遺留分減殺請求の解決事例①(裁判前に和解)

2017.6.29

1 ご依頼の経緯

 依頼者(50歳代)は、80歳代のお父様が亡くなってから1年たっても、お姉さまから、相続手続きの連絡が無いので、お姉さまに連絡すると、公正証書遺言があって全部相続したとの回答でした。
依頼者は、お姉さまの言う通り、遺言で全部お姉様が相続したら何も言えないのか、請求できないのかということで相談にお見えになりました。

2 問題点

 依頼者は、お父様の意思を尊重したという思いがある半面、自分に何も残さないのがお父様の真意なのか割り切れない思いをお持ちでした。
また、最低限の相続人取り分である遺留分を取り戻そうにも、被相続人と同居していなかったので、お父様にどのような財産があるかわからず、また、公正証書遺言も本当にお父様の意思に基づくものか、認知症ではなかったのかという思いを持たれていました。

3 弁護士に依頼することによる解決

⑴ 戸籍の収集

 依頼者は遺言の存在を知ってからほどなくして依頼されたので、弁護士は、まず相続関係を確定させるために戸籍謄本を収集しました。
戸籍謄本は、2~3週間ほどで収集することができました。

⑵ 遺留分減殺請求の通知

 相続関係を確定し、遺留分割合を確定した上で、弁護士は、遺留分減殺請求に係る内容証明郵便をお姉さまに電子内容証明郵便で発送し、併せて遺言書や財産関係に係る資料のコピーの送付を依頼しました。

⑶ 公正証書遺言の調査

  公正証書遺言があるということですので、弁護士事務所の最寄りの公証人役場に行って、公正証書遺言の作成の有無と作成場所の教示を受け、遺言が作成された公証人役場に言ってコピーを取り付け、内容と作成日付を確認しました。

⑷ 財産調査(預金、株式、精算課税贈与等)

  弁護士は、財産関係の資料の送付を依頼しつつも、財産関係調査に着手しました。相手方被相続人の相続財産を明らかにする可能性もゼロではないのですが、経験的には、洩れなく開示されるケースは10%もないと思います。また、仮に相手方から開示があっても、当方も財産関係を調査しておかないと、相手方の開示内容に誤り・漏れが無いかを確認することができませんし、特に預金口座の入出金履歴を開示してくるケースは非常に少なく(たいていの場合は残高証明書の提示に止まります)、生前又は死後の不明朗な出金についても調査を要します。
とりあえず、被相続人の住所地や勤務地近くの金融機関に照会をかけていき、預金口座の解明を進めました(遠方の銀行や信用金庫の中には、支店まで来訪して原本を提示してきてほしいと言うなど非協力的な金融機関もありますが、この点は弁護士が交渉すれば郵送でのやり取りで調査することができます)。
また、株式取引をしている可能性はないとのことでしたが、上場株式の調査、生前に相続時精算課税制度による贈与をしていないかの調査をしていきました。
結局、3か月ほど調査に時間をかけたところ、預金口座が複数存することがわかり、また、逝去される直前に多額の出金があることも判明しました。

⑸ カルテの調査

  また、お父様が遺言を書くことができるだけの認知レベルがあったかを確認するため、入通院されていた病院のカルテの謄写も行いました。
カルテを分析しましたが、認知症ではあるものの、認知レベルの低下がひどいものではないため、また、公正証書遺言ということもあって、遺言無効確認訴訟は提起しないということで依頼者も納得されました。

⑹ 調査結果を踏まえた提案・交渉

  調査の結果、相続財産が2000万円ほどで相続税は発生しない事案でした(もし相続税の発生が予想される場合には、相手への請求とともに相続税申告書の作成も並行して進める必要があり、当事務所では弁護士兼税理士が示談交渉や裁判と税務申告の両方を行っています)。 弁護士は、相手方に対して、具体的な請求金額を記載して、書面で請求したところ、相手方は、上記書面を受け取って、すぐに弁護士を選任されたようであり、すぐに弁護士から連絡がありました。
その後は、弁護士同士で何回も交渉した結果、和解となりました。

4 時系列

平成26年     被相続人逝去
平成28年 3月  ご依頼
平成28年 4月  戸籍収集完了、遺留分減殺通知
並行して財産調査、カルテ収集に着手
平成28年 7月  財産調査完了、具体的請求
平成28年 8月  相手方、弁護士選任、財産関係開示
平成28年 9月  和解契約締結
平成28年10月  入金完了

5 コメント⑴ 遺留分減殺の期限1年に注意

 遺留分減殺請求は、相続開始や遺留分を侵害する遺言を知ってから1年以内に意思表示をする必要があります。
「1年」は、あっという間に経過してしまうので、早めに遺留分減殺の意思表示を書面で行う必要があります。なお、最初の意思表示は、具体的な請求金額まで記載する必要はなく、遺言等により遺留分を侵害されているので減殺の意思表示をするという簡単なもので問題ありません。

6 コメント⑵ 内容証明郵便で意思表示を行う

 遺留分減殺の最初の意思表示は、民法上は、口頭でも可能は可能ですが、後で争われないためにも、内容証明郵便で行ったほうが良いでしょう。
なお、文案については、下記URLのページもご参照ください。
http://www.law-tachibana.jp/format/gensai.php

7 コメント⑶ 財産調査・カルテ収集の必要性

 遺留分減殺の意思表示をすれば、相手方が勝手に財産を開示してくれる、開示するべきだと思われている方が意外に多い印象があります。勿論、親族同士ですので、相手方を信用するが故の思い・考えと推測されます。
しかし、「弁護士に依頼することによる解決」の項でも述べましたが、経験的には、洩れなく開示されるケースは10%もなく、そもそも開示しないケースが60%、開示しても不十分(残高証明書のみ開示、複数の預金口座や証券口座の一部のみ開示など)というケースが30%強と思われます。
そのため、遺留分減殺の意思表示をすれば、相手が勝手に財産目録を開示してくると安心するのではなく、生前に被相続人から聞いていた取引内容などから、調査をしていく必要があります。
もっとも、一般の方がこの財産調査をするのは、かなり大変と思われます。照会する相手方に対して、戸籍謄本を提示等する必要があるのは勿論、金融機関ごとに書式や要求される書類が微妙に異なるなどしているため、経験が無いとなかなか進めることは難しいと思われますので、弁護士に依頼したほうが結果的に早いと思われます。

8 結論

  今回は、相手方に弁護士が選任されて弁護士同士の話合いとなりましたが、相続財産の範囲について生前の出金を含めて大きな争いはなく、裁判となった場合の結果も予想も共有できたため、和解で終了することになり、比較的早期な解決となりました。

 

 

 

 

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