることも珍しくなく、終わった後は衣類等が散乱し、その整理にも時間を要します。
そのため、遺品整理業は、上記の遺言書や現金、さらには大切な思い出の品を探す作業を並行して、荷物をトラックに積み込まなければならないとすると、人手も時間も非常にかかる作業と言えます。

3 遺品整理業の許認可~民間資格~

 最近は、独居死が増えているので、遺品整理業者が増えている印象があり、ニーズにマッチしていると思います。
もっとも、遺品整理業そのものに関する国家資格は無く、民間資格しかない状況で、当然ながら民間資格が無くても遺品整理業を始めることはできます。
ただ、個人的には、民間資格が無いよりはあった業者のほうがまだ良いかなという印象はあります。

4 遺品整理業に必要な許認可①~古物商~

 遺品整理業そのものではないですが、古物商の許可を取っていることは確認したほうよいでしょう。遺品の中で換金価値がある宝石類が出てくることはよくありますが(実際には石に価値はなく、リングのプラチナに価値がつきます)、これを買い取るには古物商の許可が必要となります。
なお、民法のみから行くと、遺品(動産)は、相続人全員の共有となっているので、その売却には全相続人が同意していることが必要となり、相続人が全員か否かは戸籍謄本を収集しないと分かりません。そのため、遺品整理業者からすると、動産の買取は、全相続人の同意があるかの確認をせずにしている場合が多いので、法律的にややリスキーな取引と言えます(買取金額が大きくないことが多いことなどから、問題がまだ顕在化していないとも言えます)。
相続人の立場で見ると、他の相続人の了承無く遺品を売却するとしても(保管料などを考慮すると、売らざるを得ないという判断はあり得るところです)、売買関係の書類や代金をきちんと保管しておく必要があります。他人の共有持ち分を売るわけですから、その点についていずれ清算等をしないといけなくなるわけですから、その意味でも古物商の許可を持っている遺品整理業者を選択したほうが良いでしょう。

5 遺品整理業に必要な許認可②~一般廃棄物収集運搬許可(業者との提携)~

 そして、遺品の中には、廃棄物として処理せざるを得ないものが大半です。そうすると、必要になるのは一般廃棄物収集運搬許可となりますが、これを持っている業者は多くない(そもそも新規の許可が下りない)のが現状です。
そのため、遺族としては、①業者とともに市役所のごみセンターに同道して廃棄することを求められた場合には応じるか(業者ではなく遺族自身が廃棄したということを明確にしないと、業者が処罰されるため)、②上記許可を持っている業者と提携しているかの確認ということが必要となってきますし、業者としては、遺族にごみセンターへの同道を求めたり、一般廃棄物収集運搬許可業者との提携が必要となってきます(家電リサイクル法適用のテレビやクーラーなどが大抵あることからも必要でしょう)。

6 デジタルフォレンジックも?

また、パソコン、スマホに重要な個人情報が保管されていることがあります。
ただ、暗証番号がわからない、又は破損したとなると、①デジタルフォレンジックしてデータを回復するか(財産一覧をパソコンにほかされており、相続財産調査の役に立つことがあります)、②HDDを物理的に破壊してしまうかする必要があります。
そのため、必須ではないのですが、遺品整理業者に上記の技術を持っている業者の方がまとめて頼むことができる点では良いかもしれません。

このコラムを書いた弁護士
弁護士 橘高和芳(きったか かずよし)

大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

相続手続き・遺産相続執行 に関する解決事例

  • 橘高和芳弁護士が担当した遺産相続に関する事例が
「金融・商事判例 No.1553号」(2018年11月15日号)
に掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
週刊ダイヤモンド「相続&事業承継(決定版)」(2018年12月号)
に掲載されました
  • 相続問題事例
  • 遺産相続・遺言書に役立つ書式集
  • 遺産相続トラブル解決チャート
  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「羽賀・たちばな会計事務所」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。