仮装通貨(ビットコインなど)の税法上の取扱い

2017.9.12

1 仮装通貨の税法上の位置づけ

 仮装通貨は、それ自体には、使用価値なり、効用なりがあまり認められないことから、現金に近い性質があり、それゆえ、資金決済法で仮装通貨が無色透明な決済手段であると位置づけられたと思われます。
つい最近、税務当局が、仮装通貨の売買に係る所得税法の所得区分を雑所得であると公表しましたが、資金決済法により決済手段と位置付けられたことを重視した見解と推測され、仮装通貨に関する税務上の今後の取扱いは、外貨現金と同じ取り扱いになると推測されます。
 以下では、法人と個人について、それぞれ、取得、保有、処分などの各段階での取扱いについて考察してみました。

2 法人の場合

 ⑴ 取得時

 外貨預金同様、仮装通貨(資産科目)を取得した段階で、仕訳・記帳をする必要があります。

 ⑵ 期中の処分時

 期中に処分(円転や他の外国所在の資産の購入)した段階で、仮装通貨の差損益を計上することになります(法人税法61条の8第1項、法基通13の2-1-2)。

 ⑶ 期末時

 仮装通貨を外貨預金(流動預金)や外国通貨(現金)と同じと考えると、期末時の相場により換算し(法人税法61条の9第1項第3号、第4号)、差損益を損金又は益金に算入して法人税額を算定することになります(法人税法61条の9第2項。翌期に洗替処理(法人税法施行令122条の8第1項))。
法人税法施行令122条の3、法基通13の2-2-10で15%以上下落した場合には、期末に外貨取引を行ったとして為替差損を損金算入し、且つ翌期の洗替処理をしなくてよい(切放処理)とされており、これと同じ処理が可能かもしれません。  なお、外貨預金について発生時(取得時)換算法を選択する旨の書面を提出することができますが、仮装通貨が資金決済法により無色透明な決済手段であると位置づけられたことからすると、外貨預金ではなく外国現金と同じとして期末時換算法のみを利用できると思われます。

3 個人の場合

 ⑴ 取得時

 法人と異なり事業年度が無く、また、貸借対照表などを作る義務もないので、仮装通貨の取得や保有を報告する義務は原則としてありません。そのため、取得・保有の場面では所得税に影響しません。
また、仮装通貨を複数回にわたって、取得した、又は処分したなどした場合の単価については、総平均法(所得税法48条3項、所得税法施行令118条1項。外貨預金に係る28年6月2日裁決)によることになると思われます。そのため、取引履歴(ヒストリー)を把握しておく必要があります。

 ⑵ 保有中の報告義務(例外)

 保有中に報告義務があるのは、財産債務調書提出時と思われます(高額所得者のみとなります)。なお、財産債務調書の記載漏れについては、刑事罰はなく、現状では加算税の制裁が課せられるにとどまります。

 ⑶ 処分時(翌年の確定申告時)

 仮装通貨を処分(円転や資産購入の代金に使用した場合)した年分の確定申告において、実現した差損益を申告する義務が出てきます。
実現した差損益に関する所得区分は、資金決済法が仮装通貨を通貨と同じ取扱いにしたこともあり、差損益は雑所得に区分されます。
なお、仮装通貨は、法定調書の提出などといった税務当局への書類提出制度が整備されていないので(取引所は本人確認を励行しつつあるようですが、一定額の外国送金に係る調書のように、仮装通貨の取引について自動的に当局に送られる制度はまだないようです)、現時点では捕捉が難しい(国外の旅行中に使用したと言われると、当局としては反駁しにくい)と推測されます。もっとも、今後の制度変更や技術の進展等によっては捕捉される可能性が高くなっていくと思います。平成29年のビットコイン乱高下でかなりの差益を得た方がたくさんいるようですが、これに係る申告は平成30年3月15日であることからすると、当局はどのように捕捉するかを研究中だと思われます。
もとより、国民は、適正な申告義務・納税義務を負担しているのは当然のことです。

 ⑷ 出国税の対象になるか?

 仮装通貨が出国税(国外転出時課税)の対象になるかですが、所得税法60条の2の挙げる資産(有価証券、匿名組合契約の出資の持ち分、未決済の信用取引、未決済のデリバティブ取引など)に文言上当たらないこと、同制度は譲渡していないのに譲渡したとみなす擬制的な制度であることから、仮装通貨は、現行法上は出国税の対象でないと解釈するのが素直と思われます(もっとも、課税当局がどう判断してくるか予測できない面がありますが・・・)。

 ⑸ 死亡時

 残された相続人に相続税申告義務があります。
ただし、他の資産同様に、相続人に教えておかないと、相続人が把握することができずに申告漏れとなる可能性があります。

 ⑹ 余談

 FX取引が盛んになりだした当初も、そもそも申告をしていない人が多く、申告をしても所得区分をどうするか、また、所得金額をどのように算出するかで紛争が多かったようです。仮装通貨も、FX取引の初期のころと同じ紛争が多数生じると思われます。
また、仮装通貨の差益に係る所得区分について譲渡所得と見る見解もあり、仮装通貨は「資産」と解釈することが可能であったことや特別控除50万円の適用の可能性から着眼された見解で、資金決済法の改正前は有力な見解と言えました。もっとも、資金決済法の対象となったことや国税当局が見解を明確にし、その見解も不合理ではないので、譲渡所得区分での申告は避けたほうが良いでしょう。

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